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【物流の2030年問題】概要と業界の未来予想をわかりやすく解説!

【物流の2030年問題】概要と業界の未来予想をわかりやすく解説!

2024.06.13

2030年問題が物流業界に及ぼす影響は深刻です。高齢化と人口減少による構造的な人手不足、2024年問題からの継続的なドライバー不足、脱炭素化への投資負担などの課題が重なり合い、業界は多方面からの圧力に直面します。
本記事では、物流業界の2030年問題と政府の中長期計画に基づく総合的な物流革新を通じて、この危機を乗り越える対策を解説します。

2030年問題とは?

「2030年問題」とは、2030年に日本が直面する複合的な社会問題のことです。人口減少、少子化、高齢化という長年の構造的課題が同時に顕在化し、雇用、医療、社会保障などの分野に大きな混乱をもたらすと予測されています。

労働力不足、医療需要の急増、社会保障制度の圧迫など、従来のシステムでは対応しきれない事態が生じ、働き方の再定義や制度の刷新など、社会全体の見直しが求められます。2030年問題への対応は、日本の持続可能性を左右する重大な課題です。

物流業界での2030年問題の概要

物流業界においては、2030年問題で日本全体が直面する労働力不足の課題が、業界特有の要因によってさらに加速・深刻化することが懸念されています。

日本の高齢化が急速に進んでおり、内閣府が公表した「令和5年版高齢社会白書」によると2022年時点で65歳以上が29%を占め、4人に1人以上が高齢者です。このペースが続くと、2030年には3人に1人が高齢者になると予測されています。同時に出生率低下による生産年齢人口の減少が顕著になります。この人口構造の変化は、あらゆる産業で労働力不足を引き起こしますが、特に物流業界への影響は甚大です。

2030 年 問題 物流01

出典:内閣府|令和5年版高齢社会白書

物流業界では、「物流業界の2024年問題」などと言われるように、物流・運送業界が直面する差し迫った課題があります。2024年4月から働き方改革法案が本格適用され、トラックドライバーの年間時間外労働が960時間に制限されるというものです。この規制は、ドライバーの健康と生活の質を守る一方で、労働時間の制限により、一人のドライバーが走れる距離が短くなるため、特に長距離輸送に支障をきたす可能性が高いです。

2024年でもトラックドライバー不足が深刻化しつつありますが、この状況が改善されないまま2030年を迎えると、2030年問題の影響により高齢ドライバーの退職と生産年齢人口の減少が重なるため、人手不足がさらに加速するでしょう。

さらに、カーボンニュートラルに向けた世界的な風潮が、物流業界にさらなる圧力をかけています。2030年に向けて脱炭素要請が一段と強まる中、物流業界は車両のEV化やエコドライブの徹底など、大規模な設備投資と運用変更を迫られています。このような業界全体の変革は、短期的には業界の負担を増大させ、中小企業を中心に経営を圧迫することになりかねません。

参考記事:「2024年問題」とは?必要な対策と物流業界に及ぼす影響を解説

物流業界の2030年問題の具体的要素

物流業界の2030年問題の要素について、具体的なデータをもとにさらに詳しく解説していきます。どれほど深刻な問題であるかを確認しましょう。

1.ドライバー不足

国土交通省の「2024年問題」について、によると、ドライバー不足と2024年問題の労働時間規制により2030年には運送能力の34.1%が不足する可能性があると述べられています。これにより、荷物の配送遅延や滞留、サービスの低下など、物流ネットワーク全体に大きな影響がでる恐れがあります。

2030 年 問題 物流02出典:内閣官房|2030年度に向けた政府の中長期計画(ポイント)

2.ドライバーの長時間労働と過酷な労働環境

ドライバーの労働環境は、非常に過酷で長時間労働や深夜勤務が常態化しています。厚生労働省の「賃金基本統計調査」によると、ドライバー1人当たりの年間労働時間は約2,500時間と、全産業の平均と比べて際立って長いです。さらに、荷待ち時間が長いなど非効率な勤務体制も問題となっています。2024年の残業時間の規制が加わることで、その分残業代が少なくなることが考えられますが、その結果収入減少による離職が起き、人材不足をさらに悪化させることも懸念されます。

2030 年 問題 物流 03

出典:厚生労働省|自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト「トラック運転者不足の実態」
参考:国土交通省|「2024年問題」について

3.物流コストの増大

物流コストには、輸送・運送費などの「コスト」のみではなく、人件費や企業のシステムなどにかかる「コスト」も含まれます。人件費や燃料費などのコスト高騰が続いており、物流業界の経営を圧迫しています。一方で、ドライバーへの賃金アップは昨今の物価上昇のことを考えると実現しなければなりません。

物流コストの適正な価格転嫁ができないことが、労働環境の改善を妨げており、ドライバー不足という悪循環が生まれます。また、物流コストが増大しても、ドライバー不足でモノが運べないことになるため、物流業界がこれまでよりもパワーバランス上強くなる可能性もあるでしょう。一方で、モノが運べない状況は、日本の経済には悪影響を与えると考えられます。

参考:ビジネス+IT|物流の2024年問題とは何かをわかりやすく図解、給料は減る? 課題や解決策なども解説

4.燃料の供給制約と脱炭素

化石燃料への依存が高い現状から、将来的な燃料価格の高騰や供給の制約が懸念されています。国際エネルギー機関(IEA)の「World Energy Outlook 2022」によると、ウクライナ危機後の地政学的緊張により、今後10年間で石油・ガス価格の高騰と供給の不安定化が予測されました。また、物流からのCO2排出量削減が求められており、運送手段の脱炭素化が課題となっています。エネルギーの安定確保と環境対策は、物流の継続には不可欠な条件です。経済産業省の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、日本は2020年10月に2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。物流業界もこの流れに沿って、設備投資を進める必要があります。

出典:国際エネルギー機関(IEA)|World Energy Outlook 2022
出典:経済産業長|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

物流業界の2030年問題対策

政府は物流業界における2030年問題への対策として、総合的な物流革新を目指す「2030年度に向けた政府の中長期計画」を2024年2月に策定しました。この計画では、多岐にわたる施策を盛り込み、輸送力の確保と生産性向上を図ることを目指しています。

ここからは「2030年度に向けた政府の中長期計画」を参考に、物流業界の2023年対策を確認しましょう。

1.商慣行の見直し

政府は、物流の効率を阻害する商慣行の是正を図るため、規制的措置を導入します。取引関係の健全化、適正価格での運賃収受、貨物輸送の効率化を加速させるための見直しです。具体的には、一定規模以上の荷主企業や物流事業者に対し、物流効率化に向けた中長期計画の作成と定期報告を義務付けます。中長期計画に基づく取り組みの実施状況が不十分な場合、勧告・命令も実施される予定です。

トラックの多重下請構造の是正や、適正運賃・料金の収受を確保するための取り組みも行います。令和5年6月2日に創設された「トラックGメン」についても、悪質な荷主・元請事業者への監視・指導の強化も図り、改善が図られない場合は厳正な対処が実施されることになりました。このような施策を遵守できるよう、企業は法令を遵守し、働き方改革に取り組む必要があります。

参考:国土交通省|「トラックGメン」の創設について~ 全国162 名の体制で荷主・元請事業者への監視を強化 ~(令和5年7月18日)

2.物流の効率化

2030年度に向けた政府の中長期計画」では、デジタル技術を活用して物流を効率化する取り組みが推奨されています。トラックの待機時間や荷物の積み下ろし時間を短縮するため、自動倉庫や無人フォークリフトといった自動化・機械化設備やシステムへの投資が政府から支援されます。

物流の無駄をなくすための施策も重要です。以下図のような「フィジカルインターネット」と呼ばれる計画に沿って、物流の標準化とデータ連携も促進されています。この取り組みにより、複数の企業が荷物を一緒に運ぶ共同輸配送や、トラックが帰り道に荷物を乗せる機会を増やすことで、積載率の向上を目指します。

最新のデジタル技術を活用した物流サービスの実用化も必要です。自動運転トラックやドローンによる配送など、革新的な技術の導入が促されました。これらの施策を通じて、物流業界全体の効率化を目指します。

2030 年 問題 物流04出典:経済産業省|フィジカルインターネット・ロードマップ

3.多様な輸送モードの活用推進

物流効率化と環境負荷低減のため、以下の施策についても推進されています。環境に配慮した輸送手段への転換、自動運転技術を活用した道路と船舶の革新により、物流の効率化と環境保護を両立させようとするものです。具体的な内容は以下に紹介します。

  • トラックから鉄道や船舶への転換促進:大型コンテナの導入を支援することで、商品の輸送を環境にやさしい鉄道や船舶に切り替える「モーダルシフト」を強く推進する。
  • 自動運転トラックの専用道路建設:10年以内に、人間が運転しない自動運転トラックが走る専用の道路(自動物流道路)を作ることを目指す。
  • 無人の商業用船舶の実現:2026年までに国際的なルールを作り、2030年頃には、船員が乗っていない自動運航船を本格的に商業利用を目指す。

このような革新的な運送方法が導入されるとなれば、業界で生き残るためには柔軟な対応力が不可欠です。

4.高速道路の利便性向上

2030年度に向けた政府の中長期計画」では、トラックの速度制限緩和、ダブル連携トラックの普及、料金割引の継続と適正利用の推進により、トラック輸送の効率を上げつつ、安全運転も促進することが述べられています。

すでに2024年4月から、大型トラックの法定速度を現在の80km/hから90km/hに引き上げます。これにより、トラックの移動時間が短縮され、効率が上がったことも物流の2030年問題への取り組みの一つです。2台分の荷物を1台で運べる「ダブル連結トラック」の利用も開始予定です。ダブル連結トラックが走れる路線を増やし、サイズに合わせた駐車スペースを整備すれば、1回の輸送で運べる量が増え、トラック台数と運転手の数を減らせます。

高速道路料金の割引は2025年3月末まで継続し、適正利用も推進します。 高速道路をよく利用する場合の割引を続けると同時に、法律を守らない悪質な業者に対しては、割引を厳しく制限することが示されました。ETC専用化も実施に向けて動いています。

2030 年 問題 物流05出典:内閣官房|2030年度に向けた政府の中長期計画(ポイント)

5.荷主・消費者の行動変容の促進

再配達削減に向けたポイント還元事業の実現や、送料無料表示の見直しなどにより、荷主・消費者の意識改革と行動変容を促します。さらに、荷主における物流統括管理者の選任を義務付け、全社的な物流改善に取り組むよう促します。宅配便の再配達問題解決に向けて、物流業界の負担軽減に取り組まなければなりません。

消費者に協力を求める施策としては、コンビニ受取や置き配、余裕を持った配送日時の指定など、再配達の必要がない受け取り方を選んだ人にポイントを還元する実験を行っています。さらに、「再配達削減PR月間」を継続的に実施し、再配達率を半分に減らすことを目指します。

業界側の改革も必要です。「標準的運賃」を8%引き上げ、トラックGメンによる指導も強化し、運送形態に応じた適正な運賃・料金の設定を促進しています。ネットショップに「送料無料」表示の見直しを求め、2023年度中にその進捗を確認するなど着実に消費者の意識変容を促す取り組みをしています。

宅配便の運送を担う企業にも、責任ある行動が求められます。新しい規制により、一定規模以上の荷主は「特定事業者」に指定され、物流統括管理責任者の選任を義務付けられます。これにより、各企業が全社を挙げて物流改善に取り組むことになるでしょう。

6.その他の取り組み

ドライバーの賃金水準の引き上げや、女性・若年層の活用促進など、労働環境の改善にも注力します。また、物流に関する広報活動を強化し、社会全体の理解醸成を図ります。

この計画の実行により、2030年度に不足が見込まれる輸送力の34.6%を補う見込みです。政府は毎年度フォローアップを行い、状況の変化に応じて計画の見直しを行う方針です。なお、令和5年補正予算と令和6年度当初予算案における政策パッケージ関係予算は、一般会計404億円、エネルギー対策特別会計506億円、自動車安全特別会計9億円、労働保険特別会計1億円、財政投融資322億円と大規模なものとなっています。

ドライバーが喜ぶ食事補助の福利厚生「チケットレストラン」

ドライバーは移動が多く、休憩時間も不規則になりがちです。そのため、食生活がストレスの原因になることも少なくありません。外食を控えて食事を抜いてしまう人も多いでしょう。そのような状況の改善には、食の福利厚生サービスが有効です。

多様な勤務環境の従業員に公平に提供できる食の福利厚生が、エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」です。勤務時の食事代の支払いを事前に従業員に配布したICカードで決済することで食事代の半額を補助します。「チケットレストラン」に加入している企業の従業員は、全国25万店舗以上の加盟店で食事や飲み物を購入することができます。

ファミリーレストランやコンビニ、カフェなど、利用できる場所を選びません。勤務時間内ならいつでも使えるので、ドライバーの方に喜ばれるサービスです。おいしい食事を手軽に楽しめれば、仕事へのモチベーションアップの効果も見込めます。

企業は従業員へのこうした食事補助の福利厚生を提供することで、企業へのエンゲージメント醸成や定着率の向上が期待できます。「チケットレストラン」は、ドライバーの食生活を支援し、快適な労働環境作りに役立つサービスです。

2021年に株式会社ビズヒッツが働く男女501人を対象に実施した「あったら嬉しい福利厚生に関する意識調査」において食堂・食事補助は4位です。従業員や求職者が求める福利厚生を導入することで、採用強化や早期離職の防止効果も期待できるでしょう。

出典:株式会社ビズヒッツ|あったら嬉しい福利厚生に関する意識調査

2030年問題の対応は総力戦で対応

2030年問題への対応は、物流を支える重要なインフラの維持のために不可欠な課題です。デジタル化の加速やモーダルシフトの推進、環境対応力の強化など、物流の変革に向けた取り組みが様々な側面から提案されています。荷主・物流事業者・政府、そしてサービスを利用する消費者も一体となり、こうした取り組みを着実に実行していくことが大切です。労働力不足への対策と併せ、持続可能な物流体制の構築に向けた努力が求められています。

物流業界の企業において、ドライバーの離職率を低め、定着率を向上させるならば、「チケットレストラン」のような食事補助の福利厚生を導入するのも一つの方法です。全国で頑張る不規則な勤務時間のドライバーに寄り添う食事補助の福利厚生を導入してみませんか。

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