監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
従業員に様々な手当の支給を検討している企業の中には、社会保険料を徴収するべき手当なのか、理解が曖昧なために実行に移せないケースもあるのではないでしょうか。
社会保険料は、一時的な支給の場合や、労働の対償ではない場合、徴収する必要はありません。
本記事では社会保険料がかからない手当について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
そもそも手当とは
手当とは、企業が従業員に対して支給する基本給以外の賃金のことです。
手当には、労働基準法によって支給が定められているものと、企業の判断で支給されているものがあります。企業が従業員へ手当を支給するのは、通勤に必要な金額など、個人の環境によって避けられない出費を調整するためや、従業員のモチベーションをアップするためなどの理由が挙げられます。
適切な手当を支給することによって従業員の不満を解消し、働くモチベーションをアップさせることは、企業の成長に必要なことです。そのため、企業が手当を支給するのは重要な要素だといえるでしょう。
主な手当の一覧
企業が支給する手当には、労働基準法によって支給が義務付けられている手当と、企業が独自に定めている手当があります。
支給が義務付けられている手当は、時間外手当や休日手当などの基本的なものです。一方、企業独自の手当には、アニバーサリー手当やテレワーク手当など、企業によってユニークな手当が支給されるケースもあります。
ここでは、労働基準法によって支給が義務付けられている手当と、企業独自の手当について、代表的な例を紹介します。
労働基準法によって支給が義務付けられている手当
労働基準法によって支給が義務付けられている手当は、所定の労働時間を超えた場合の時間外手当や、休日に出勤した場合の休日手当が当てはまります。
支給が義務付けられている手当の例を紹介します。
手当の種類 |
内容 |
時間外手当 |
法定労働時間を超えて労働した従業員に支給する手当。労働時間が1日あたり8時間、1週間あたり40時間を超えた場合に支給が必要。通常の時間あたりの給与に対し25%の割り増し賃金を加算して支給する。 |
休日手当 |
労働基準法によって付与が義務付けられた休日である法定休日に従業員が出勤した場合支払う手当。時間給に対して35%以上の割増賃金を加算して支給する。 |
深夜手当 |
22時〜5時までの間に働いた場合に支払う手当。時間給に対して25%以上の割り増し賃金を支払う必要がある。時間外労働が深夜に及んだ場合は、時間外手当と両方を支払う必要がある。 |
休業手当 |
企業の都合で労働者を休業させた場合に支払われる手当。経営悪化による仕事量の減少や、設備や機械の不備による休業などがこれにあたる。 |
宿日直手当 |
宿直や日直を行った場合に支給する手当。宿直・日直とは、業務時間外に一定の場所に拘束され、電話や非常事態に備えて待機する業務のこと。夜間や宿泊が必要な場合は宿直、昼間の場合は日直と呼ばれる。 |
上記の手当を支給しない場合、労働基準法に違反することになります。
違反した場合、行政指導や刑事罰の対象になるため、必ず支給が必要です。従業員の勤務時間を記録し、漏れのないように支給する必要があります。
関連記事:手当にはどんな種類がある?会社が支給する手当を一覧でチェック
企業の判断に委ねられる手当
企業の制度によって独自に支給される手当の例には、以下が挙げられます。
手当の種類 |
内容 |
通勤手当 |
自宅から企業までの通勤に必要な費用を支給する手当。 |
住宅手当 |
住宅購入の際のローンや家賃の一部を支給する手当。 |
役職手当 |
従業員が役職や業務上の役割に応じて支給する手当。 |
資格手当 |
企業が定めた資格を取得した際や、資格を有している従業員に対して支給する手当。 |
食事手当 |
従業員の食事代の一部を支給する手当。 |
上記の手当は、企業によって支給金額や内容が異なります。手当の内容は通勤手当などの一般的なものから、バースデー手当など、企業によって支給内容に個性があります。企業が独自に設定する手当ではありますが、労働規約に明記している場合は従業員に対してきちんと支払う義務があります。
万が一企業の都合で支給しなかった場合、未払い賃金として従業員から請求される可能性があるため、漏れのないように支給することが大切です。
関連記事:【社労士監修】食事手当を現物支給するとどうなる?税金と社会保険の関係も解説
社会保険料とは
社会保険料とは、下記の5つの保険に対して支払う保険料のことです。
社会保険適用の企業に勤務する従業員で条件を満たす場合は、必ず社会保険料を支払う必要があります。5つの保険について、詳しく見ていきましょう。
種類 |
内容 |
健康保険 |
従業員とその扶養家族を対象とし、病気・ケガ・出産などで生じる医療費を補償する制度。高額な医療費を支払った場合や病気やケガで一定期間企業を休む際などにも金額が支給される。 |
厚生年金保険 |
厚生年金保険の適用を受ける事業所に勤務する70歳未満の従業員や公務員が加入する公的年金。厚生年金に加入すると、20歳以上60歳未満の全ての方が加入する国民保険に上乗せした金額が支払われる。 |
雇用保険 |
失業や教育訓練などに対して給付を支給する制度。定年退職や自己都合などで退職した場合や、離職後に再就職した場合などに給付金が支払われる。 |
介護保険 |
健康保険の被保険者が40歳になると加入が必要。一定の条件を満たして介護が必要と判断された場合に介護保険サービスが利用できる。 |
労災保険 |
業務中や通勤途中にケガ・病気・障害・死亡などが起きた場合に必要な保険給付が行われる制度。 |
社会保険料は、従業員の病気や失業、老後、労災などに備えるための社会保障制度の1つです。社会保険は、加入者が万が一の事態に陥ったときに金銭面などで支えてくれます。
制度を維持し、加入者を守るためには、全員が社会保険料を必ず納めることが必要です。月々の給与から差し引き、企業が納付する必要があります。
ただし、労災保険に関しては、企業が保険料を全額負担しなければいけません。労災保険は、企業が履行すべき労働基準法の「災害補償」を肩代わりしてもらうためにできた保険のため、労働者は保険料を納付する必要はないのです。
参考:厚生労働省|社会保険加入のメリット
参考:福井労働局|使用者の災害補償責任と労災保険給付の関係
社会保険料がかかる手当・かからない手当
企業から従業員に支払う給与や手当には、社会保険料がかかるものとかからないものがあります。かかるかどうかの基準は、支給金額が報酬または賞与に該当するかどうかによって決まります。
標準月額の概要や、社会保険料がかかる手当とかからない手当について見ていきましょう。
標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、従業員の月々の報酬を1〜50等級(厚生年金は1〜32等級)に分けて表すものです。社会保険料の金額を算出する際に利用します。
それぞれの等級ごとに標準報酬月額が割り振られており、保険料率を掛けた金額が月々の社会保険料です。
標準報酬月額の基準となる金額は、基本給だけではありません。労働の対価として支給されているものを含めて計算する必要があります。
ただし、恩恵的な手当や臨時に受け取ったものとされる手当は、報酬に含まれません。見舞金や大入り袋、慶弔費などがこれにあたります。労働の対価ではなく臨時の手当である場合、社会保険料の計算対象にはなりません。
社会保険料がかかる手当一覧
社会保険料がかかる手当には、以下の例が挙げられます。
- 残業手当
- 休日手当
- 深夜手当
- 通勤手当
- 住宅手当
- 家族手当
- 役職手当
- 資格手当
- 宿直手当など
上記の他にも、3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賞与は、報酬には該当しませんが、賞与として社会保険料の対象になります。年に4回以上賞与が支払われる企業については、報酬として計算します。
社会保険料がかからない手当一覧
社会保険料がかからない手当は、以下の例が挙げられます。
- 出張手当
- 退職金
- お祝い金
- お見舞金など
社会保険料がかからない手当は、労働の対価として支払われているものではないもの、臨時に支払われるもの、実費弁償的なものなどが挙げられます。
上記の他にも、大入り袋やクリスマス手当などが労働の対価ではなく臨時の手当である場合、社会保険料の対象にはなりません。
保険料がかかるかどうかは、賞与や報酬に当てはまらないか確認して判断しましょう。
福利厚生には社会保険料がかからない
食事手当を福利厚生として支給する場合、条件を満たせば社会保険料はかかりません。非課税で運用できる福利厚生サービスとして、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」がおすすめです。
「チケットレストラン」は従業員の食事代が実質半額になる食の福利厚生サービスです。全国25万店舗以上で利用でき、専用のカード1枚で支払いも簡単に行えます。「チケットレストラン」では、従業員の食事代の一部を企業が負担します。条件を満たした場合は福利厚生費として計上されるため、非課税で運用可能です。
また、企業側も福利厚生費として計上した費用を損金として扱えるため、法人税を減税することもできます。非課税で支給でき、他社の福利厚生サービスとの差別化にもなるでしょう。
社会保険料がかかる手当・かからない手当の定義を理解しよう
社会保険とは、従業員が病気やケガをしたり、介護が必要になったりした場合に給付等を受けられる制度のことです。社会保険適用の企業に勤務する従業員で条件を満たす場合は、必ず社会保険料を支払う必要があります。
企業は従業員に対し、基本給の他にも手当として残業手当や休日手当などの金額を支給します。この支給額に対し、社会保険料がかかる手当とかからない手当があるため、定義をよく確認し、漏れのないように支給することが必要です。
基本的には臨時的に支給する場合や、恩恵的、実費弁償的なものは保険料がかからないケースが大半です。誤って徴収・支給しないように事前によく検討しましょう。
従業員の満足度を上げるためには、非課税の手当や制度の導入も効果的です。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、食の福利厚生として従業員に支給できるため、一定の要件を満たせば非課税で運用できます。従業員が働きやすい環境を整えるためにも、導入を検討してみてみませんか。