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中小企業の女性活躍推進は進んでいる?データ分析と解決策

中小企業の女性活躍推進は進んでいる?データ分析と解決策

2024.10.17

本社会における女性の活躍推進は、労働力不足に加え、2022年4月の法改正による女性活躍推進の促進により、その重要性が増しています。とくに、法改正への対応を義務付けられた従業員101名以上300名以下の中小企業にとっての影響は大きいです。
一方、女性を含めて従業員を最大限に活用することは、企業の存続と発展のために欠かせません。本記事では、中小企業が直面する女性活躍推進の課題をデータで確認し、実践的な解決策を紹介します。

女性活躍とは?女性活躍の現状と重要性

女性活躍とは、女性の持つ能力や特性を積極的に活かし、企業や社会の中で女性が活躍できる機会を創出し、その力を最大限に引き出すことです。

総務省統計局「労働力調査(基本集計)」によると、2023年の女性の労働者は3,051万人(前年比27万人増)で、女性の労働力人口比率は53.6%(前年比0.6ポイント上昇)となっています。

また、生産年齢人口(15〜64歳)における女性労働者の人口比率は、73.3%(前年比0.9ポイント上昇)に達しました。

数値でも女性労働者の数や割合が増えており、日本社会における女性の労働参加が着実に進んでいることがわかります。

出典:総務省統計局|労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)平均結果の要約

女性活躍推進法改正と中小企業への影響

働く女性が自身の能力を十分に発揮することを目指し、制定されたのが女性活躍推進法です。正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」と言います。ここでは、女性活躍推進法の対象が中小企業へと拡大された2022年法改正と中小企業への影響を確認します。

2022年女性活躍推進法改正の概要

2022年4月から、従業員101名以上300名以下の中小企業に「女性活躍を推進するための行動計画策定及び情報公表」が義務化されました。中小企業における女性活躍推進が義務付けられました。具体的には、以下の4つのステップを踏み一般事業主行動計画の策定・届出を進める必要が生じます。

  • ステップ1:自社の女性の活躍状況を、基礎項目に基づいて把握し、課題を分析する
  • ステップ2:一般事業主行動計画を策定し、企業内周知と外部公表を行う
  • ステップ3:一般事業主行動計画を策定したことを都道府県労働局に届け出る
  • ステップ4:取組を実施し、効果を測定する

出典:厚生労働省|令和4年4月1日から女性活躍推進法に基づく行動計画の策定・届出、情報公表が101人以上300人以下の中小企業にも義務化されます

中小企業における女性活躍推進法改正への対応状況

法改正に対して、中小企業ではどのような対応を実施しているのでしょうか。エン・ジャパン株式会社が実施した従業員数300人以下の中小企業350社に聞いた「企業の女性活躍推進」実態調査 2023(2023年2月15日〜3月14日インターネットで実施)を見ると、2023年3月、法改正から約1年が経過した地点で、すでに必要な対応が完了した企業は8%と非常に少ないことがわかります。

中小企業 女性 女性活躍 中小企業 01

出典:エン・ジャパン|中小企業350社に聞いた「企業の女性活躍推進」実態調査 2023―人事向け情報サイト『人事のミカタ』アンケート―

法改正対応で得られたメリット

エン・ジャパンの同調査では、女性活躍推進法改正への対応を完了した企業からは、以下のようなポジティブな効果が報告されています。

  • 企業のイメージアップにつながった(28%)
  • 産休・育休取得者の増えた(24%)
  • 職場風土の改善につながった(24%)
  • フレックスやテレワークなど働き方の選択肢が増えた(21%)

ポジティブな結果が示すのは、法改正への適切な対応が、企業の成長と従業員の満足度向上の双方に寄与することです。女性活躍推進への取り組みは企業にとって重要な経営戦略となります。

出典:エン・ジャパン|中小企業350社に聞いた「企業の女性活躍推進」実態調査 2023―人事向け情報サイト『人事のミカタ』アンケート―

データで見る中小企業における女性活躍の現状

女性活躍推進法での情報好評項目の一つに「管理職に占める女性労働者の割合」があります。女性管理職の存在は、適切な女性活躍がなされているかを判断する指標です。ここからは、中小企業における女性管理職に関する調査結果を元に、女性活躍の現状を探ります。

中小企業における女性管理職比率

日本企業における女性管理職比率は、企業規模によって大きく異なります。帝国データバンクの「女性登用に対する企業の意識調査(2023年)」では、小規模企業ほど女性管理職の割合が高い傾向が示されています。小規模企業では平均12.6%(前年比0.1ポイント増)、中小企業で10.2%(前年比0.3ポイント増)、大企業では7.5%(前年比0.7ポイント増)です。さらに、従業員数5人以下の企業では、女性管理職比率が15.7%と最も高くなっています。

注目したいのは、2022年4月から「女性活躍に関する情報」公表の新たな対象となった従業員数101〜300人の企業です。中小企業における女性管理職割合は前年比0.5ポイント増の6.5%となり、全区分の中で最大の増加幅を示しました。小規模企業が女性の管理職登用において先行している一方で、中規模企業でも女性活躍推進の取り組みが進展していると考えられます。

中小企業 女性 女性活躍

出典:帝国データバンク|女性登用に対する企業の意識調査(2023年)

企業規模100人以上における女性管理職割合の推移

厚生労働省の「雇用の分野における女性活躍推進等に関する参考資料」(令和6年6月11日)では、2022年頃より管理職等に占める女性の割合が上昇傾向であることが示されています。

中小企業 女性 女性活躍 中小企業 02出典:厚生労働省|雇用の分野における女性活躍推進等に関する参考資料(令和6年6月11日)

関連記事:【社労士監修】女性管理職を増やす取り組みとは?効果的な施策と成功事例

女性活躍を推進する中小企業の5つの課題と解決策

女性活躍推進に取り組む場合、女性従業員の割合を増やし、かつ女性管理職の数も増やすことが肝心です。ここでは、女性活躍推進に取り組むうえでの課題を、5つの項目に分けてまとめて解説します。

「採用」の課題

採用では、人材獲得が困難という点が課題です。少子高齢化により労働人口が減少し、人材確保が困難になっています。また、知名度や待遇面で有利な大企業との人材獲得競争が激化しており、中小企業は不利な立場に置かれがちです。さらに、女性求職者に対する魅力的な職場環境やキャリアパスの提示が不十分で、優秀な女性人材の確保に苦戦しているのが現状です。

「採用」課題の解決策

女性活躍推進法の趣旨に沿って、自社の女性活躍の取り組みを積極的に情報公開し、女性求職者への魅力を高めます。育児等でキャリアを中断した女性向けの再教育・復帰支援制度を充実させ、様々なライフステージにある女性人材の獲得を目指す方法もあるでしょう。法令に対応しつつ、優秀な女性人材の確保を実現します。

「配置」の課題

女性活躍推進における「配置」の課題として、無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)などによる女性の能力の過小評価が挙げられます。特定の部署や職種に女性従業員が偏って配置されるような状況の原因にもなるでしょう。令和6年版男女共同参画でも、男女の賃金格差が依存として残る理由としてアンコンシャスバイアスが指摘されています。

キャリアパスが不透明である傾向も課題です。女性従業員の長期的な成長や昇進の機会が限られてしまい、女性の潜在能力を十分に活かせない状況を生み出しています。

出典:内閣府|令和6年版男女共同参画(第1分野 政策・方針決定過程への女性の参画拡大)

「配置」の課題の解決策

定期的な部署異動を制度化し、女性従業員の希望を考慮したキャリアパスを設計するジョブローテーションの実施が効果的です。各従業員のスキルと経験を可視化するスキルマップを作成し、客観的な基準に基づく適材適所の人員配置も取り入れます。

なお、アンコンシャスバイアスの解消の取り組みとして、令和6年版厚生労働白書では、厚労省作成のセミナー動画による促進が示されました。

出典:厚生労働省|令和6年版厚生労働白書

「育成」の課題

女性活躍推進における「育成」の課題は、女性向けキャリア開発プログラムの不足にあります。管理職を目指す女性の育成が十分でなく、キャリアアップを支援する体制が整っていません。また、目標とすべき女性管理職などのロールモデルがいないことも課題であり、女性従業員が自身のキャリアを長期的に描きにくい状況があります。

「育成」の課題の解決策

管理職を目指す女性向けの集中研修や外部講師によるリーダーシップセミナーを定期的に開催し、女性リーダー育成プログラムを充実させます。個別のキャリアカウンセリングの提供も効果的です。女性活躍推進団体への参加、異業種交流会への参加を促進し、社外ネットワーキングの機会を増やします。

まだ女性管理職のロールモデルが育成されていない企業の場合、男性労働者と同様に女性労働者を育成し、管理職へ登用することに取り組み、将来の女性リーダーの育成を強化することが重要です。

出典:厚生労働省|雇用の分野における女性活躍推進等に関する取組の概要(雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会参考資料)

「昇進」の課題

女性活躍推進における「昇進」の課題は、主に3つの要因に起因します。長時間労働が常態化していると、女性従業員が管理職への昇進を躊躇する傾向があります。評価基準の不透明も、公平な昇進機会を妨げる要因です。管理職として仕事と家庭を両立できるかという不安も、女性従業員のキャリア選択に影響を与えています。

「昇進」の課題の解決策

管理職の働き方改革の推進が重要です。労働時間管理の徹底やリモートワーク、フレックスタイム制の導入により、柔軟な働き方を制度化します。評価制度の透明化については、明確な昇進・昇格基準の策定と公開、360度評価(上司、部下、同僚など複数人の評価者による評価の手法)の導入により、公平で多面的な能力評価を行いましょう。

両立支援制度の拡充として、時短勤務制度の導入や、育児・介護との両立を前提とした業務設計を行うことも重要です。アンコンシャスバイアス研修を実施し、特に人事評価者向けの特別研修を行うことで、たとえば「長時間労働を人事評価において肯定的に評価する」といった無意識の偏見による評価への影響を最小限に抑えます。

出典:厚生労働省|雇用の分野における女性活躍推進等に関する取組の概要(雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会参考資料)

「就業継続」の課題

女性活躍推進における「就業継続」の課題になるのが、出産・育児によるキャリアの中断です。多くの女性が出産を機に退職や長期休職を余儀なくされます。厚生労働省の資料では、第一子出産後に3割の女性が離職することが示されてました。

仕事と家庭の両立を難しくすることとして、長時間労働も挙げられます。さらに、男性の家事・育児参加の不足により、女性に家庭の負担が偏っているケースも見られます。

出典:厚生労働省|第一子出産前後の妻の継続就業率・育児休業利用状況

「就業継続」の課題の解決策

長く女性が就労するために、柔軟な勤務制度は不可欠です。在宅勤務制度の整備や、短時間勤務、ジョブシェアリングの導入により、多様な働き方を可能にしましょう。

復職支援プログラムも充実させます。育休中の情報提供や研修の実施、段階的な復職プランの策定支援を行うことで、スムーズな職場復帰が可能になるからです。

福利厚生の充実として、事業所内保育施設の設置、保育・家事代行サービスの提供、食事補助などのワーク・ライフ・バランスを支援する制度の導入も就業継続を促します。

女性活躍推進の成功事例

女性活躍推進の成功をした企業の事例を紹介します。

小柳建設株式会社 (建設業)

<企業情報>
事業内容:建設業
従業員数:223人(うち女性31人)
企業認定・表彰等:くるみん認定、プラチナくるみん認定、えるぼし(認定段階3)、プラチナえるぼし、均等・両立推進企業表彰、ユースエール認定

厚生労働省が運営する女性の活躍・両立支援総合サイトは、女性活躍推進法で義務付けられている一般事業主行動計画やえるぼし・プラチナえるぼし認定の実績状況が確認できます。

女性の活躍・両立支援総合サイトにて、2023年度の好事例として取り上げられているのが小柳建設株式会社 (建設業)です。働き手が不足する建築業界の課題解決に女性活躍を推奨し、「現場のパトロール」「女性が技術者へキャリアチェンジ」「生理研修で女性特有の悩みへの意識改善」を実行します。

取り組みを実施することで、自治体やメディアからの取材が増え「働きやすい企業」というイメージアップに成功し、女性を含めた求職者の増加や従業員エンゲージメント向上に結びつきました。

出典:厚生労働省|女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集 小柳建設株式会社 (建設業)

株式会社サニクロの事例

<企業情報>
事業内容:部品検査の専門会社
従業員数:33人(女性のみ)

山梨県都留市の部品検査会社である株式会社サニクロは、女性活躍推進に積極的に取り組む中小企業の好事例です。同社はエデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入し、大きな成果を上げました。

全従業員が女性で、多くが子育て中という特性を踏まえ、サニクロは食事補助を通じて従業員の健康維持と経済的サポートを実現します。コンビニでも利用可能な点が、市街地から離れた立地でも便利だと好評です。

導入後、従業員間のコミュニケーションが活性化し、企業へのエンゲージメントも向上します。さらに、求人広告での訴求力が高まり、人材獲得にも貢献しています。

適切な福利厚生の導入が、女性の就業継続支援と職場での活躍促進に直結することを示す事例です。食を通じた福利厚生が、中小企業の女性活躍推進に大きな役割を果たした好例といえるでしょう。

導入事例:株式会社サニクロ様

関連記事:2024年度版「女性が活躍する会社BEST100 」から学ぶ成功企業の戦略

自社にフィットする方法で女性活躍推進

中小企業における女性活躍推進は、女性活躍推進法改正の影響も後押しとなり、進展しつつあります。

企業の持続的成長と競争力強化にも役立つことから、経営戦略として取り組むことが重要です。本記事で紹介した具体的な施策や成功事例を参考に、自社の状況に合わせた取り組みを段階的に実施しましょう。

事例で紹介したように、食事補助による福利厚生の充実は、即効性が高く、中小企業でも比較的導入しやすい施策です。たとえば全国のコンビニで便利に使える「チケットレストラン」は、女性従業員のモチベーション向上と能力発揮を促進し、企業全体の成長につなげていくことが可能となります。

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