日々の仕事に追われお菓子でお昼を済ませたり、栄養バランスの悪い食事が続くと身体に不調が現れます。「ストレスが溜まってイライラしやすい」「疲れやすく仕事に集中できない」という方も多いのではないでしょうか?
ストレスと食事の関係は強く、現状の食生活を見直し食べるものを変えるだけで、ストレスを解消できることがあります。この記事では、管理栄養士である筆者が「ストレスと食事の関係性」とストレスを溜めにくくする「食事マネジメント方法」を解説します。
食事とストレスの関係とは?ストレスが溜まると暴飲暴食してしまう原因
ストレスと食事の関係性において、重要なのが自律神経です。自律神経には交感神経と副交感神経があり、大事な会議やプレゼンの前の緊張を感じている時や忙しく仕事をしているときは交感神経が優位に働きます。逆に仕事が一段落した時や帰宅しゆっくりしている時は副交感神経が優位に働きます。
通常バランスが保たれている自律神経ですが、ストレスが溜まるとバランスを保てなくなります。その結果、交感神経が優位になり食欲がなくなったり、副交感神経が優位になって、暴飲暴食に走ってしまうのです。つまり、自律神経のバランスを整えることがポイントになるのです。(※1)
ストレス時に積極的に摂りたい栄養素
(1)たんぱく質
ストレスを受けるとエネルギー代謝が必要以上に活発になるため、たんぱく質の分解が盛んになります。そのため、ストレスを感じている人は積極的なたんぱく質摂取が必要です。たとえば、30~40代の男性の場合、1日に75~115gのたんぱく質摂取が目安となります。
活動レベルとは、日常生活の平均的な活動の強度を表したもの。生活スタイルによってレベルⅠ〜Ⅲに分類され、一日に必要なエネルギー量・栄養素等が異なります。
活動レベルⅠ:生活の大部分を座位。静的な活動が中心。
活動レベルⅡ:デスクワーク中心の仕事だが、通勤や買物、軽いスポーツなど移動や立って行う作業を含む場合。
レベルⅢ:移動や立ち仕事が多い、また、スポーツなど活発な運動習慣がある場合。
以下は、食材に含まれるたんぱく質の目安です。食事の目安にしてみてください。
・ゆで卵1個6.5g
・焼き鮭1食28.1g
・豚バラ肉1食(100g)14.4g
・鶏胸肉1食(100g)19.5g
ストレスを抱えている時に食事を欠食すると、75gのたんぱく質を摂取することは難しくなります。まずは目標量を目指してたんぱく質を摂取しましょう。
(2)ビタミンC
たんぱく質以外にも不足しがちな栄養素としてビタミンCがあります。ストレスを抱えているとストレスに抵抗するために副腎皮質ホルモンが分泌されます。
副腎皮質ホルモンの原料はビタミンCなので、ストレスを抱えている時ほどビタミンCの摂取が必要です。日本人の食事摂取基準2020年版によると1日に100mgの摂取を推奨しています。ビタミンCは過剰摂取しても尿から排出されるため、上限はありません。ストレスを抱えているときは、普段よりもビタミンCが多く含まれている食材を食べてみて下さい。ビタミンCを多く含む食材はこちらです。
・赤パプリカ1/2個85mg
・ブロッコリー5切れ60mg
・かぼちゃ(煮物サイズ)1切れ43mg
・黄キウイ1個140mg
食べ物次第?ストレスを”溜めにくくする食事”
上記では、ストレス時に不足しやすい栄養素を紹介しましたが、「ストレスを溜めにくくする」にはどうしたらいいのでしょうか?ここでは、普段の食事で気をつけたいポイントを2つ紹介します。
(1)果物を食べる
果物はビタミンCを多く含んでいます。おすすめの果物は「キウイ」「みかん」「いちご」です。これらは果物の中でもビタミンCの含有量が多く、手軽に食べることができる果物です。
キウイ1個・みかん3〜4個・いちご5〜7個程度が1日の目安です。ビタミンCの濃度は摂取してから1.5~3時間でピークになるので1度に食べきるのではなく、数回に分けて食べることをおすすめします。
(2)カルシウムを摂取する
カルシウムには脳神経の興奮を抑える働きがあります。カルシウムが不足するとイライラしたり骨が弱くなってしまいます。
日本人の食事摂取基準2020年版によると30歳〜49歳男性の推奨量は1日に738mgです。しかし令和元年国民健康栄養調査によると30代の男性の平均摂取量は395mgとなっており、約5割しか摂取できていません。
カルシウムは、牛乳や乳製品、小魚や大豆製品に含まれているため、まずは必要量まで摂取することが大切です。ちなみに、夕食時の方がカルシウムの吸収率が高いため、夕食時に意識すると良いでしょう。
食事によるストレスマネジメント方法
ストレスが溜まると栄養バランスまで頭が回らずに好きなものを好きなだけ食べてしまいます。ストレスによる暴飲暴食はストレスから一時的に解放されるかもしれません。しかしストレスの根本的な解消にはならないことに気付いているのではないでしょうか?
そこで、食事によるストレスマネジメント方法を紹介します。「こんなこと知ってる」と思うかもしれませんが、知っていても実践している人はわずかです。ストレスが溜まってきたと感じたら上記で紹介した食べ物をメインに、食事をマネジメントしていきましょう。
(1)3食の食事でおすすめの食べ物
・朝ごはんは果物を食べると糖質とビタミンCを摂取
・昼ごはんは主食に肉か魚を選ぶことでたんぱく質とトリプトファンを摂取
・夜ご飯は豆腐や小魚、乳製品でカルシウムを摂取
昼ごはんは、1日の中で1番多くエネルギーを摂取しても肥満に繋がりにくい時です。お菓子で空腹を満たすのではなく、しっかりと食事を摂りましょう。また、夜遅くに高エネルギーとなると体脂肪増に影響します。手軽に食べることのできる豆腐や小魚、乳製品を選び、お酒は1~2杯までとしましょう。
(2)お菓子やインスタント食品の過剰摂取は避ける
食品添加物を多く含むお菓子やインスタント食品にはリンが多く含まれています。リンを多く摂りすぎるとカルシウムの吸収を阻害してしまうため、毎日のようにインスタント食品が続くとカルシウム不足の原因となります(※4)。インスタント食品だけでなく、肉類もカルシウムに対してのリンの割合が高くなります。肉類だけでなく魚もバランスよく食べることが大切です。
まとめ
日々の食事の中でたんぱく質をとビタミンCを継続的に摂取することでストレスを溜めない食生活を送りましょう。今回紹介したポイントを参考にすることで、ストレスに負けずに疲れにくい身体で集中して業務に励むことができますよ。
《参考》
※1:ストレスと食生活/厚生労働省
※2:ストレスと栄養状態の関連について-簡便な測定方法を用いての検討‐/著者 髙橋 正子・一戸 ゆみ・浅川 聡子
※3:セロトニン/厚生労働省
※4:リン/厚生労働省