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【社労士監修】福利厚生費と給与の違いは?課税・非課税になる要件も

2021.07.24

給与と福利厚生費は、どちらも従業員に企業が支出するものとして共通していますが、福利厚生費は要件を満たすことで所得税が非課税になるメリットがあります。

そこで今回は、給与と福利厚生費の違いと課税・非課税になる要件を解説します。


監修者:久米和子(Reiwa社会保険労務士事務所)

給与と福利厚生費の違いは?

日本経済団体連合会(※1)によると、企業が福利厚生費にかける割合は、給与総額に対して平均19.8%と公表されており、およそ2割を占めています。

では給与と福利厚生費の違いは何かというと、給与所得として「課税」となるか「非課税」となるかの違いです。とはいえ、福利厚生費として支給する項目でも条件によっては給与として課税になる場合があります。

その例をいくつか紹介しますので、給与明細書などを見ながら確認してみてください。

福利厚生費 課税

通勤手当

通勤手当は、一定額までは非課税となり福利厚生費として計上が認められています。

非課税の限度額は国税庁が定めており(※2)、電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合は1ヵ月15万円が「非課税限度額」です。また、自動車で通勤する場合は、距離に応じて「非課税限度額」が異なっています。

この「非課税限度額」を超えてしまうと給与として課税対象になります。

社宅や寮の家賃負担

社宅や寮に入っている従業員から給与天引きで家賃を控除している場合は、企業が負担している分を福利厚生費として計上できます。

ただし、福利厚生費として計上できる条件は従業員が家賃の50%以上を負担していることです。

例えば、従業員が家賃10万円の社宅に住んでいて、給与からは4万円、企業負担が6万円だとしたら従業員が50%以上負担していないので給与として課税対象になります。

食事補助

食事補助は次の2つの条件を満たすと福利厚生費して扱われます。

  1. 食事代の50%以上を従業員が負担している
  2. 企業が負担していた食事代が月額3,500円以下(税抜き)

条件を満たさなければ、企業負担分が給与として課税になります。

福利厚生費となるための要件は?

福利厚生費となるためには、要件を満たさなければなりません。

要件は次の通りです。

  1. 福利厚生の目的に沿っていること
  2. 社内規程や法律の基準に沿っていること
  3. 全員を対象としていること
  4. 妥当な範囲の金額であること

詳しく解説していきます。

福利厚生の目的に沿っていること

そもそも福利厚生費として認められるには「給与以外の報酬やサービス」である必要があります。

その目的に沿っていないものは福利厚生費として認められません。

社内規程や法律の基準に沿っていること

社内規定や法律を逸脱したものは、いくら従業員の報酬やサービス目的であっても福利厚生費として認められません。

福利厚生は社内規定や法律の基準内で設定する必要があります。

全員を対象としていること

福利厚生は従業員全員を対象としたものでなければなりません。

「男性だけ対象」「管理職だけ対象」など、全員を対象としていないものは福利厚生費とならないので注意しましょう。

妥当な範囲の金額であること

妥当な範囲とは「常識的な金額」ということです。

例えば、社内のイベント代として1人5万円分を補助するなど、常識からかけ離れたものは認められません。

福利厚生費として認められる参考例として「意外と間違いやすい!福利厚生費として経費計上できる・できないの境界線」も合わせてご覧ください。

給与と福利厚生費を明確に区分する必要があるのはなぜ?

給与と福利厚生費を明確に区分する理由は主に3つあります。

  1. 消費税の取り扱いが異なる
  2. 所得税の取り扱いが異なる
  3. 損益計算書(PL)の表示が違う

消費税の取り扱いが異なる

消費税は給与がすべて「不課税」となり、福利厚生費は内容によって「課税」になります。

例えば、福利厚生でも「レクリエーション費用」は課税対象ですが、「祝い金」は不課税と決められています。該当の項目が課税か不課税かは国税庁のホームページで確認できます。

<参考>
No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例/国税庁

所得税の取り扱いが異なる

所得税では給与は「課税」、福利厚生費は基本的に「非課税」です。
ただし、一定額を超えた通勤手当や企業側が50%以上を負担する社宅や寮の家賃などは課税扱いになります。
その他にも課税されるケースがあります。詳しくはこちらの記事を参照ください。

[社労士監修] 福利厚生費とは?課税対象となる基準と勘定項目を簡単に説明

損益計算書(PL)の表示が違う

損益計算書(PL)とは企業の利益を知れる決算書です。

損益計算書では給与と福利厚生費は項目が分かれているため、決算書を作るうえで分ける必要があるのです。

福利厚生費ではなく給与となってしまうものは?

福利厚生費の要件を満たしていても、給与となってしまうものがあります。

その項目をいくつか紹介します。

給与・賞与

全員に支給されるものです。

現物支給

現物支給とは、現金ではなくモノで支給しているという意味です。

例えば「住宅の貸与」は条件を満たすと福利厚生費となりますが、個人単位で支給しているものは給与となります。

一時的な報奨金

報奨金は個人の労働の対価として支払われるものなので、給与に該当します。

商品券・クオカード

商品券やクオカードは現金に換金が可能なため、給与扱いになります。

カタログギフト

企業が提供するカタログギフトは、従業員が自由に商品を選べることから現金と同じ扱いになり、給与として課税対象となります。

カフェテリアプラン

カフェテリアプランとは、企業側があらかじめ用意した利用可能なサービスを設定し、従業員が付与されたポイントの範囲内で、好きなサービスを選択できる仕組みです。

福利厚生として導入されますが、サービスによっては給与として課税対象になるものがあります。例えば、ポイントを現金に換えられる場合はすべて課税対象です。

おわりに

給与と福利厚生費の違いは給与所得として「課税」となるか「非課税」となるかの違いです。

ただし、福利厚生費でも要件を満たさなければ給与として課税になる場合もあります。福利厚生費を新設するときは、あらかじめ要件を確認しておきましょう。

<参考資料>
※1:第64回福利厚生費調査結果報告/一般社団法人 日本経済団体連合会
※2:通勤手当の非課税限度額の引上げについて/国税庁