2030年問題とは少子高齢化による社会問題の総称です。2030年問題により、労働人口はどのように推移していくのでしょうか?労働人口の減少は企業にも影響が及ぶ問題です。必要な対策ができるよう、予測を確認した上で具体的な対策を紹介します。
2030年問題とは何か?
少子高齢化の進行によって表出する、さまざまな社会問題の総称が2030年問題です。少子高齢化が進むことで、働き手の減少・社会保険の費用負担や医療費の増加などが懸念されています。
人口分布を男女別・年齢別にグラフにした人口ピラミッドは、1980年ごろには「つりがね型」をしていました。14歳以下の人口の割合が低く出生数が少なくなってきていますが、65歳以上の人口もまだそれほど多くありません。比較的人口が安定して推移している状態です。
2020年の人口ピラミッドは、14歳以下の人口の割合が低く、65歳以上の人口が多い「つぼ型」になっています。少子高齢化が進んだ国に見られる形です。つぼ型の人口ピラミッドは、将来的な人口減少が予想されます。
2030年問題が予想されている2030年の人口ピラミッドでは、つぼ型の膨らみが上の方へ移動しているのが特徴です。総人口に対して50~60代の割合が高く、労働人口のさらなる減少が起こると考えられます。
ここでは2030年問題によって起こる社会の変化についても見ていきましょう。
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労働人口の推移を予測
少子高齢化が進む中、15~64歳の労働人口は減っていく予測です。総務省統計局の「人口推計」によると、2023年の総人口は1億2,435万2,000人です。このうち15~64歳の労働人口は7,395万2,000人、65歳以上は3,622万7,000人でした。
「令和5年版高齢社会白書」で2030年の労働人口を確認すると、2023年より約300万人少ない7,076万人になる予測です。労働人口はどんどん減っていき、あらゆる分野で担い手不足になると考えられています。
パーソル総合研究所の「労働市場の未来推計 2030」よると、2030年には人材644万人が不足するそうです。特に医療・介護分野は高齢者が増えることで急激に需要が増加していきますが、人材不足から供給が追いつきません。
参考:総務省統計局|人口推計(令和5年(2023年)10月確定値、令和6年(2024年)3月概算値)(2024年3月21日公表)
GDPの低迷
15~64歳の労働人口が減っていくと、生産活動に従事する人材が減るため、提供される商品やサービスが少なくなっていくと考えられます。経済活動が縮小していくことから、国の経済活動状況を表すGDPも低迷していくでしょう。
GDPが低迷する中では、優秀な人材ほど国内の労働市場に魅力を感じず、国外で働くことを選びます。優秀な人材が国内からいなくなることで、ますます生産性が落ち、市場が縮小していく悪循環に陥りかねません。
社会保険料の上昇
65歳以上の人口が増加することで、老齢年金の受給者が増えます。さらに介護費や医療費の増大も起こるでしょう。今のままの社会保険料では制度を維持できない可能性があります。
社会保険料は現在も上がり続けており、例えば国民年金保険料は2023年4月~2024年3月は月1万6,520円ですが、2024年4月~2025年3月までは月1万6,980円と上がっています。さらに2025年4月~2026年3月は月1万7,510円と2年間で990円上がることが決定済みです。
労働者1人当たりの社会保険料が上がり、現役世代の負担はますます大きくなっていくと考えられています。
その他の社会問題
少子高齢化の進行に伴う社会問題は、2030年問題の他にも「2025年問題」「2040年問題」などがあります。それぞれの社会問題は、2030年問題とどのように違うのでしょうか?
2025年問題
2025年には、第一次ベビーブームに生まれた団塊の世代が後期高齢者になります。これにより起こるさまざまな社会問題が2025年問題です。
高齢者が増えることで医療・介護のニーズが高まりますし、高齢者を支える労働人口は減っていく中で、人材不足・社会保障費の負担増・経済活動の停滞などの諸問題が表れ始めます。
2030年問題に対処するためにも、2025年問題への適切な対策が欠かせません。
関連記事:【2025年問題】とは?企業に迫る危機と対策をかんたんに解説!
2040年問題
2040年問題は少子高齢化に伴うさまざまな社会問題が、さらに深刻度を増している点が2030年問題との違いです。2040年には団塊ジュニア世代が高齢者になることで、高齢者の割合がピークに達します。
「令和5年版高齢社会白書」によると15~64歳の労働人口は2040年に6,213万人となる予測です。労働人口が大幅に減ることで、当たり前に提供されていたサービスを利用できなくなる可能性があります。
合わせて高齢者の増加により、社会保障制度の維持が難しくなることも2040年問題の課題です。現役世代の負担が増していくことや、制度の変更が行われることが予想されます。
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2030年問題による労働人口の減少が企業に与える影響
2030年問題により労働人口が減少するため、多くの企業は人材不足の状況に陥ります。人材不足により、企業にはどのような影響があるのでしょうか?
人件費の高騰
総務省統計局の「人口推計」では2030年の労働人口は7,395万2,000人と考えられています。社会全体が人材不足となる中でも、企業は事業の継続のために人材を確保しなければいけません。
自社に合う優秀な人材を確保したいと考える企業は、給与を上げる・福利厚生を充実させるといった方法で採用活動を行い始めるでしょう。
十分な利益のある企業であれば人件費を上げても問題ないかもしれませんが、人件費の負担が大きくなることで利益が大幅に減る企業や、赤字に転落する企業も出てくる可能性があります。
参考:総務省統計局|人口推計(令和5年(2023年)10月確定値、令和6年(2024年)3月概算値)(2024年3月21日公表)
事業縮小
人材不足で事業の継続に必要な十分な人材を雇用できない企業では、事業縮小を余儀なくされる可能性があります。商品やサービスの提供について依頼があっても、人材が足りていないため対応できず断らなければならないこともあるでしょう。
質を保ちつつ事業を続けるために、今いる人材のみでできる範囲の仕事だけを細々と続ける、というケースが増える可能性があります。
廃業
企業の後継者不足にも人材不足が関係します。少子高齢化が進んでいるため、これまで親族内で事業承継してきた企業の経営者に、子どもがいないこともあるでしょう。親族内に引き継ぐ人材がいなければ、従業員への事業承継やM&Aによる社外の人材への売却も検討が必要です。
ただし全体的に人材が不足しているため、経営を任せられる優秀な人材がタイミングよく表れるとは限りません。経営者が引退するタイミングで後継者が見つかっていなければ、黒字であっても廃業せざるを得ない事態です。
2030年問題に向けて企業にできる対策
2030年問題による人材不足や、それに伴う事業縮小・廃業に対して、企業はどのように対策すればよいのでしょうか?人材不足を解消するには、これまで活躍の機会が限られていた人材の活用が有効です。
活用による2030年問題への対策が期待できる人材をチェックしましょう。
女性を活用する
女性は出産や育児をきっかけに離職を選ぶケースがあることから、これまでは20代後半から40代にかけて労働力率が下がっており、M字型になっていました。
厚生労働省の「働く女性の状況」によると、2021年時点でも35~39歳の労働力率を底とするM字型になっていますが、カーブの底は2020年と比べても上昇しているそうです。
また10年前の2011年と比べると、どの年代も労働力率は上がっており、M字型から台形に近づきつつあります。
今後は育児中でも女性が仕事を続けやすい環境の整備が進むことで、人材不足の解消につなげられる可能性があります。
シニアを活用する
「第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(全体版)」によると「働き続けたい」という意欲のあるシニア世代は少なくありません。特に60代は半数以上が「働き続けたい」と考えていますし、70代前半も半数近い人が労働意欲を持っています。
年齢 |
働き続けたいと考えている人の割合 |
60~64歳 |
73.3% |
65~69歳 |
51.0% |
70~74歳 |
42.5% |
75~79歳 |
25.1% |
80歳以上 |
13.5% |
定年退職後も働き続けたいと考えているシニアを活用するには、労働条件や環境整備を行うとよいでしょう。時短勤務や日数を減らした勤務を可能とすることで、人材を確保しやすくなります。
参考:内閣府|第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(全体版)
海外人材を活用する
海外人材の採用も人材不足解消に役立つポイントです。海外人材が働きやすいよう、労働条件・労働環境・住環境などを整備して受け入れ態勢を作ることで、人材を確保しやすくなります。
マニュアルの多言語への対応や、帰省に使える休暇制度の整備なども、海外人材の働きやすさにつながります。
多様な人材の活用に向けた準備
2030年問題による人材不足へ対策するには、女性・シニア・海外人材など多様な人材の活用が欠かせません。多様な人材が活躍しやすいよう、企業は今から準備に取り組む必要があります。
ここでは具体的に必要な準備について見ていきましょう。
働き方を選べる制度の導入
働きやすいペースは従業員によって異なります。多様な人材が活躍しやすい環境を整えるには、従業員が望むペースで働ける制度づくりが必要です。
例えば育児中で子どもを保育園に預けている従業員は、保育園のお迎えに間に合わないためフルタイムの正社員としてのキャリアを諦めているかもしれません。このとき企業に時短勤務制度があれば、従業員はキャリアを諦めることなく育児と両立しやすくなります。
また家族の介護をしており自宅を離れるのが難しい従業員は、テレワークの制度があれば仕事を続けられるかもしれません。
状況に応じて柔軟に働き方を変えられるよう制度が整えば、スキルや経験を持つ従業員が離職することなく働き続けやすくなり、人材不足対策につながります。
休暇制度の整備
休暇制度の整備も必要です。例えば育児中には子どもの急な発熱で休まなければいけないこともあります。学校行事へ参加するために休まなければいけないこともあるでしょう。必要に応じて休暇を取得できるよう制度が整っていれば、従業員の働きやすさを高められます。
加えて休暇制度を利用しやすいよう、職場の雰囲気づくりをすることも重要です。制度があっても休みを取りにくい雰囲気の職場では活用しにくくなってしまいます。
上司が率先して休暇を取得したり、休暇の取得を呼びかけたりして、休みやすい雰囲気を醸成していきましょう。
デジタル化による業務効率化
人材不足を解消するには、デジタル化による業務効率化が効果的です。これまで3人必要だった業務を1人でできるようになれば、他の2人には別の業務を任せられます。
より生産性の高い業務に人材を振り分けられれば、少ない人材でも業績アップを期待できるかもしれません。
デジタル化を実施するには、今ある業務の洗い出しが必要です。どのような業務が発生していて、どのくらい手間がかかるかを把握することで、効率化すべき業務が分かります。自社に合うシステムの選定もスムーズに実施可能です。
福利厚生の充実度アップ
福利厚生の充実度アップも2030年問題による人材不足への対策に役立ちます。福利厚生が充実しており、働きやすい環境が整っている企業であれば、人材の採用がスムーズに進みやすくなりますし、今いる従業員の定着率アップも可能です。
マイナビの「2024年卒大学生活動実態調査 (4月)」によると、2024年卒の大学生のうち企業の福利厚生に「勤務地・仕事内容・給料と同程度関心がある」と回答したのは63.4%でした。「勤務地・仕事内容・給料よりも関心がある」と回答した割合と合わせると約70%です。
多くの求職者が企業の福利厚生に注目していますが、福利厚生であれば何を導入しても効果が期待できるわけではありません。人材不足に役立てるには求職者や従業員が求める福利厚生を整える必要があります。
同じくマイナビの「2024年卒大学生活動実態調査 (4月)」によると、2024年卒の大学生が求める福利厚生は「休暇制度(特別休暇・介護休暇など)」や「諸手当(住宅手当・食事手当など)」などです。
また働く男女501人を対象に実施した「あったら嬉しい福利厚生に関する意識調査」では、「家賃補助・住宅手当」「特別休暇」「旅行・レジャーの優待」「社員食堂・食事補助」などが上位にランクインしています。
これらのランキングを参考にして、導入する福利厚生を決めると効果的です。
労働人口の減少に「チケットレストラン」で対策
2030年問題による労働人口の減少に対策するには、多様な人材の働きやすい環境整備が役立ちます。時短勤務やテレワークなど希望する働き方を選べる制度の導入や、休暇制度の整備、デジタル化による業務効率化などです。
加えて福利厚生による働きやすい環境整備も、人材不足対策に役立つといわれています。求職者の採用や今いる従業員の定着率アップを目指すなら、喜ばれる福利厚生を導入しましょう。
例えば全従業員に対して公平に食事補助を提供できるエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」がおすすめです。全国に25万店舗以上ある加盟店で利用できるため、従業員は勤務場所や働き方にかかわらず利用できます。
実際に導入し人材の採用や定着に役立てている企業もある「チケットレストラン」を、2030年問題による人材不足の対策に導入してみませんか。