従業員が求める福利厚生とはどのようなものなのか、頭を悩ませる経営者や総務人事担当者は少なくありません。従業員に喜ばれ、しっかりと利用される新たな福利厚生を検討する際のヒントとして、福利厚生の基本知識やおすすめのサービスを紹介します。
福利厚生とは
福利厚生の提供にあたっては、福利厚生そのものについて正しく理解することが大切です。まずは、福利厚生の詳細から確認していきましょう。
企業から従業員へ提供される賃金以外の報酬
福利厚生とは、「企業が労働の対価として従業員とその家族へ提供する、賃金以外の報酬およびサービス」をいいます。
労働の報酬は基本的に賃金や賞与で支払われますが、そこに加えて提供される報酬やサービスが福利厚生です。通常の賃金や賞与は基本的に課税対象となりますが、福利厚生として認められれば、企業側、従業員側ともに課税対象とはなりません。*詳細は後述
コストを最小限に留めつつ、企業が従業員とその家族の健康や充実したライフプランをサポートための施策が福利厚生なのです。
福利厚生の種類
福利厚生は、「法定福利厚生(法定福利)」と「法定外福利厚生(法定外福利)」の2種類に分かれます。以下、それぞれの詳細を解説します。
法定福利厚生(法定福利)
「法定福利厚生」は、法律によって提供が定められた福利厚生をいいます。従業員を1人でも雇用しているのであれば、企業には法定福利厚生を提供する義務があり、拒否はできません。仮に正しく提供されていなかった場合には、従業員から賠償請求をされる可能性もあります。
法定福利厚生には、以下の項目があります。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 子ども・子育て拠出金
なお、2020年に一般社団法人 日本経済団体連合会が発表した「第64回 福利厚生費調査結果報告(2019年度)」によると、2019年度の従業員1人あたりの法定福利費は、一カ月あたりの平均で84,392円となっています。
法定外福利厚生(法定外福利)
「法定福利厚生」が法律で定められた福利厚生であるのに対し、「法定外福利厚生」は企業が独自に提供する福利厚生をいいます。
企業独自のサービスのため、提供する内容について決まりはありません。福利厚生の目的に沿ったものである限り、何を用意するのも企業の自由です。自由度が高いぶん、企業の価値観やカラーが表れやすい傾向にあります。
以下、法定外福利厚生の提供例を紹介します。
- 通勤手当
- 住宅手当
- 特別休暇
- 慰安旅行
- 健康診断
- キャリアサポート
- レジャー
- 慶弔見舞金
- 食事補助
なお、上記「第64回 福利厚生費調査結果報告(2019年度)」によると、2019年度の従業員1人あたりの法定外福利費は、一カ月あたりの平均で24,125円となっています。
福利厚生を提供するメリット
福利厚生の提供は、企業にとって大きなコストです。にもかかわらず、多くの企業が独自の福利厚生の提供を実施するのは、コストを補ってなお余りあるメリットがあるからにほかなりません。福利厚生を提供することで企業が得られるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
従業員満足度の向上
充実した福利厚生の提供は、従業員満足度の向上に役立ちます。従業員満足度とは、文字どおり「従業員の企業に対する満足度」のことで、従業員満足度が高い企業は従業員の仕事に対するモチベーションが高く、同時にパフォーマンスも高い傾向にあります。
従業員のパフォーマンスが向上すると、合わせて期待できるのが業務の効率化や正確性の向上です。質の高い商品やサービスを提供することで、顧客満足度もおのずと向上するでしょう。結果として、企業としての業績向上が期待できるのです。
人材の獲得・定着
充実した福利厚生を提供する企業は、人材を獲得したり、定着させたりがしやすい傾向にあります。
従業員の立場から見ると、福利厚生の充実度はすなわち「働きやすさ」の指標です。「リクルート 就職みらい研究所」が行った『就職プロセス調査(2023年卒)「2022年12月1日時点 内定状況」』を見ても、「就職先を確定する際に決め手となった項目」との質問に対し、もっとも多い「自らの成長が期待できる」に次いで多い回答が「福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している」となりました。
福利厚生が充実した企業には多くの求職者が集まるため、多くの優秀な人材を獲得しやすくなります。また、職場への満足度が高いことから離職率は低くなります。優秀な人材が定着することで、企業としてのより大きな成長も期待できるのです。
企業価値の向上
充実した福利厚生の提供は、「従業員を大切にする企業」「先進的な企業」という内外への強力なアピールになります。企業イメージが向上し、ブランディング効果が期待できます。
自社のブランディング推進は、他社との差別化、ひいては業界内で独自の地位を築く第一歩です。知名度が向上するに従い、消費者の第一の選択肢として選ばれやすくなり、顧客拡大も期待できるでしょう。唯一無二の企業として、企業価値がどんどん高まっていくのです。
節税効果
福利厚生の提供に費やした費用は、基本的に経費として計上できます。経費は損金算入できるため、法人税の節税に大きな効果を発揮します。
なお、経費として計上するには、福利厚生が福利厚生として認められなければなりません。続いて解説する福利厚生の条件を満たす場合に限り、福利厚生による節税が可能です。
福利厚生の3つの条件
福利厚生が福利厚生として認められるには、特定の条件を満たす必要があります。以下、福利厚生の3つの条件を紹介します。
1. すべての従業員が平等に利用できる
福利厚生は、すべての従業員が平等に利用可能なものにする必要があります。特定の部署や立場の人のみを対象とした制度は、福利厚生としては認められません。
これは雇用形態についても同様で、同じ労働に従事する人であれば、パートタイム労働者や契約社員などの労働者にも平等に提供しなければならないと「パートタイム・有期雇用労働法」によって定められています。
2.福利厚生費として金額が妥当
福利厚生費そのものに上限金額はありません。しかし、社会通念上合理的でないと判断されるほどに高額な場合、福利厚生としては認められない可能性が高くなります。
例えば通勤手当の場合、上限が15万円と定められています。福利厚生を提供する際は、提供するサービスに対し支出する金額が妥当なものであるか、事前にしっかりと検討する必要があるのです。
3.現金支給ではない
福利厚生にまつわる費用を現金で従業員に支給した場合も、福利厚生とは認められません。というのも、現金で支給した場合、本来の目的どおりに使用されるとは限らないからです。
福利厚生はあくまでも従業員やその家族の健康や充実したライフプランのために提供されるものです。使い道を追跡できない支給方法は、福利厚生費の支給方法として妥当ではありません。
同様に、金券などの換金性の高い方法での支給もNGです。この原則が守られなかった場合、給与として課税対象となるため注意しましょう。
福利厚生を導入する際のポイント
従業員にとって魅力的な福利厚生を提供するには、導入前から導入後に至るまで、手順を踏んだ取り組みが必要です。中でも特に意識したいポイントを紹介します。
事前にヒアリングを行う
せっかく導入した福利厚生が思ったように利用されず、頭を抱える企業は決して少なくありません。多くの場合、その原因は事前のヒアリング不足にあります。
経営者や総務人事担当者が「必要だろう」と考える福利厚生と、従業員が本当に必要とする福利厚生とは必ずしも一致しません。多くの従業員に利用される福利厚生を導入するのなら、従業員目線で求められる福利厚生を理解する必要があるのです。
その手段としておすすめなのが、従業員を対象としたヒアリングです。社内アンケートなどを通じ、求められる福利厚生を正しく把握することで、従業員にとって魅力的な福利厚生の導入を実現できるでしょう。
内容や利用方法を周知する
十分に魅力的な福利厚生を提供していても、周知徹底が成されていないがために、利用率が伸びないというのもよくある話です。
新たに福利厚生を導入するにあたっては、内容や利用方法について事前にしっかりと周知しておきましょう。なお、周知の段階で十分に魅力を伝えられなかった場合、存在は知っていても利用しない従業員が多く出てしまう結果になりかねません。
十分な周知ができない可能性を踏まえ、提供する福利厚生の魅力やメリットをまとめたパンフレットの作成などを行っておくと安心です。
利用状況を確認する
福利厚生の導入は、提供開始すればそれで終了というわけではありません。長期的に愛用される福利厚生にするためには、適宜利用状況を確認し、改善すべき点を改善することが大切です。
例えば、導入時には多くの利用者がいたにもかかわらず、その後の利用率が尻すぼみになっている場合、サービス内容に何らかの問題があると考えなければなりません。
定期的に利用状況をチェックし、改善点を洗い出すことで、より魅力的な福利厚生の提供が実現できます。
従業員にとって本当に魅力的な福利厚生とは?
多くの従業員が魅力を感じ、長期的に愛用する福利厚生とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。エデンレッドジャパンが行ったアンケートの結果をもとに解説します。
「食事補助」を求める声が多数
エデンレッドジャパンが2010年に行った「働き方・待遇に関する意識調査」によると、「転職先に導入されていてほしい福利厚生」への回答として、「住宅手当(63.1%)」「通勤手当(55.6%)」に次いで多かったのが、「食事補助(53.1%)」でした。
一方で、「自社に導入・拡充したい福利厚生」として「福利厚生」を挙げた企業はわずか18.8%に留まりました。34.3ポイントという社員側と企業側とのギャップは、全項目内で最大です。
この調査を見る限り、まず企業が導入を検討すべき福利厚生は「食事補助」といえます。
食事補助を福利厚生として導入するには
実際に食事補助を福利厚生として導入するには、あらかじめ知っておきたいいくつかのポイントがあります。詳しく見ていきましょう。
食事補助を福利厚生にする条件
国税庁は、食事補助が福利厚生として認められる条件として、以下の2つを挙げています。
(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
(2)次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)
例えば、ある従業員の1カ月分の食事代が5,000円で、内3,000円を従業員が負担している場合、上記(1)(2)を共に満たすため、福利厚生費として認められます。
一方、1カ月分の食事代5,000円の内、従業員の負担額が2,000円の場合、(2)の条件は満たしますが(1)は満たしません。この場合、福利厚生費としては計上できず、給与として課税されます。
現物での支給が原則
前述のとおり、現金での支給は福利厚生費としては認められません。食事補助の場合も同様で、福利厚生にするには現物での支給が原則です。
ただし、従業員が企業と提携した飲食店で食事をし、その代金の一部を企業が直接飲食店へ支払う場合には、福利厚生として計上できます。というのも、この仕組みでは、企業から従業員へ現金が渡ることがないからです。
電子カードタイプを含む食事チケットを使用した福利厚生が認められているのは、こうした理由によるものです。
福利厚生として提供できる食事補助の種類
「福利厚生の食事補助」には、いくつかの種類があります。自社に最適なサービスを比較、検討する際のヒントとして確認していきましょう。
社員食堂
企業が従業員へ提供する食事補助として、定番の形態です。
社員食堂では、毎日栄養バランスを考えた温かい食事を提供できます。反面、調理場と食事スペースを合わせたスペースの確保が必要であり、初期費用・運営コストも大きくなりがちです。また、営業時間が限られている場合、部署や担当業務によっては利用できません。
食事の提供方法としては魅力的ながら、デメリットも大きい方法です。
設置型社食
企業内に専用の冷蔵庫を設置し、従業員が好きな飲食物を自由に選ぶタイプの食事補助です。
冷蔵庫や提供する食事などは、業者が設置、管理、補充します。また、休憩スペース程度の空間で運用できるため、導入にあたって特別な手間も必要ありません。
一方、提供できる量に限りがあったり、メニューが偏りがちだったりといったデメリットもあります。大規模な事業所には不向きなタイプといえそうです。
宅配弁当
弁当の宅配業者にお弁当を発注し、届けてもらうタイプの食事補助です。
宅配弁当を利用する場合、企業側の手間や負担は基本的にありません。近年では、従業員の注文をとりまとめ、発注や精算を自動で行えるクラウドサービスも登場しています。こうしたサービスを活用すれば、発注にまつわる手間すらカットできます。
デメリットとしては、メニューがマンネリ化しやすいことや、直前のキャンセルが難しいことなどが挙げられます。
チケットサービス
企業と提携した飲食店を利用することで、従業員の食事代が安くなるタイプの食事補助サービスです。
提携店舗数にもよりますが、チケットサービスは選べるメニューが豊富で、利用時間などの制限もありません。利用にあたっての自由度が高いため、業種や担当業務を問わず平等に利用できます。
また、利用先が社外のため、社内に特別なスペースを用意する必要もありません。多くのメリットから、近年特に注目度を高めているサービスです。
日本一の実績を持つ食事補助サービス「チケットレストラン」
食事補助の福利厚生サービスとして、日本一の実績を持つのがエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」です。「チケットレストラン」は、いったいどのようなサービスなのでしょうか。
「チケットレストラン」とは
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、専用の電子カードを介して提供する福利厚生の食事補助サービスです。上記食事補助の種類としては、「チケットサービス」にあたります。
2023年3月には「Uber Eats」との業務提携を結び、利用可能店舗数が全国約7万店舗から約25万店舗と大幅に拡大しました。カフェ、コンビニ、ファミレスなど、業務時間界であれば好きなタイミングで利用可能です。
なお、「チケットレストラン」は国税庁の確認のもと運用されています。「食事に限定」し、かつ「管理・証明」ができれば、福利厚生費として計上できます。いわば、全国各地に社員食堂を持ったような使い方ができるのが、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」なのです。
その利便性の高さから、導入企業数2,000社以上、利用率99%、継続率98%、社員満足度90%という極めて高いユーザー評価を得ています。
従業員目線の福利厚生で企業価値を高めよう
福利厚生を充実させると、企業は「従業員満足度の向上」や「人材の獲得・定着」などさまざまなメリットを得られます。業績の向上や節税も期待できることから、経営上の視点からも、福利厚生の導入は積極的に取り組むべき施策です。
なお、特に求められている福利厚生として挙げられるのが、「食事補助」です。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」などを検討し、従業員目線の福利厚生導入を目指してみてはいかがでしょうか。