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「無期転換ルール」を基礎からわかりやすく解説!2024年改正対応版

「無期転換ルール」を基礎からわかりやすく解説!2024年改正対応版

2024.07.02

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「無期転換ルール」について、2024年4月より、労働条件明示のルールが追加されています。この変更に伴い、企業には新たな対応が求められるようになりました。

本記事では、「無期転換ルール」の基本から制度改正まで、企業として知っておくべき情報をわかりやすく解説します。併せて、「無期転換ルール」によって得られる企業のメリットデメリットや対応策・人材戦略への活用法についても紹介しています。ぜひ無期転換ルールを戦略的に活用するための参考にしてください。

「無期転換ルール」とは?対象と適用プロセス

「無期転換ルール」は、有期労働契約が更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換できる制度です。雇用の安定と公正な処遇の実現を目的とし、2013年4月の労働契約法改正により導入されました。

まずは、無期転換ルールの対象や、適用プロセスの概要について解説します。

無期転換ルールの適用対象と条件

無期転換ルールの対象となるのは、契約社員やパート・アルバイトなど、名称を問わず有期労働契約で働く従業員です。同一の使用者との間で更新された有期労働契約が、通算して5年を超える場合に適用されます。この場合、労働者は無期労働契約への転換を申し込む権利を有します。

ここで注意が必要なのは、通算5年の計算方法です。無期転換ルールは、2013年4月1日以降に開始した有期労働契約が対象となり、それ以前の契約期間はカウントされません。また、契約期間のない期間(クーリング期間)が一定以上ある場合、それ以前の契約期間は通算対象から除外されます。

なお、契約期間ごとのクーリング期間は次のようになります。

無期転換ルール クーリング期間

出典:厚生労働省|無期転換ルールハンドブック

例えば、1年間の有期労働契約を満了したのち、6カ月の無契約期間を経て再び同じ企業と有期労働契約を結んだ場合、無契約期間前の契約期間(1年間)はリセットされ、通算契約期間には算入されません。

無期転換の申し込みと適用のプロセス

無期転換の申し込みは、通算5年を超える有期労働契約の契約期間中であれば、いつでも行うことができます。

制度の対象となる労働者から、無期転換の申し込みがあった場合、使用者に拒否権はありません。申し込み時の有期労働契約の期間が満了する日の翌日から、無期労働契約が成立します。

なお、ここでポイントとなるのが、無期転換申込権が発生するタイミングは、契約期間ごとに異なる点です。

契約期間が1年の場合、5年目の契約期間中(5回の契約更新後)に労働者が無期転換の申し込みをすることで、6年目の契約開始日から無期労働契約となります。

一方、契約期間が3年の場合、1度の契約更新で通算5年以上の雇用が見込まれることから、4年目の契約期間中(初回契約更新後)に無期転換の申込権が発生します。6年間の有期労働契約満了後、7年目の契約開始日から無期労働契約です。

無期転換ルール 申し込み権発生タイミング

出典:厚生労働省|有期契約労働者の無期転換サイト

企業が取るべき無期転換ルールへの対応策

無期転換ルールへの対応は、企業にとって重要な課題です。適切な対応を行うことで、人材の確保や育成・労使関係の安定化につながります。

一方で、準備不足は労務トラブルのリスクを高めかねません。ここでは、企業が取るべき具体的な対応策について解説します。

就業規則の見直しと整備

無期転換ルールに対応するためには、就業規則の見直しと整備が不可欠です。主な注目ポイントは以下の通りです。

  • 無期転換後の労働条件の明確化
  • 無期転換の申し込み手続きの規定
  • 無期転換後の評価・昇給制度の整備
  • 定年制の適用

特に、無期転換後の労働条件については慎重な検討が必要です。原則として、転換前の労働条件と同一となりますが、「別段の定め」がある場合は異なる条件を設定しても問題ありません。ただし、不合理な労働条件の設定は法的問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

無期転換後の労働条件設定のポイント

無期転換後の労働条件設定では、以下のポイントに注意が必要です。

  • 賃金体系:年功的要素の導入や昇給制度の整備
  • 職務内容:正社員との違いを明確にし、必要に応じて職務拡大
  • 勤務地:転勤の有無や範囲の設定
  • 労働時間:フルタイム化やシフト制の見直し
  • 福利厚生:社会保険の適用や各種手当の見直し

これらの条件設定にあたっては、正社員との均衡を考慮しつつ、企業の実情に応じた制度設計が求められます。また、条件変更の際は労働者の同意を得ることが重要です。

社内制度の整備と運用

無期転換ルールを円滑に運用するためには、社内制度の整備が欠かせません。具体的には、以下の取り組みが効果的です。

  • 無期転換申し込み受付窓口の設置
  • 無期転換のタイミングや手続きに関する社内周知
  • 管理職向けの研修実施
  • 人事システムの改修(契約期間の管理や無期転換者の把握)
  • キャリアパスの整備(正社員登用制度との連携など)

これらの制度を整備し、適切に運用することで、無期転換ルールへの対応を円滑に進めることができます。また、定期的な制度の見直しと改善も重要です。

無期転換ルールのメリット

無期転換ルールは、企業と労働者の双方にメリットをもたらします。これらのメリットを理解し、積極的に活用することで、より良い労使関係の構築と企業の持続的成長が期待できます。ここでは、企業と労働者それぞれの立場からメリットを解説します。

企業にとってのメリット

企業にとって、無期転換ルールには以下のようなメリットがあります。

  • 長期的な人材確保:優秀な人材を長期的に確保できる
  • スキル向上と生産性の向上:長期雇用によって従業員のスキルが向上し、生産性が高まる
  • 従業員のモチベーション向上:雇用の安定により、仕事への取り組み姿勢が向上する
  • 企業イメージの向上:従業員を大切にする企業として評価され、人材採用にも好影響
  • 業務の継続性と効率化:長期勤続者の増加により、業務の継続性が高まり、効率化が進む

特に、人材確保が困難な昨今の状況下では、無期転換ルールを活用した人材戦略の効果が期待されています。

労働者にとってのメリット

労働者から見た無期転換ルールのメリットは以下の通りです。

  • 雇用の安定:雇止めの不安がなくなり、安定した雇用が得られる
  • 長期的なキャリア形成:長期的な視点でスキルアップやキャリア形成が可能になる
  • モチベーションの向上:雇用の安定により、仕事への意欲や責任感が高まる
  • 生活設計の容易さ:安定した収入見込みにより、長期的な生活設計が立てやすくなる
  • 福利厚生の充実:無期雇用化に伴い、各種手当や福利厚生が充実する可能性がある

これらのメリットにより、労働者の仕事に対する満足度や帰属意識が高まることが期待できます。

無期転換ルールのデメリット

無期転換ルールには多くのメリットがある一方で、企業と労働者それぞれの立場からデメリットや課題も存在します。これらを正しく理解し、適切に対処することが、制度を有効に活用する上で重要です。

ここでは、企業と労働者のそれぞれの視点からデメリットを解説します。

企業にとってのデメリット

企業側から見た無期転換ルールのデメリットには、以下のようなものがあります。

  • 人件費の増加:長期雇用に伴い、賃金や福利厚生費用が増加する可能性がある
  • 雇用調整の柔軟性低下:景気変動時などの雇用調整が難しくなる
  • 就業規則改定の負担:無期転換に対応するための就業規則改定や、制度整備の負担
  • 正社員との処遇格差への対応:無期転換社員と正社員との処遇格差に関する問題
  • 管理コストの増加:無期転換社員の人事管理や教育訓練に関するコストが増加

これらのデメリットに対しては、長期的な視点での人材活用戦略や、多様な正社員制度の導入などで対応する必要があります。

労働者にとってのデメリット

労働者の立場から見た無期転換ルールのデメリットや懸念点には、以下のようなものがあります。

  • 労働条件変更の可能性:無期転換に伴い、労働条件が変更される可能性がある
  • 正社員との処遇格差:無期転換後も正社員との間に処遇格差が残る可能性がある
  • キャリアパスの限定:正社員と比べて昇進・昇格の機会が限られる可能性がある
  • 職務や勤務地の変更:無期転換に伴い、職務内容や勤務地が変更される可能性がある
  • 雇止めリスク:無期転換を避けるために、5年未満で雇止めされるリスクがある

これらのデメリットについては、労使間のコミュニケーションを通じ、適切な労働条件の設定やキャリアパスの明確化などで対応することが重要です。

無期転換ルールの特例と例外規定

無期転換ルールには、一定の条件下で適用除外や特例が設けられています。これらの規定を理解することで、より柔軟な人材活用が可能です。以下、主な特例と例外規定について解説します。

高度専門職に関する特例

高度専門職に関する特例は、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(有期特措法)」に基づくものです。以下の条件を満たす場合、無期転換申込権が発生しない期間を最大10年まで延長することができます。

  • 事業主が適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けていること
  • 高収入(年収1,075万円以上)で、高度な専門的知識等を必要とする業務に従事していること
  • 高度な専門的知識が必要かつ5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務であること

対象となる主な職種は、公認会計士・医師・弁護士・社会保険労務士などです。この特例を適用するには、各都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。

参考:厚生労働省 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)|高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について
参考:e-Gov法令検索|専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法|第8条

定年後再雇用者に関する特例

60歳以上の高年齢者を定年後に有期契約で継続雇用する場合、以下の条件を満たせば、その契約期間は無期転換申込権の発生する期間に含まれません。

  • 事業主が適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けていること
  • 定年に達したあと、引き続き雇用されている有期雇用労働者であること

この特例により、企業は高年齢者の継続雇用を柔軟に行うことが可能になります。

参考:厚生労働省 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)|高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について

研究者や教員等に関する特例

大学等及び研究開発法人の研究者・教員等については、無期転換申込権発生までの期間が通常の5年から10年に延長される特例が設けられています。この特例は、研究開発能力の強化及び教育研究の活性化等を目的として導入されました。

特例の対象となるのは、以下に該当する人物です。

  • 大学等や研究開発法人と有期労働契約を締結した研究者等
  • 研究開発等に係る企画立案・資金確保・知的財産権の管理等の業務(専門的な知識や能力が必要なもの)に従事する者
  • 共同研究開発等の業務に専ら従事する研究者等
  • 共同研究開発等の運営・管理業務(専門的な知識や能力が必要なもの)に専ら従事する者
  • 大学の教員等の任期に関する法律に基づく任期付きの教員等

特に注目すべき点として、学生として大学に在学中にTA(ティーチング・アシスタント)やRA(リサーチ・アシスタント)等として雇用されていた期間は、通算契約期間に算入されません。

この特例を適用する場合、使用者は労働者に対して特例の対象者となる旨を書面で明示し、説明する必要があります。また、共同研究開発等に従事する者については、「専ら従事する者」に限定されていることに注意が必要です。

なお、この特例は10年未満での無期転換を禁止するものではありません。また、特例を利用して意図的に無期転換を回避することは、労働契約法の趣旨に反するため、適切な運用が求められます。

参考:厚生労働省|文部科学省|大学等及び研究開発法人の研究者、教員等に対する労働契約法の特例について

2024年4月からの労働条件明示に関する改正

2024年4月から、労働条件明示に関する重要な改正が施行されています。この改正は、労働者の権利保護と無期転換ルールの適切な運用を促進することを目的としています。詳細を見ていきましょう。

労働条件明示のルール

出典:厚生労働省|2024年4月から労働条件明示のルールが変わります

【すべての労働者】に対する労働条件明示の追加事項

  • 就業場所・業務の変更の範囲

労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、雇入れ直後の就業場所・業務の内容に加えて、就業場所と従事すべき業務の「変更の範囲」も明示することが必要になります。これはすべての労働者(無期契約労働者を含む)が対象です。

【有期契約労働者】に対する労働条件明示の追加事項

有期契約労働者への明示事項は、明示のタイミングによって内容が異なります。以下、詳細を解説します。

有期労働契約の締結時と更新時

  • 更新上限の有無と内容
  • 更新上限を新設・短縮する場合の説明

有期労働契約の締結時と更新時に、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無とその内容の明示が必要です。

また、更新上限を新設したり、既存の上限を短縮したりする場合は、その理由をあらかじめ説明することが求められます。

無期転換申込権が発生する契約の更新時

  • 無期転換申し込み機会の明示
  • 無期転換後の労働条件の明示
  • 均衡を考慮した事項の説明

無期転換申込権が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨と、無期転換後の労働条件とを書面で明示することが必要です。

さらに、無期転換後の労働条件を決定するにあたっては、正社員をはじめとするほかの労働者とのバランスを考慮した事項(業務内容や移動の有無など)について説明するよう努めなければなりません。

なお、初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了したあとも、有期労働契約を更新する場合には、更新ごとにこれらの項目について明示が必要です。

無期転換ルールと福利厚生の戦略的活用

無期転換ルールへの対応は、単なる法令遵守にとどまらず、企業の人材戦略を見直す絶好の機会となります。

人材戦略として、特に注目したいのが、福利厚生制度の再設計です。「住宅補助」「健康支援」「育児・介護支援」「余暇支援」などの充実した福利厚生は、無期転換後の従業員のモチベーション向上や人材確保・定着に大きな影響を与える重要な要素です。従業員の暮らしを多方面から支えることにより、従業員のエンゲージメント向上、ひいては企業としての業績向上も期待できます。

福利厚生を人材戦略として活用する企業の多くが、近年注目している福利厚生に「食事補助」があります。日常的に行う「食事」を福利厚生としてサポートすることにより、エンゲージメントの向上効果をより高められるためです。

例えば、全国に25万店舗以上の加盟店を持ち、ICカード1枚で利用できるエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、その利便性や福利厚生としての導入効果から、すでに2,000社を超える企業に導入されています。

従業員に喜ばれ、人材戦略の決め手となる福利厚生として、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も

無期転換ルールを活用した戦略的な人材マネジメントの実現を

無期転換ルールは、企業と労働者双方に大きな影響を与える重要な制度です。2024年4月からの労働条件明示に関する改正も含め、適切に対応することが求められています。

しかし、この制度は単なる法令遵守の問題ではなく、長期的な人材確保や育成・従業員のモチベーション向上といった、企業の持続的成長に繋がる戦略的な人材マネジメントの機会です。

人材マネジメントの手法は多岐にわたりますが、特に従業員の定着とエンゲージメント向上に有効なのが福利厚生の充実です。例えば、「チケットレストラン」のような食事補助を含むきめ細やかな福利厚生制度の設計は、これからの人材戦略の鍵となるでしょう。

無期転換ルールを単なる法的義務としてではなく、企業の成長と従業員の幸福を両立させる戦略的ツールとして活用し、より強固な組織基盤の構築を目指しましょう。

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