人材採用は戦略を立て実行しましょう。戦略を立てるときにはどのような点を意識すると良いのでしょうか?目的を達成するために役立つ3ステップやフレームワークを紹介します。立てた戦略を成功させるためのポイントも見ていきましょう。
人材採用には戦略が必須
企業が人材採用を行うときに立てる戦略が採用戦略です。戦略なしに採用活動を始めると、自社が求める人材を採用できない恐れがあります。労働人口が減少している中、単に求人広告を出すだけ、自社サイトに求人ページを作るだけでは、採用候補者の集団である母集団を形成するのは難しいでしょう。
採用戦略とは
目的達成のためにどのような人材を採用するべきか、採用に向けどのような取り組みが有効かなどを策定し、具体的な施策を決定するのが採用戦略です。採用戦略を策定するときには、企業のビジョンに合致するよう意識します。
自社の果たすべき目標や目標実現のための行動計画を具体的に示す「経営計画」や、経営計画で定めている目標に向け事業単位で取り組むべきことを示す「事業計画」などをもとにすると、有効な採用戦略を立てられるでしょう。
人材採用で戦略が必要な理由
採用戦略がないままでも求人募集はできます。ただし今後の求人市場の動向予測を確認すると、戦略なく採用活動に取り組んだとしても、思うような成果は出にくいものです。
例えば「労働市場の未来推計 2030」によると、2030年には人材が644万人不足すると予測されています。サービス業では400万人、医療・福祉では187万人の不足が予想されており特に深刻な状況です。
また「一般職業紹介状況(令和4年12月分及び令和4年分)について」を確認すると、求人数を求職者数で割った有効求人倍率は上昇傾向です。2022年には平均1.28倍と2021年に比べ0.15ポイント上昇しており、今後も上昇傾向が続くと予想されています。
人材不足の状況で自社に合う人材を集め採用活動を行うには、戦略の立案が欠かせません。
参考:一般職業紹介状況(令和4年12月分及び令和4年分)について|職業安定局
採用戦略立案の3ステップ
自社のビジョン達成に必要な人材を採用するための戦略立案は、以下の3ステップで進めます。
- 現状を分析する
- 戦略を設計する
- 戦術を設計する
現状を把握し達成すべき目標との差を埋められるよう、戦略と戦術を立てていきます。
現状を分析する
目標やビジョンの達成に向け行動するときには現状把握が欠かせません。自社の強みや弱みの他、市場で置かれているポジションなども含め、客観的に分析しましょう。
このとき自社だけでなく競合他社や市場そのものについても分析すると、自社との関係性を理解でき、より的確な戦略の立案に役立ちます。
経営計画や事業計画をもとに、会社全体の中長期的な方針も確認が必要です。例えば事業計画に合わせ部署の編成に変更が生じるのであれば、採用戦略も計画に合わせる必要があります。
戦略を設計する
現状が理解できたら戦略を立てましょう。経営計画や事業計画を考慮し、各部署にそれぞれ何人の人材が必要か明確にします。事業拡大といった計画があるなら、人材育成の期間を逆算し採用しておかなければ、計画の実行が人材不足で頓挫するかもしれません。
戦略では採用すべき人物のビジョンを共有できるよう、ペルソナも設定します。スキルや技術だけでなく、これまでの経歴やプライベートなども含め、1人の人物を設定するのがポイントです。
加えて求人するときの訴求ポイントとなる、求職者から見た自社の魅力も明らかにします。
戦術を設計する
戦術の設計では、設定したペルソナに合う人材を採用する方法を決めます。以下は採用手法や利用できる外部サービスの一例です。
- 求人広告
- Web広告
- 採用イベント
- 人材紹介
- 採用ページの作成
- SNS運用
- リファラル採用
例えば組織全体の若返りを目指し若い人材を採用したいと考えているなら、比較的若い世代が登録しているWebサイトでの求人広告へ出稿すると反応を得やすいでしょう。
またお互いのミスマッチを最小に抑えるには、従業員から友人知人の紹介を受けるリファラル採用が向いています。従業員を通し社風や仕事内容について理解しているため、離職につながりにくいと期待できます。
採用戦略に役立つフレームワーク
採用戦略を効率的に立案するにはフレームワークが役立ちます。戦略の可視化や共有がしやすくなる3つのフレームワークの特徴を見ていきましょう。
3C分析
差別化を目的に自社の強みを明確にできるのは「3C分析」です。自社、競合他社、求職者の3つの要素に注目することで、自社の立ち位置を明確にできます。例えば以下の内容を検討することで、差別化できるポイントを発見可能です。
- 求職者は自社に何を期待しているか?
- 求職者は競合他社に何を期待しているか?
- 競合他社は採用にあたり何を実施しているか?
4C分析
求職者のニーズを把握するには「4C分析」が向いています。注目するのは以下の4点です。
- 求職者にとっての価値
- 求職者にとっての負担
- 求職者にとっての利便性
- 求職者にとってのコミュニケーション
4点を明確にすることで、求職者の望む企業や応募したいと感じる企業の理解が進みます。
SWOT分析
魅力ある環境を構築するには、自社の現状理解が欠かせません。以下の4点に注目する「SWOT分析」を実施すれば、競合他社に負けない採用活動ができます。
- Strength(自社の強み)
- Weakness(自社の弱み)
- Opportunity(採用の機会・チャンス)
- Threat(採用活動にとっての問題)
採用戦略を成功させるポイント
採用戦略は立てただけでは不十分です。自社に合う人材の採用を成功させるには、立てた戦略の共有や人事体制の強化などが欠かせません。
立案した戦略を共有する
採用活動は企業全体に影響するため、立案した戦略は共有しましょう。人事部内や経営陣はもちろん、他部署へも採用戦略について説明し、共通認識を持てるようにします。
全体で同じ方向を向くことで、戦略を計画どおりに進めやすくなるポイントです。
必要に応じて人事体制を強化する
戦略の実行には人員が必要です。人事部内の人員不足により十分な体制ができていないなら、まずは人事担当者を増やさなければいけません。
人事の経験を持つ人材を雇用し従業員を増やすのはもちろん、アウトソーシングの利用も含め検討します。
面接スキルを高める
面接を担当する従業員のスキルアップも欠かせません。面接では目の前の求職者が、戦略として定めたペルソナに合致する人物が見定め採用する能力が必要です。
加えて面接を進めながら、自社の魅力を求職者へ効果的にアピールし、志望度を高める必要もあります。面接官として的確に見極める力と伝える力を育むことで、自社に必要な人材を採用しやすくなるでしょう。
人事戦略に反しない戦略になっているか確認する
採用戦略と入社後の人事戦略が一体になっているかも確認が必要なポイントです。例えば採用戦略ではスキルより若手であることを重視しているにもかかわらず、人事戦略で経験者を想定している内容になっていると、入社後の教育を十分行えない可能性があります。
相反する戦略を採用していると、企業と従業員のマッチングは難しくなってしまいます。採用した従業員の離職にもつながりかねません。
見直しと改善を行う
戦略にもとづき採用活動を実行したら、効果の検証も行います。期待していた効果が出ていないなら、戦略が誤っていた可能性があります。
対策を立て戦略を改善し、より良くした上で実行しましょう。
採用戦略の一環として福利厚生の充実も意識
採用戦略では福利厚生の充実も検討するのがおすすめです。求職者の多くは福利厚生を重視しており、入社後の離職率改善にも役立ちます。
求職者は福利厚生を見ている
エアトリの実施したアンケートによると、8割以上の人が入社時に福利厚生を重視しているそうです。仕事内容や他の条件が同程度の競合他社がいるなら、福利厚生を充実させることで、採用がスムーズに進みやすくなるかもしれません。
入社後の離職率改善に役立つ
福利厚生を充実させることで、従業員の働く環境を整えられます。例えば有給休暇といった法律で定められている以外にも、慶弔休暇や特別休暇など独自の休暇が充実していれば、従業員はプライベートの用事に対応しやすくなるでしょう。
仕事とプライベートの両立が難しい職場では、ライフステージの変化による離職も考えられます。休暇が充実しており働きやすい環境が整っていれば、離職率の低下につながるかもしれません。
社員エンゲージメント向上につながる
社員エンゲージメントとは従業員が自ら会社に貢献したいという自発的な意欲です。高められれば生産性の向上や従業員の定着に役立ちます。
福利厚生の充実は社員エンゲージメントの向上にも役立ち、採用した従業員の定着につながりやすくなります。
従業員の利用率が高い福利厚生は?
採用戦略のために福利厚生を充実させるときには、従業員の利用率が高い施策を導入するのがおすすめです。「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」によると、財形貯蓄や社内預金制度、人間ドック、食事手当は人気があります。食事手当は5割以上、他の2つも3割以上の従業員が利用しているそうです。
参考:企業における福利厚生施策の実態に関する調査|労働政策研究・研修機構
財形貯蓄や社内預金制度
従業員の資産形成をサポートする福利厚生は「財形貯蓄」や「社内預金制度」が代表的です。どちらも給与から天引きされ自動で積み立てられる点は同じですが、預金先が社内か銀行かの違いがあります。
あらかじめ貯金額が差し引かれた金額が給与として支払われるため、従業員は着実に資産形成できるでしょう。
人間ドック受診の補助
以下の条件を満たせば人間ドックの受診も福利厚生として従業員へ提供できます。
- 全社員が受診できる
- 受診した社員全員分の費用を企業が負担する
- 著しく高価ではなく健康管理上必要な範囲内の検診である
定期的な検診で健康状態をチェックすれば、従業員は健康管理しやすくなるでしょう。健康への意識が向上することで、健康に長く働き続けられることも期待できます。
食事手当や社員食堂
従業員全員へ平等に提供できる福利厚生として注目されているのが「食事手当」や「社員食堂」といった、食事に関する福利厚生です。ただし社内に食堂を設置する社員食堂はコストがかかり、利用できるのが出社している従業員に限られます。
外回り中に昼食を済ませる従業員や、テレワーク中の従業員でも利用しやすいのは食事手当です。例えばエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」を導入すれば、全国7万店舗の飲食店やコンビニを社員食堂代わりに利用できます。
専用の電子カードを提示し支払うだけで使える手軽さもあり、利用率は99%、社員満足度も90%と高い数値です。満足度の高い福利厚生の導入に向け検討してみませんか?
的確な戦略で自社に合う人材を採用しよう
自社に合う人材を採用するには戦略が欠かせません。効果的な採用戦略には、まず現状把握が必要です。その上で適切な戦略と戦術を立てていきましょう。1度でベストな戦略を立てられるとは限りません。戦略の実施による効果測定と改善もポイントです。
採用戦略を立案するときには、福利厚生の充実も検討するのがおすすめです。手間をかけずに満足度の高い福利厚生を導入するには、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」が役立ちます。