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【社労士監修】公務員は扶養手当をもらえる?その金額や条件、共働きの場合など

2024.08.28

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

公務員の扶養手当は法律で定められており、一般企業で設けられている扶養手当とは異なります。支給には具体的にどのような条件があるのでしょうか?配偶者・子ども・その他の親族を扶養している場合の支給額や、手続きの方法を見ていきましょう。

公務員における扶養手当とは?

公務員の扶養手当は、扶養親族のある職員に対する生活補助が目的です。養うべき親族(扶養親族)が増えると生活費も増えるため、生活費の負担を緩和するために支給されます。

一般企業の場合、扶養手当の支給条件は企業ごとに自由に定めたルールです。一方、公務員の扶養手当に関するルールは「一般職の職員の給与に関する法律」で定められています。

法律で定められている内容に従い、条件を満たしている公務員が届出を行うと受給可能です。

関連記事:【社労士監修】家族手当とは?扶養手当との違い、メリットとデメリット

公務員の扶養手当の支給条件

扶養手当の支給を受けるには・所得・同居別居・続柄などの定めがあります。扶養親族の種類ごとに、扶養手当の支給条件を見ていきましょう。

配偶者の支給条件

配偶者は以下の2つの条件を満たしていると扶養親族として認められます。

  • 他の生計の途がなく主として職員の扶養であること
  • あらかじめ規定された続柄・年齢等に該当すること

他の生計の途がないというのは、生計を立てられる収入がないことを意味します。具体的な目安は年収130万円未満です。主として職員の扶養であるとは、他の人の扶養になっていないことを意味します。

例えば公務員の配偶者がパートとして働き年収100万円を受け取っている場合には、扶養親族となり扶養手当の支給対象となります。一方、配偶者が会社員として年収200万円を受け取っている場合には扶養親族にはあたらず支給対象外です。

※公務員の扶養条件において「所得」と表現されるのは「年間総収入(年収)」であり、年収から必要経費を差し引いた「税法上の所得」とは異なります。

別居中の配偶者の支給条件

公務員が扶養している配偶者と別居しているときでも、生計の1/3以上を公務員が仕送りしていれば、扶養親族として扶養手当の支給条件に当てはまります。

加えてその仕送りは、原則として金融機関を通して月1回以上継続的に行われていることも必要です。

内縁関係の配偶者の支給条件

内縁関係の配偶者についても、法的に婚姻関係にある配偶者と同じ条件を満たすことで扶養親族となります。

ただし、内縁関係が認められるためには「婚姻の意思」と「夫婦同然の共同生活」などが判断要素に含まれるため、別居の場合には内縁関係の認定が難しくなることも考えられます。

子どもの支給条件

子どもの支給に関しては、他に生計を立てられる収入がなく公務員である親に扶養されていることに加えて、「満22歳到達後最初の3月31日まで」という年齢の決まりがあります。

人数の制限はないため、子どもの人数分だけ扶養手当の支給を受けられます。

また結婚相手に連れ子がいる場合、養子縁組していれば扶養手当の対象です。

孫の支給条件

「孫が生まれたが、生計を維持することが困難」な場合、公務員は孫についても扶養親族とすることが可能です。孫を扶養する場合の支給条件も子どもと同様で「満22歳到達後最初の3月31日まで」になります。

親の支給条件

父母を扶養親族とするためには、他に生計を立てられる収入がなく公務員である子が扶養しており、父母の年齢が満60歳以上であることが必要です。条件を満たしていれば、母親のみまたは父親のみを扶養親族にすることもできます。

例えば父親に収入があっても、母親を養うほどではなく主として職員が母親を扶養している状態であれば、母親のみ扶養手当の対象として届け出をすることが可能です。

また祖父母についても、満60歳以上であれば父母と同様に扶養親族として届け出を出すことが認められています。

弟妹の支給条件

公務員の弟妹も、他に生計を立てられる収入がなく公務員である兄姉が扶養している場合には、「満22歳到達後最初の3月31日まで」扶養親族となります。

重度心身障害者の支給条件

寝たきりで日常生活を自力で送るのが困難といった、重度心身障害者については、年齢や続柄は問われません。主として公務員がその生計を維持し扶養していれば扶養親族として認められます。

扶養手当が支給されない条件

配偶者や子どもであっても条件を満たしていなければ扶養手当は支給されません。支給されないケースを具体的に見ていきましょう。

被扶養者の年収が130万以上の見込みである場合

例えば、配偶者が失業して雇用保険の基本手当を受給するケースで考えてみましょう。基本手当の受給が月10万8,333円以上なら、年収130万円を超えるため扶養親族として認められません。

一方、基本手当の受給額が月10万8,333円未満であれば、年収は130万円未満です。基本手当を受け取っていても公務員が主として扶養していれば、扶養手当を受け取れます。

関連記事:【税理士監修】扶養から外れる年収の壁をわかりやすく解説。期間限定の措置も確認

公務員である職員が主な扶養者でない場合

長男・次男・三男の3人兄弟で母親を扶養しているとします。長男が母親の生計の1/2を負担し、残りの1/4ずつを次男と三男で負担することにしました。

この場合、主たる扶養者は長男です。長男が公務員であれば母親を扶養親族として扶養手当を受け取れますが、次男・三男のどちらかが公務員である場合は扶養手当の対象にできません。

他の人の扶養手当の支給対象者になっている場合

会社員の夫と公務員の妻に子どもがいるとします。子どもが夫の扶養に入っている場合、子どもを公務員の妻の扶養に入れることはできません。

誤って届出を出さないよう注意しましょう。

公務員の職務の級が9級以上の場合

行政職俸給表(一)で9級以上の公務員は、扶養親族の配偶者や父母等がいる場合でも扶養手当の対象外です。

新たに9級以上になった場合には、それが月の初日であればその月から、それ以外であれば翌月から支給されなくなります。

参考:
人事院|行 政 職 俸 給 表 イ 行政職俸給表(一)
人事院|国家公務員の諸手当の概要

公務員の扶養手当の支給金額はいくら?

公務員の扶養手当はいくらなのでしょうか。ここでは「国家公務員の諸手当の概要」をもとに、扶養親族ごとの支給金額を解説します。

参考:人事院|国家公務員の諸手当の概要

配偶者(内縁含む)の支給金額

配偶者(内縁含む)への支給金額は6,500円です。ただし、職員の役職によって金額が変わります。行政職8級相当の職員は3,500円、9級以上になると0円です。

子どもの支給金額

子どもの扶養手当の支給額は1人につき1万円です。加えて子どもが16歳の年度始めから満22歳に達してから最初の3月31日までは、5,000円が支給額に上乗せされます。合計で1万5,000円です。

人数の制限は設けられていないため、10歳の子どもが1人であれば1万円が、10歳・17歳・20歳の3人の子どもがいれば4万円が支給されます。

注意が必要なのは子どものアルバイトです。子どもが扶養親族として認められるには、自力で生計を維持できず公務員である親に扶養されている必要があります。熱心にアルバイトに取り組んだ結果、年収130万円を超えると扶養手当の対象外になるため注意しましょう。

また子どもが満22歳の年度末を迎える前に就職した場合にも、扶養手当の対象外となります。そのまま受給し続けてしまうと不正受給となるため、速やかな届け出が必要です。

親や祖父母ほかの支給金額

「親」「祖父母」「孫」「弟妹」「重度心身障害者」といった扶養親族への、支給金額は1人につき6,500円です。扶養している公務員の役職に応じて、行政職8級相当の職員は3,500円、9級以上になると0円となります。

共働き家庭の育休中の扶養手当

共働きで働く夫婦に子どもが生まれて配偶者が育休を取得するとき、もう一方が公務員なら育休中の配偶者の年収次第で扶養手当を受け取れます。

育児休業手当金等を含む配偶者の年収が130万円未満なら扶養手当の対象、130万円以上なら扶養手当の対象外です。見込み額を計算し年収130万円未満になるなら手続きをするとよいでしょう。

扶養手当の手続きや届け出方法

扶養手当を受け取るには届出が必要です。結婚・出産・親との同居などにより扶養親族ができた場合には、速やかに届け出ましょう。

実際に扶養手当の支給が始まるのは、毎月1日に届出が受理されればその月から、それ以外の日に受理されれば翌月からです。

一般職の職員の給与に関する法律で以下のように記載されていることから、届出を忘れているとさかのぼって支給を受けられません。支給条件を満たしたときには、できるだけ早いタイミングで手続きを行いましょう。

事実の生じた日から15日を経過した後にされたときは、その届け出を受理した日の属する月の翌月(その日が月の初日であるときは、その日の属する月)から行うものとする。
出典:e-Gov 法令検索|一般職の職員の給与に関する法律

逆に支給条件を満たさなくなった場合にも届け出が必要です。例えば子どもが就職したときや、配偶者の年収が130万円を超えたときなどがあげられます。届け出を忘れて手当を受給し続けると不正受給になりますので注意しましょう。

公務員の扶養手当が見直しされる?

公務員の扶養手当はこれまでも段階的に見直されてきています。今後も方針としては、配偶者の扶養手当を廃止する方向で検討していることが分かっています。

共働き世帯の増加を受けて、配偶者の扶養手当を大幅に見直すことは、配偶者の働き方にも影響を与えるでしょう。

また廃止により生まれる財源は、子どもの扶養手当の増額に充てる計画だそうです。少子高齢化への対応として、子ども向けの手当をより充実させる方針を打ち出したと考えられます。

今後も社会情勢や民間企業とのバランスを考慮しつつ、適切な手当を支給できるよう見直しが行われていくでしょう。

公務員にも扶養手当はある

公務員の扶養手当は「一般職の職員の給与に関する法律」で定められています。一般企業の扶養手当との違いは、法律に基づいて支給される点です。

また扶養手当を受け取るには届出をしなければいけません。結婚・出産・親との同居などで扶養親族ができたときには、ただちに届け出ます。

届出は扶養手当の支給条件を満たさなくなったときにも必要です。不正受給とならないよう速やかに手続きを実施します。

扶養手当は福利厚生の一種です。一般企業であれば公務員の制度を参考にしながら自社の制度を作ることで、従業員の働きやすい環境整備につながります。併せて従業員の健康につながる食の福利厚生である「チケットレストラン」の導入を検討してもよいでしょう。

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