中小企業の賞与は平均いくらなのでしょうか?従業員数別の平均額や、決算賞与の平均額をチェックし、比較してみましょう。賞与を支給すると、従業員のモチベーションアップにもつながり、モチベーションの高い従業員が増えれば、業績アップも期待できるでしょう。本記事では従業員にも企業にもプラスになる賞与について解説します。
賞与とは
賞与とは、毎月支給される定期給与とは別に支給される一時金のことです。ボーナス・特別手当などともよばれます。導入している企業では、1年に1~2回、夏と冬に支給されることが多いです。
しかし、賞与は企業が必ず支給しなければならないものではないため、導入していない企業もあります。なお導入している企業でも、支給額の計算方法はさまざまです。自社の業績や従業員の勤務状況などを踏まえて、賞与の導入を検討するとよいでしょう。
賞与の種類
賞与には基本給連動型賞与・業績連動型賞与・決算賞与の3種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
定期給与が基準「基本給連動型賞与」
基本給連動型賞与とは、毎月支給されている定期給与の金額で支給額が決まる賞与のことです。具体的には「基本給の3カ月分」というように提示されます。基本給の金額が増減すると、賞与の支給額も基本給の金額に影響を受けて変わります。
ここでは、毎月4月に1万円の定期昇給を行っている企業で、基本給3カ月分の賞与を支給するケースについて考えてみましょう。2024年度の基本給が20万円の場合の賞与の支給額は表の通りです。
夏の賞与支給額 |
冬の賞与支給額 |
|
2024年 |
60万円 |
60万円 |
2025年 |
63万円 |
63万円 |
2026年 |
66万円 |
66万円 |
もし、基本給を減額を検討したい場合、原則として労働者の同意がなければいけないため、基本給連動型賞与は支給額が安定しています。
企業は業績の良し悪しにかかわらず、同程度の金額の現金を用意しなければならないため、業績が悪化しているタイミングでは資金繰りが苦しくなるかもしれません。
基本給連動型賞与のメリットは、従業員にとっては支給額が安定しており、収入の見通しが立てやすいことが挙げられます。その一方、日々の頑張りが反映されにくいため、モチベーションの低下につながる可能性があります。
業績で支給額が変化「業績連動型賞与」
業績連動型賞与は、支給額が業績に応じて変動するのが特徴です。企業全体の業績に連動する場合もあれば、部門ごとの業績や、個人の評価に連動させることもありますし、複数の指標を組み合わせて支給額を決めることもあります。
業績が上向けば賞与の支給額も大きくなるため、従業員のモチベーションアップが期待できますし、企業の成長にもつながるでしょう。
一方で、業績が悪化すれば支給額は減額され、状況によってはほぼゼロというケースもあるでしょう。例えば、業界全体が縮小傾向で、従来のやり方のみでは業績アップが見込めない場合、賞与の支給額が極端に少なくなってしまうかもしれません。
従業員の頑張りのみでは業績の改善が難しい状況では、業績連動型賞与によるモチベーションアップを期待するのは難しいでしょう。
決算のあとの利益分配「決算賞与」
特別賞与や年度末手当などとも呼ばれる決算賞与は、決算の結果が良いときに、従業員へ利益を分配する目的で支給する賞与です。決算次第では支給されないこともあります。
支給のタイミングは夏や冬ではなく、決算が終わったあとです。例えば4月1日から新しい会計年度になる企業では、4月に支給することが多いでしょう。
日頃の頑張りが業績につながり支給される決算賞与は、従業員のモチベーションアップに役立ちます。
中小企業の賞与の平均額
中小企業の賞与の平均額はいくらなのでしょうか?中小企業の定義を明確にした上で、従業員数別に見ていきます。
中小企業の定義をチェック
「中小企業基本法」によると、中小企業は業種ごとに「資本金または出資の総額」もしくは「常時使用する従業員数」で決まっています。
業種 |
資本金または出資の総額 |
常時使用する従業員数 |
製造業その他 |
3億円以下 |
300人以下 |
卸売業 |
1億円以下 |
100人以下 |
小売業 |
5,000万円以下 |
50人以下 |
サービス業 |
5,000万円以下 |
100人以下 |
例えば製造業を営む企業であれば、資本金または出資の総額が3億円以下か、常時使用する従業員数が300人以下を「中小企業」と定義します。
中小企業の平均賞与
2022年の年末賞与の平均額を「毎月勤労統計調査」でチェックしましょう。従業員数ごとの平均賞与は以下の表の通りです。
従業員数 |
賞与の平均支給額 |
所定内給与に対する支給割合 |
5~29人 |
27万4,651円 |
1.07カ月分 |
30~99人 |
35万4,645円 |
1.23カ月分 |
100~499人 |
45万2,892円 |
1.36カ月分 |
500~999人 |
54万3,114円 |
1.57カ月分 |
1,000人以上 |
74万7,054円 |
1.92カ月分 |
従業員数で中小企業かどうかを判別する場合、製造業その他は300人以下、卸売業・サービス業は100人以下、小売業は50人以下という数字がポイントになります。また、100~499人以下までの賞与の平均支給額を見ると、中小企業の賞与の平均額を知るときの目安になりますので、参考にしてください。
賞与の平均額は、従業員数が多いほど賞与支給額も多くなっていく傾向が読み取れます。具体的に見てみると、従業員数が5~29人の企業では所定内給与のほぼ1カ月分の支給額なのに対し、規模の大きな1,000人以上の企業では所定内給与の約2カ月分を支給されています。
参考:e-Stat政府統計の総合窓口|毎月勤労統計調査 全国調査 年末賞与 2022年
賞与を支給している事業所の割合
「毎月勤労統計調査」によると、賞与を支給している事業所の割合も、中小企業と大企業では差があります。
従業員数 |
支給事業所数割合 |
5~29人 |
67.3% |
30~99人 |
90.1% |
100~499人 |
93.6% |
500~999人 |
97.3% |
1,000人以上 |
97.6% |
特に大きな差があるのは、中小企業の中でも規模が小さな5~29人の企業です。30人以上従業員を雇用している企業は、90%以上の事業所が賞与を支給していますが、従業員数5~29人の企業では、賞与を支給している事業所の割合は67.3%にとどまっています。
決算賞与の平均額
社会人1万5,000人を対象に2021年9月~2022年8月の賞与について調査した、dodaの「ボーナス平均支給額の実態調査【最新版】(冬・夏、年代別、職種別の賞与)」によると、決算賞与などのその他のボーナスの平均額は5万4,000円です。
年代別の平均額も見てみましょう。50代のみ5万円を下回っていますが、どの年代も5万円前後で年代による支給額の差は小さいようです。
年代 |
その他のボーナスの平均支給額 |
20代 |
5万1,000円 |
30代 |
5万9,000円 |
40代 |
5万6,000円 |
50代 |
4万7,000円 |
参考:doda|ボーナス平均支給額の実態調査【最新版】(冬・夏、年代別、職種別の賞与)
賞与を支給するメリット
賞与は必ず支給しなければいけないものではありませんが、支給することには一定のメリットがあります。代表的なメリットを見ていきましょう。
人件費をコントロールしやすい
業績連動型賞与を導入した場合、人件費をコントロールしやすくなります。業績が下がっているときには賞与の支給額を下げて人件費を調整することが可能です。
同じ賞与でも、基本給連動型賞与だと賞与の支給額が毎回ほぼ一定のため、人件費のコントロールには向いていません。
利益を従業員に還元できる
業績が好調で利益が出たとき、従業員へ還元しようと考えていても、ルールがない中で検討していると、還元の方法で迷うこともあるでしょう。
業績連動型賞与や決算賞与として利益還元を仕組み化しておけば、利益が出たときに迷うことなく従業員へ還元できます。
従業員のモチベーションアップにつながる
賞与による収入アップは従業員のモチベーションアップにつながります。おそらく「もうすぐボーナスの時期だから」と頑張れる従業員もいるはずです。
特に、自分の努力が業績につながれば、その分賞与の支給額が増える業績連動型賞与だと、仕事に積極的に取り組む従業員の増加が期待できます。
日々の仕事ぶりが賞与に反映されるため、業績アップを目指して自ら試行錯誤をし、新しい提案をする従業員も出てくるでしょう。
従業員エンゲージメントの向上
従業員が会社の理念やビジョンに共感し、業績向上に向けて自発的に「貢献したい」と思う意欲を従業員エンゲージメントといいます。従業員エンゲージメントの向上は、離職率の低下や業績アップにもつながる要素です。
まずは理念やビジョンの従業員への浸透が欠かせません。その上で従業員の働きやすい環境を整えます。
賞与の導入や制度の見直しは、働きやすい環境作りの一環としても活用可能です。公正公平な評価制度を整え、評価に基づいた賞与が支給される仕組みがあれば、従業員エンゲージメントを高められるでしょう。
賞与は制度設計が重要
賞与を導入したり、制度を見直しをするときには、目的に合わせた制度設計が欠かせません。
例えば、利益を適切に従業員へ分配したいと考え、決算賞与を導入する場合、どのくらい利益が出たら分配するのか、どのような割合で分配するのかを決める必要があります。
過去の経営状況を振り返りつつ、頑張ればクリアできそうな金額で決算賞与を出す基準を決めれば、従業員のモチベーションを高めやすくなるでしょう。
、個人の業績を加味して分配する割合を決定すれば、従業員同士が切磋琢磨することも促せます。あわえて、会社の経営状況が分かる資料の開示も必要です。財務諸表といった資料を公表することで、制度が公平であることや、決算賞与の分配に根拠があることを、従業員に伝えられます。
賞与の損金算入について
法人税の税額は課税所得に税率をかけて算出します。このとき課税所得を計算するために用いるのは「益金-損金」という計算式です。益金の金額が同じであれば、損金が多いほど課税所得額は下がり、法人税額が少なくなります。
賞与にかかる費用は、従業員へ支給するものや、要件を満たしているものであれば、損金として計上可能です。賞与を損金として扱うときのルールについて解説します。
従業員の賞与は損金算入できる
従業員へ支給した賞与は損金として扱えます。法人税の税額を計算するときに、益金から差し引ける金額です。
損金算入の時期は原則として支給した日の属する事業年度
従業員へ支給した賞与にかかった費用を損金へ算入するのは、賞与を支給した日の属する事業年度です。
例えば3月31日が決算日の企業で2023年7月と12月に賞与を支給した場合、その費用を損金算入するのは、2023年4月1日~2024年3月31日までの法人税を計算するタイミングです。
決算賞与を損金算入するための要件
決算賞与は決算のあとに業績に応じて支給の有無や支給額が決まります。この場合も損金算入のタイミングは原則として、従業員へ賞与を支給した日の属する事業年度です。
例えば、3月31日が決算日の企業で、2023年度の利益が十分出たため、2024年4月に決算賞与を支給したとします。この決算賞与にかかった費用は、2024年度に損金算入するのが原則です。
ただし以下の要件を満たしていると、まだ支給していない決算賞与の費用を2023年度に損金算入できます。
- 支給額を個別に全ての従業員へ通知している
- 通知した金額を全ての従業員へ、通知した日の属する事業年度が終了した日の翌日から1カ月以内に支払っている
- 支給額を通知した日の属する事業年度で損金として経理処理している
役員賞与は原則として損金不算入
取締役・執行役・会計参与・監査役・理事などの役員への賞与は、原則として損金にできません。損金として扱えるようにするには、株主総会の決議をへている必要があります。
加えて役員賞与は、以下のいずれかでなければいけません。
- 社内で支給額を決定した定期同額給与
- 税務署へ事前に届け出ている事前確定届出給与
- 有価証券報告書を提出している企業が利用できる利益連動給与
他に、役員が従業員としての働きも担っているなら、使用人兼務役員とする方法もあります。賞与を役員部分と従業員部分に分けられるため、従業員部分はそのまま損金算入可能です。
モチベーションアップには福利厚生も役立つ
従業員のモチベーションアップを目的に賞与を用いる場合、同時に福利厚生の充実度アップも検討してみてはいかがでしょうか。従業員の働く環境をより良いものに整えることで、モチベーションアップが期待できる取り組みです。
人気の福利厚生は?
働く人501人を対象に行ったアンケートをもとに作成した、人気の福利厚生ランキングを紹介します。
ランキング |
人気の福利厚生 |
1位 |
家賃補助・住宅手当 |
2位 |
特別休暇 |
3位 |
旅行・レジャーの優待 |
4位 |
社員食堂・食事補助 |
5位 |
スポーツクラブの利用補助 |
6位 |
資格取得・教育支援 |
7位 |
保養所 |
8位 |
生理休暇 |
9位 |
慶弔金の支給 |
10位 |
通勤手当 |
生活に必要な費用をサポートする家賃補助や食事補助の他、特別休暇や休暇を充実させるためのレジャーに関する福利厚生が上位にランクインしています。
参考:ビズヒッツ|あったら嬉しい人気の福利厚生ランキング【働く男女501人アンケート調査】
食事補助はインフレ手当にもなる
物価高が続く中、これまでと同じ生活を維持するためには、これまで以上の費用がかかるようになりました。企業の中には従業員の生活をサポートする目的で、インフレ手当を支給しているところもあります。
ただし現金でインフレ手当を支給すると、給与として扱われるため、従業員の所得税額が増えることもあります。そこで有効なのが食事補助サービスを利用した食事補助の提供です。
例えば、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、食事に利用できる金額をチャージしたICカードを従業員へ配布する仕組みで、提供した補助に所得税はかかりません。
「チケットレストラン」は公平に提供できる
全従業員に公平に提供できるのも「チケットレストラン」のメリットです。
全国にある25万店舗以上の加盟店での食事に利用できるため、オフィスに出社している従業員はもちろん、リモートワークの従業員や、地方の支社で働く従業員、客先常駐の従業員なども利用しやすくなっています。
勤務形態にかかわらず従業員が利用できるため、導入した企業での利用率は99%以上です。
賞与や福利厚生をモチベーションアップへ役立てよう
中小企業の賞与の平均額は、従業員数によって異なり、従業員数が多いほど平均額も、賞与を導入している企業の割合も高い傾向にあります。
従業員のモチベーションアップに賞与を活用しようと考えているなら、目的に合わせた制度設計がポイントになります。従業員が自発的に「頑張ろう」と思えるような目標の設定が効果的でしょう。
あわせて福利厚生を活用して、勤務環境を整えるとよいでしょう。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」なら、インフレ手当としても利用できる食事補助を提供できます。
事務負担の少ない方法で導入できる「チケットレストラン」を検討してみませんか。