人的資本の情報開示とは
人的資本の情報開示とは、自社の人材に関する情報を開示することです。企業が自社の価値を高めていくには、従業員一人ひとりの持つ資質や能力を活かす取り組みが欠かせません。
人的資本の情報開示では、人材活用のためにどのような取り組みを行っているかを社外へ向けて公開します。
まずは人的資本の情報開示についての理解を深められるよう「人的資本」「人的資本の情報開示義務化」「人的資本経営」についてチェックしましょう。
人的資本は人材を資本とする考え方
人的資本とは、個々の従業員が持っている「リーダーシップ」「協調性」「コミュニケーション能力」などの資質や、「知識」「スキル」などの能力を、企業の資本として捉える考え方のことです。
これまで人材は人的資源と考えられていました。人材を消費する資源と考えている企業では、働く環境や教育体制が考慮されないこともあります。
一方、人材を投資して向上させることで信用力につなげる資本と考えている場合には、働きやすい環境整備のための制度を整えたりセミナーや研修などの教育機会を提供したりして、人的資本を高めていきます。
関連記事:人的資本とは何かをわかりやすく解説。今注目されている理由も
2023年から始まった人的資本の情報開示義務化
人的資本の情報開示義務化は、2024年に上場企業を対象に始まりました。対象企業は以下にあげる7分野19項目を、有価証券報告書へ記載しなければいけません。
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7分野
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19項目
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育成
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リーダーシップ
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育成
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スキル/経験
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エンゲージメント
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エンゲージメント
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流動性
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採用
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維持
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サクセッション
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ダイバーシティ
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ダイバーシティ
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非差別
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育児休業
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健康・安全
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精神的健康
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身体的健康
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安全
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労働慣行
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労働慣行
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児童労働/強制労働
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賃金の公正性
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福利厚生
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組合との関係
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コンプライアンス/倫理
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コンプライアンス/倫理
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人的資本の情報開示を行うときには、単に情報を記載するだけでなく、人的資本の情報を企業の課題や経営戦略と関連付けて説明することが重要です。必要性があればその他の情報も開示するとよいでしょう。
関連記事:
人的資本可視化指針とは?開示義務化の対象や開示する項目を解説
人的資本開示の義務化とは?開示する情報や中小企業がすべきことも
人的資本向上のために人材へ投資する人的資本経営
まずは経済産業省のホームページに記載されている、人的資本経営の説明を紹介します。
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方です。
出典:経済産業省|人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~
資金が豊富にあったとしても、実際に働く人材が不足している場合や、必要なスキルを持つ人材がいない場合には、企業は経営を継続できません。少子高齢化により労働生産人口の減少や、ダイバーシティが進む中、人的資本経営に注目が集まっています。
人的資本経営に企業がどの程度取り組んでいるのかを知るために、人的資本の情報開示が必要です。
関連記事:人的資本経営とは?事例を用いて解説!メリットや導入のステップ
人的資本の情報開示は人材確保に役立つ
リクルートの実施した「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」によると、求職者は人的資本の情報開示が充実している場合、その企業の選考に対する優先度が高まる傾向があります。
「企業情報の開示により選考参加優先度が上がる」と回答した人の割合は、「上がる」「やや上がる」を合計して44.5%です。
スムーズに人材を採用するには、まずは応募者を集めなければいけません。人的資本の情報開示によって、選考への参加優先度を高められれば、応募者の獲得から人材確保へつながるでしょう。
ただし人的資本の情報開示を十分に行っている企業は約30%です。開示する人的資本の情報の種類によっても割合は異なります。
ここでは公開する情報ごとに異なる、求職者の選考への参加優先度や、企業の情報開示の割合を見ていきましょう。
参考:リクルート|企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024
従業員のエンゲージメントに関する情報開示
エンゲージメントとは仕事へのモチベーションややる気のことです。エンゲージメントに関する情報開示が行われている企業への選考参加優先度が高まると回答した人の割合は48.0%でした。これに対して求職者への開示を行っているのは27.2%です。
従業員が高いモチベーションを維持しながら働き続けられるようにするには、企業による取り組みが欠かせません。
従業員のエンゲージメントに関する情報開示では、エンゲージメント向上のための取り組みやその結果となる従業員のモチベーションの度合いについて公開することとなります。
関連記事:ワークエンゲージメントとは?高める施策例と定義・具体例を解説
従業員の育成方針に関する情報開示
従業員の育成方針が開示されていることで、選考への参加優先度が高まると回答した人の割合は45.3%です。これに対して、開示している企業の割合は34.8%でした。
人材育成を行っている企業であることを情報開示で伝えられれば、求職者の「従業員のキャリアをサポートし、従業員を大切にする企業」という印象につながります。
人材育成の方法や目指せるキャリアのバリエーションなどを、積極的に開示するとよいでしょう。
関連記事:中小企業が抱える人材育成の課題とは?人材定着につながる取り組みを解説
給与に関する情報開示
給与に関する情報開示で選考への参加優先度が上がると回答した人の割合は69.3%と、他と比べて最も高い割合です。その一方、給与について細かく情報を開示している企業は30.3%でした。
給与について求職者から企業へは質問しにくいこともあるでしょう。あらかじめ分かりやすく情報を開示することで、給与に関する不明瞭さから求職者は選考への参加を控える事態を避けられます。
従業員の企業に対する評価に関する情報開示
今働いている従業員の企業に対する評価の開示で、選考への参加優先度が高まると回答した人の割合は48.8%でしたが、開示している企業の割合は26.3%です。
従業員からの評価が高ければ、働きやすい職場環境が整っていそうだと判断できます。また評価が低かった場合には、従業員が何を求めており、どこを改善すれば評価が高まるかを検討し、対策に取り組むことで状況の改善が可能です。
企業文化や風土に関する情報開示
企業文化や風土に関する情報は、入社するまで分からないこともあります。あらかじめ情報が開示されていれば、求職者は安心して選考に参加できるでしょう。
調査では、企業文化・風土の情報開示によって選考参加優先度が上がると回答した人の割合は49.1%でした。これに対して、実際に企業文化・風土について情報公開を行っている企業は30.9%です。
離職に関する情報開示
離職に関する情報は、求職者が安心して働ける職場か判断するために役立ちます。加えて、体調不良のときに使える休暇があるか、病気やけがのときに休職を利用できるか、といった情報が開示されていることもポイントです。
これらの情報開示により、選考への参加優先度が高まると回答した人の割合は49.9%でした。実際に情報を開示している企業は31.1%です。
キャリアパスに関する情報開示
キャリアパスに関する情報開示により、選考への参加優先度が高まると回答した人の割合は38.5%、情報を開示している企業の割合は30.1%です。
希望するキャリアがかなう企業かを求職者が事前に確認できれば、「希望の仕事ができない」といった理由による早期離職を避けやすくなるでしょう。
採用につながる情報開示のポイント
人的資本の情報開示を採用につなげるにはポイントがあります。「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」をもとに、採用に役立つ人的資本の情報開示について解説します。
参考:リクルート|企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024
エンゲージメントや育成方針の情報開示が重要
調査によると「十分な人数を確保できているか」という質問に対して「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した企業の割合は、従業員のエンゲージメントや育成方針について情報開示を行っている企業の方が、そうでない企業よりも高いそうです。
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中途採用で十分な人数を確保できている
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新卒採用で十分な人数を確保できている
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エンゲージメントに関する情報開示を行っている
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41.5%
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47.9%
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エンゲージメントに関する情報開示を行っていない
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20.9%
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16.3%
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育成方針に関する情報開示を行っている
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42.4%
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40.7%
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育成方針に関する情報開示を行っていない
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19.3%
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17.3%
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人事制度の改定もポイント
エンゲージメントや育成方針に関する情報開示を行っている企業は、そうでない企業と比べて、人事制度の改定を適切に実施している割合が高いのも特徴です。
環境に合わせて人事制度を変更できる柔軟性の高さも、人的資源の情報開示を採用につなげるポイントといえます。
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社内外の変化に合わせて人事制度の改定ができている
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エンゲージメントに関する情報開示を行っている
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63.5%
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エンゲージメントに関する情報開示を行っていない
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19.2%
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育成方針に関する情報開示を行っている
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58.4%
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育成方針に関する情報開示を行っていない
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20.1%
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人的資本の情報開示は明確に行うのがコツ
人的資源の情報開示を行っていても、提供する情報が曖昧では、選考辞退につながりかねません。調査によると、開示している情報が曖昧なために選考辞退した人の割合は、どの項目も約30~40%存在します。
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選考を辞退した理由
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あてはまると回答した人の割合
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求人の給与要件が曖昧だった
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39.8%
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企業のキャリアパスが不明瞭だった
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36.7%
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求人のスキル要件が曖昧だった
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35.7%
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求人の職務要件が曖昧だった
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35.3%
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既存の従業員が活き活きとしていなさそうだった
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35.3%
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聞こえの良い情報ばかりでリアリティがない情報だった
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34.8%
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求人の職位(役職)が曖昧だった
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33.6%
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人材に対する向き合い方が不明瞭、あるいは評価ができなかった
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32.9%
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社内にどんな人がいるのか説明がなかった(少なかった)
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32.6%
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給与に関する具体的な情報がなかった
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31.4%
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従業員を育成する十分な制度・システムがなかった
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30.9%
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仕事における重要なスキル・得られるスキルに関する情報が分からなかった
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28.8%
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従業員への育成方針が薄かった
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26.6%
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多様性が尊重されないと感じた
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24.2%
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ただし人材資本の情報開示は、単に行えばよいというわけではありません。「聞こえの良い情報ばかりでリアリティがない情報だった」ために選考を辞退したと回答した人の割合が34.8%であることからも、求職者が知りたい情報を開示することが重要です。
自社に興味を持つ求職者がどのような人材なのかを分析した上で、必要な情報を提供しましょう。
人的資本の情報開示を採用につなげよう
人的資本の情報開示とは、自社の人材に関する情報や、人的資本向上のために行っている取り組みについて公開することです。労働生産人口の減少やESG投資への注目の高まりから重要視されています。
加えて求職者向けの情報開示を行えば、人的資本の情報開示はスムーズな採用にもつながりやすくなるでしょう。従業員のエンゲージメントや育成方針などの情報開示が行われていると、選考への参加優先度が高まると回答した人の割合は44.5%でした。
特にエンゲージメントや育成方針の情報開示を行っている企業は、十分な人数を確保できていると回答した割合が高くなっています。
人的資本の情報開示を人材確保に活かすなら、人的資本の向上に取り組むことも重要です。そのためには福利厚生の拡充が役立ちます。
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人的資本の情報開示を採用につなげるために、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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