仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組む企業が増えています。なかでも、注目を集めているのが「くるみん認定」制度です。この記事では、くるみん認定の概要や取得のメリット、申請方法などを詳しく解説します。
くるみん認定とは?
くるみん認定は、厚生労働省が「子育てサポート企業」と認めた証です。次世代育成支援対策推進法に基づいて設けられた制度で、従業員の仕事と子育ての両立を支援する取り組みを行っている企業に与えられます。認定を受けた企業は「くるみんマーク」を使用でき、社会的な評価を得やすくなるのがメリットです。
なお、「くるみん」という名称には、赤ちゃんが大事に包まれる「おくるみ」と、「組織ぐるみ・企業ぐるみ」で子育てに取り組むという意味と、子どもが優しくくるまれているというあたたかなイメージが込められています。
出典:厚生労働省|くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて
出典:厚生労働省|愛称「くるみん」に決定!!
くるみん認定制度の背景
少子化の進行や共働き家庭の増加など、子育てを取り巻く環境が大きく変化するなか、2005年に次世代育成支援対策推進法が施行されました。この法律は、子育て支援において企業の果たす役割の重要性を明確にし、積極的な取り組みを促すものです。
くるみん認定は次世代育成支援対策推進法に基づいて設けられた制度で、企業に子育て支援の取り組みを促すためのインセンティブとして機能しています。
出典:こども家庭庁|次世代育成支援対策
くるみん認定企業数は年間200社ペースで増加中
くるみん認定制度が始まって以来、認定を受ける企業は着実に増加しています。厚生労働省より国の認定マークについて委託を受けた事業者、安全衛生優良企業マーク推進機構によると、2007年度に428社だったくるみん認定企業数は、2021年3月の時点で3,500社を超えました。こうした数字からも、多くの企業が従業員の仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組んでいることがうかがえます。
出典:非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構|「くるみんマーク認定」 ~子育てサポート企業の証~
くるみん認定マークの種類と認定基準
くるみん認定には主に3種類のマークがあり、それぞれ異なる基準を満たす必要があります。各認定の特徴と主な基準は以下の通りです。
くるみん
出典:厚生労働省|くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて
「くるみん」は基本的な認定であり、10項目の認定基準をすべて満たす必要があります。主な基準として、数値での確実な達成が必要な項目を紹介します。
- 男性従業員の育児休業等取得率が10%以上、または育児休業等と企業独自の育児目的休暇の利用率合計が20%以上(かつ、育児休業等取得者が1人以上)
- 女性従業員の育児休業等取得率が75%以上
- フルタイム従業員の法定時間外・法定休日労働時間の平均が月45時間未満
- 月平均の法定時間外労働60時間以上の従業員がいないこと
出典:厚生労働省|くるみん認定とは
プラチナくるみん
出典:厚生労働省|くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて
「プラチナくるみん」は、くるみん認定をすでに受けている企業のうち、より高い水準の取り組みを行っている企業に与えられます。くるみんの基準を強化した12項目の基準を満たす必要があります。3つの強化された基準を見てみましょう。
- 男性従業員の育児休業等取得率が30%以上、または育児休業等と企業独自の育児目的休暇の利用率合計が50%以上(かつ、育児休業等取得者が1人以上)
- 働き方の見直しに関する3つの措置(※)すべてを実施し、うち少なくとも1つは定量的な目標を達成していること
- 女性の就業継続に関する基準の追加(出産後1年の継続就業率など)
(※)働き方の見直しに関する3つの措置とは、以下の3つです。
・所定外労働の削減のための措置
・年次有給休暇の取得の促進のための措置
・短時間正規従業員制度、在宅勤務、テレワークその他働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置
出典:厚生労働省|プラチナくるみん認定とは
トライくるみん
出典:厚生労働省|くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて
「トライくるみん」は、2022年に新設された認定で、くるみん認定よりも基準がやや緩和されています。10項目の認定基準を満たす必要がありますが、くるみんと比較した場合、以下の項目が緩和されています。
- 男性従業員の育児休業等取得率が7%以上、または育児休業等と企業独自の育児目的休暇の利用率合計が15%以上(かつ、育児休業等取得者が1人以上)
出典:厚生労働省|トライくるみん認定とは
追加基準で「プラス認定」を受けると「プラスマーク」がつく
3つの認定に加え、不妊治療と仕事の両立支援に取り組む企業には「プラス認定」が付与されます。不妊治療は、通院回数が多く、体調面でも配慮が欠かせないことから、仕事との両立においてさらなる支援が求められます。プラス認定の付与では、不妊治療のための休暇制度の設置や相談担当者の選任など、4項目の追加基準を満たさなければなりません。
- 不妊治療のための休暇制度と、不妊治療のために利用できる半日単位・時間単位の年次有給休暇などの制度を設けている
- 不妊治療と仕事との両立に関する方針を示し、講じている措置の内容とともに社内に周知している
- 不妊治療と仕事との両立に関する研修その他の不妊治療と仕事との両立に関する労働者の理解を促進するための取組を実施している
- 不妊治療を受ける労働者からの不妊治療と仕事との両立に関する相談に応じる担当者(両立支援担当者)を選任し、社内に周知している
なお、くるみん認定の各マークには認定年と認定回数を示す星の数が記載されており、企業の継続的な取り組みを示せます。
出典:出典:厚生労働省|プラス認定とは
くるみん認定の申請方法
くるみん認定を取得するには、以下の手順を踏みます。
- 一般事業主行動計画の策定(2年以上5年以下の計画期間)
- 行動計画の公表と従業員への周知
- 行動計画策定の都道府県労働局への届出
- 行動計画の実施と目標達成
- 認定基準を満たした後、認定申請
申請先は各都道府県の労働局で、書類審査期間は1か月程度です。認定されると、認定決定通知書とくるみんマークのデータが送られてきます。
なお、プラチナくるみん認定を受けるには、事前にくるみん認定またはトライくるみん認定を受けている必要があります。また、プラチナくるみん認定後は、毎年1回以上、厚生労働省の特設サイト「両立支援のひろば」に「一般事業主行動計画」の公表が必要です。
くるみん認定を取得するメリット
くるみん認定を取得することで、企業は以下のメリットが得られます。
1.くるみんマークの活用による人材確保
くるみんマークを求人票や企業のホームページに掲載することで、子育て支援に積極的な企業であることを視覚的にアピールできます。女性求職者の応募にも繋げやすいでしょう。
2.子育てサポート企業を社内外にPRでき定着率向上
くるみん認定を取得することで、従業員の制度認知度が向上し、実際に制度を利用する従業員の増加が期待できます。出産・育児を理由とした退職者が減少すれば、人材の定着率向上につながります。
3.公共調達で加点評価となり有利
国や自治体の公共調達において、くるみん認定企業は加点評価の対象です。公共調達でアドバンテージを得られるため、ビジネスチャンスが広がる可能性があります。
4.残業時間削減で業務効率化を推進
労働時間の削減は、くるみん認定の基準の一つです。短い時間で成果を出すことが求められ、結果として業務の効率化が進むケースがあります。
くるみん認定を取得するデメリット・注意点
一方で、くるみん認定取得にあたっては以下のような点に注意が必要です。
1.一部の従業員には負担が増える可能性がある
育児休業取得者が増えることで、ほかの従業員の業務負担が一時的に増加する可能性があります。
2.プラチナくるみん取得までに時間を要する
プラチナくるみん認定を目指す場合、まずくるみん認定を取得し、次の行動計画期間でより高い基準を満たす必要があります。すぐにプラチナくるみんを取得することはできません。
3.複数の要件を満たすには環境整備が必要
認定基準を満たすために、企業内制度の整備や従業員の意識改革など、企業全体での取り組みが求められます。働きやすい環境の整備に、継続的に取り組む必要があります。
くるみん認定取得後の有効期間と更新の有無
くるみん認定には有効期間はありません。ただし、行動計画を策定・実施するたびに新たに認定を申請でき、認定回数に応じてマークの星の数が増えていきます。
一方、プラチナくるみん認定を受けられるのは1回のみです。前述したように、認定後は毎年1回以上、次世代育成支援対策の実施状況を公表する必要があります。
「くるみん認定」に関連する制度を紹介
くるみん認定は子育て支援に焦点を当てた制度ですが、働き方改革や女性活躍推進に関連する認定制度はほかにも存在します。ここでは、ほかの制度と比較し、くるみん認定の特徴や制度における位置づけの理解を深めていきましょう。
えるぼし認定
女性活躍推進法に基づく認定制度が「えるぼし認定」です。採用、継続就業、労働時間等の働き方、管理職比率、多様なキャリアコースの5つの項目で評価を行い、女性の活躍推進に取り組む企業を3段階で認定します。くるみん認定が子育て支援に特化しているのに対し、えるぼし認定はより広く女性の活躍全般を評価の対象としている点が特徴です。
出典:厚生労働省|女性活躍推進法認定マークの愛称を決定しました
出典:厚生労働省|えるぼし認定、プラチナえるぼし認定
関連記事:えるぼし認定とは?認定企業となるメリットや申請手順を確認
ユースエール認定
若者の採用・育成に焦点を当てた制度としては、若者雇用促進法に基づく「ユースエール認定」があります。これは、若者の採用や人材育成に積極的な中小企業を支援するための制度です。くるみん認定と比較し、企業の人材確保や定着に役立つ点は共通しますが、対象とする年齢層や企業規模は異なります。
出典:厚生労働省|ユースエール認定制度
健康経営優良法人認定
従業員の健康管理を経営的な視点で捉える「健康経営優良法人認定」は、経済産業省が運営する制度です。大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれており、従業員の健康増進に取り組む企業を評価します。くるみん認定とは異なり、とくに健康面に焦点を当てている点が特徴的です。
出典:経済産業省|健康経営優良法人認定制度
その他
「ブラックではない」、すなわち働きやすい職場環境を総合的に評価する「ホワイト企業認定」や、テレワークの導入・活用を進めている企業・団体を表彰する総務省の「テレワーク先駆者百選」なども存在します。どちらの制度も、労働環境や働き方の柔軟性など、より広い観点から企業を評価しています。
出典:ホワイト財団|ホワイト認定企業について
出典:テレワーク月間|テレワーク先駆者百選
さまざまな勤務体系の従業員が使える福利厚生で働きやすさを向上
くるみん認定を目指す企業は、従業員全体の働きやすさ向上に注力しています。支給対象の従業員が公平に利用できる充実した福利厚生制度の導入は、業務へのモチベーションとエンゲージメントを高める効果的な施策となりえます。
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、場所や時間を問わず利用できる食事補助の福利厚生サービスです。「チケットレストラン」を通じて企業負担による食事代の半額補助は、従業員に大きな経済的メリットをもたらします。
全国25万以上の加盟店での利用や、Uber Eatsでの宅配にも対応しているため、内勤、外勤、リモートワークなど、勤務環境に関わらず支給対象の従業員が公平に利用できます。コンビニ・カフェ・ファミレスなどで、支払いの際に専用のICカードをかざすだけでよい手軽さも、人気の理由です。
「チケットレストラン」のような食の福利厚生サービスを導入することで、従業員の健康管理や経済的サポートにもつながり、働きやすい職場環境の整備に役立ちます。
子育てと両立しやすい環境の整備に「くるみん認定」取得を活用
くるみん認定の取得は、単なる認定マークの獲得以上の意味があります。認定取得を目指す過程で、企業は自社の課題や現状と向き合い、改善に向けて取り組むことになるからです。
くるみん認定制度を活用し、継続的に職場環境の改善に取り組むことで、従業員の満足度向上や優秀な人材の確保・定着につながります。「チケットレストラン」のような勤務環境を問わず公平に利用できる食事補助の福利厚生サービスは、子育てしやすい職場環境の整備に貢献するでしょう。くるみん認定への取り組みの一つとして「チケットレストラン」の導入を検討してみませんか。