監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
「ホワイト500」は健康経営優良法人認定制度のカテゴリーの1つです。健康経営に取り組む中で、取得を目指す経営者や人事担当者に役立つよう、「ホワイト500」の詳細や、認定要件・取得するメリットなどを紹介します。認定に向けた具体的なステップも見ていきましょう。
「ホワイト500」とは?
「ホワイト500」は、2016年に経済産業省が創設した「健康経営優良法人認定制度」におけるカテゴリーの1つです。定められた基準をクリアした法人を対象に、「日本健康会議」が認定を行っています。
まずは「ホワイト500」の詳細について、「健康経営優良法人認定制度」の概要とともに整理していきましょう。
「健康経営優良法人認定制度」と「ホワイト500」
「健康経営優良法人認定制度」とは、健康経営に積極的かつ効果的に取り組んでいる企業を評価し、認定する制度です。この制度は、健康経営に対する企業の取り組みを「見える化」し、外部からの評価や企業価値を高めるために創設されました。
この「健康経営優良法人認定制度」は、企業規模によって「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」とに分かれています。「大規模法人部門」で健康経営優良法人に認定された企業のうち、上位500法人に付与されるのが「ホワイト500」です。
なお「中小規模法人部門」の上位500法人には「ブライト500」が付与されています。
「ホワイト500」認定要件は?
「ホワイト500」に認定されるには、前提として「健康経営優良法人」の認定を受けなければなりません。
「健康経営銘柄2024選定基準及び健康経営優良法人2024(大規模法人部門)認定要件」を見てみると、認定要件の大項目として、以下の5つが挙げられています。
- 経営理念 (経営者の自覚)
- 組織体制
- 制度・施策実行
- 評価・改善
- 法令遵守・リスクマネジメント
大項目は、中項目、小項目と分かれ、それぞれに具体的な評価項目と認定要件が設定されています。
例えば「3.制度・施策実行」では、中項目の1つとして「従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策」が問われ、さらに小項目として「保健指導」「具体的な健康保持・増進施策」「感染症予防対策」「喫煙対策」が問われます。
設定された評価項目をより高い基準で達成し、上位500法人に入ることで、「ホワイト500」の認定を受けられる制度です。
参考:健康経営銘柄2024選定基準及び健康経営優良法人2024(大規模法人部門)認定要件
「健康経営優良法人認定制度」が注目される背景
「ホワイト500」をはじめとする「健康経営優良法人認定制度」が注目される背景には、「健康経営」に対する社会的な意識の高まりがあります。
「健康経営」について、経済産業省は次のように定義しています。
「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。
少子高齢化が進むと、労働人口が減少し、従業員1人あたりの負荷が増えます。これにより従業員それぞれの心身状態が悪化すると、企業は社会保障費の増加や生産性の低下による業績不振など、深刻な問題に直面する可能性があります。
こうした懸念を踏まえ、企業戦略の1つとして従業員への健康投資を推奨するのが、「健康経営」の趣旨です。
健康経営優良法人認定制度の初回となった「健康経営優良法人2017(2016年度調査)」、大規模法人部門へのエントリー数は726、認定数235でした。
ところが第6回となる「健康経営優良法人2022(2021年度調査)」では、エントリー数2,869、認定数2,299と、エントリー数、認定数ともに大幅に増加しています。
健康経営に対する社会的な意識の変化が如実に表れた結果と言えるでしょう。
参考:経済産業省|ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」
「ホワイト500」に認定されるメリット
「ホワイト500」に認定されることにより、企業が得られるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
パフォーマンスや生産性の向上
厚生労働省は、企業が健康経営に取り組み、従業員の健康保持・推進を目指すことは、従業員の活力や生産性の向上、ひいては組織の活性化につながると言及しています。
体調が万全でなかったり、大きなストレスを抱えたりした状態で、最高のパフォーマンスを発揮することはできません。個々のパフォーマンスが低下すれば、企業全体の生産性もおのずと低下するでしょう。
その点「ホワイト500」に認定された企業は、従業員の健康に対する意識が非常に高く、各従業員の心身の健康状態も良好であることが推察されます。そのため、ほかの企業に比べて高いパフォーマンスや生産性を発揮しやすいと考えられるのです。
自社の人的資源を最大限に活用し、企業としての業績向上を図れるという点で、「ホワイト500」に認定されることには大きなメリットがあるといえるでしょう。
コストの削減
「ホワイト500」に認定されることで企業が得られるメリットとして、特に注目されているのが「コストの削減」です。
前述のとおり、従業員の心身状態の悪化は、社会保障費の増加や生産性の低下による業績不振を招く要因となります。これは企業の経営上無視できない損失です。
なお、心身に何らかの不調を抱えて業務を遂行している状態を「プレゼンティーズム」といいますが、本来発揮されるはずのパフォーマンスが失われている点で、企業にとっては損失となります。
プレゼンティーズムに対し、心身の不調が原因で業務が遂行できない状態が「アブセンティーズム」です。アブセンティーズムもマンパワー不足や生産性の低下を招くことから企業にとって損失といえます。
健康経営に取り組むことは、これらの損失を防ぐ上でも大きな効果を発揮します。目に見えないコストを削減できる、企業にとってもメリットのある取り組みと言えるでしょう。
人材の定着
少子化が進む現代日本において、優秀な人材の獲得は多くの企業にとっての課題です。
さらに、価値観の多様化は仕事への考え方にも大きな影響を与え、キャリアアップのための転職も珍しいことではなくなりました。優秀な人材を獲得できたからといって、必ずしも長期的に勤務してもらえるとは限らないのが現状です。
経済産業省が公表した『平成28年度事業報告書(健康経営・健康投資普及推進等事業)』を見てみると、就職したい企業について尋ねられた就活生のうち、43.8%もの人が「従業員の健康や働き方に配慮している」と回答しました。これは「福利厚生が充実している」の44.2%に次ぐ結果です。
この調査結果は、従業員の健康を意識した取り組みが、人材にとって大きな魅力となっていることを意味します。「ホワイト500」の認定に伴う健康経営の推進は、優秀な人材の獲得や定着を目指す上で、非常に大きなメリットと言えるでしょう。
企業イメージの向上
健康経営は、経営上の戦略として、従業員の健康維持や増進を目指す取り組みです。従業員の健康管理や働きやすさの向上につながることから、健康経営へ積極的に取り組む企業は、内外に「従業員を大切にする企業」との好印象を与えやすくなります。
インターネットが当たり前になり、あらゆる情報が瞬時に世界中へ拡散する現代社会において、企業イメージの良し悪しは重要なポイントです。イメージ戦略に成功すれば、イメージ向上とともに企業のファンが増え、顧客の拡大にもつながっていくでしょう。
健康経営を目指す企業の中でも、実際に「健康経営優良法人」に認定され、かつ「ホワイト500」を付与されている企業は、公的に取り組みが認められているという点でより良いイメージにつながりやすくなります。
長期的な視点で見てみると、企業の業績向上にも寄与するでしょう。
「ホワイト500」の認定スケジュール
「ホワイト500」の認定を受けるには、いくつかのステップがあります。実際に「ホワイト500」の認定を目指す際の参考として、ACTION!健康経営で基本的なスケジュールを確認していきましょう。
ステップ1:健康経営度調査に回答・申請
「ホワイト500」を含む「健康経営優良法人」の認定を受けるには、まず「健康経営度調査」に回答する必要があります。
過去に回答実績がある法人には、受付開始とともにメールで案内が送付されます。専用サイトから「健康経営度調査」をダウンロードし、回答後には回答データをアップロードしましょう。
非上場法人が初めて回答する場合、新規ID発行サイトへアクセスし、ID発行後に「健康経営度調査」のダウンロード、回答を行います。一方上場企業の場合、前年回答していなくても受付開始時に案内が郵送されるため、内容に従い進めましょう。
なお「健康経営度調査」内には、「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に申請する・しないを問う設問があります。ここで「申請する」を選ぶことにより、自動的にエントリーが行われる仕組みです。
ACTION!健康経営の「申請について」では、2023年8月21日~10月13日17時が回答・申請の受付期間とされました。
ステップ2:健康経営優良法人認定委員会による審査
「健康経営度調査」に回答・アップロードすると、後日「フィードバックシート(暫定版)」が送付されます。このフィードバックシートには、健康経営度の評価結果や評価の内訳などが、偏差値とともに明記されています。これにより、健康経営を目指す上での自社の強みや改善点を把握できる仕組みです。
シートの送付以降、健康経営優良法人認定委員会による審査が行われます。
参考:令和5年度 健康経営度調査(従業員の健康に関する取り組みについての調査)
ステップ3:日本健康会議による認定
約2カ月間の審査を経て、該当法人が日本健康会議より「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定されます。
認定法人の上位500法人に該当する法人は、合わせて「ホワイト500」の認定も受けます。
「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」では、2024年3月11日に発表があり、確定版フィードバックシートが送付されました。
「ホワイト500」への第一歩「チケットレストラン」
実際に「健康経営度調査」へ回答する中で、自社の健康経営に関する取り組みが不十分であることに気付く経営者や人事担当者は少なくありません。
求められる基準をクリアするために実践できる具体的な取り組み案として、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」を紹介します。
「チケットレストラン」とは
「健康経営優良法人」の認定要件の1つ「3.制度・施策実行」では、評価項目として「(従業員の)食生活の改善に向けた取り組み」が問われています。
食生活を健康の基盤としてとらえ、従業員が金銭的、時間的に無理なく食事を取れる環境を提供する姿勢が求められる設問と言えるでしょう。
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、ICカード型食事補助の福利厚生サービスです。
専用のICカードを提携店舗での支払いに利用することで、従業員は勤務先から食事代の補助を受けられます。提携店舗はコンビニやファミレス、カフェなど全国に25万店舗以上あり、従業員の働き方に合わせて使いやすい食事補助の福利厚生サービスです。
一定の利用条件を満たしていれば、従業員の税負担を増やすことなく食事補助として提供できるため、従業員の実質的な手取り額を増やせる点もメリットです。
食生活が乱れがちな従業員の食生活を改善し、「ホワイト500」の認定を目指す取り組みの1つとして、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
健康経営へ積極的に取り組む法人の証「ホワイト500」
「ホワイト500」は、「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定を受けた法人のうち、上位500法人に付与される冠です。
「ホワイト500」の認定を受けることで、健康経営へ積極的に取り組む企業として広く認知され、パフォーマンスや業績の向上、優秀な人材の定着など、数々のメリットを享受できるでしょう。
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」など、認定時の評価項目をクリアする施策を検討、導入し、「ホワイト500」認定企業を目指しましょう。