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エデンレッドブログ

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【税理士監修】年収の壁・支援強化パッケージとは?政府の狙いや条件を解説

2024.05.01

監修者:舘野義和(税理士・1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和税理士事務所)

2023年10月に政府が発表した「年収の壁・支援強化パッケージ」は、簡単にいうと我が国の人手不足を補うための取り組みです。少子高齢化が止まらない日本の人口構造上、労働力不足という課題の解決に向けて、策を講じなければなりません。年収の壁による働き控えを防ぐことも、その対策の1つです。本記事では、政府推奨の「年収の壁・支援強化パッケージ」について、政府の狙いや企業が支援を受けるための条件について解説します。

年収の壁とは何か?

日本では、年収が一定の金額を超えると税金や社会保険料の負担が増えたり、配偶者の扶養から外れたりするなど、手取り収入が減少してしまう「年収の壁」問題が存在します。年収の壁は、働く人々の経済的インセンティブを著しく下げ、スキルアップやキャリアアップの機会をも制限してしまうのが問題点です。主な年収の壁について、次に解説します。

【100万円の壁】住民税の壁

一般的に年収が100万円を超えると、住民税が課税されます。住民税の負担が生じた分、手取り額が負担分減少します。【103万円の壁】所得税の壁

一般的に年収が103万円を超えると、所得税が課税されます。給与収入が103万円を超えた部分が所得税の課税対象となり、所得税率5%をかけた所得税額を納めなければなりません。

【106万円の壁】社会保険の壁(企業規模による)

月額賃金8万8,000円を基準として、年収106万円を超えると勤務先の企業の従業員数、雇用期間、週の所定労働時間などにより、社会保険の加入対象となります。加入すると社会保険料を納めなければなりません。

なお、社会保険とは、企業に勤める場合や条件を満たす短時間労働者が加入する保険で、年金や医療保険などをまとめた総称です。2024年10月からは、加入者を増やすための法令が施行され、従業員数が51人以上の事業所においても条件を満たす短時間労働者も加入が義務付けられています。

出典:厚生労働省|社会保険適用拡大ガイドブック

【130万円の壁】社会保険の壁(企業規模に関わらず)

どの企業で働く場合も、年収が130万円を超えると、配偶者の社会保険の扶養の対象外となり社会保険に強制加入します。月収10万8,333円を目安として働く短時間労働者が多いのは、130万円の壁を意識したものです。

【150万円の壁】配偶者特別控除の壁

税金に関するボーダーラインが150万円の壁です。年収が150万円を超えると、配偶者特別控除(最大48万円)の対象外となります。その結果、家計全体で手取り収入が大きく減少します。

年収の壁の問題点・課題

年収の壁が生じる背景には、税制や社会保険制度がそれぞれの制度目的で複雑に組み立てられている点が挙げられます。労働者の視点からすれば、「せっかく給与収入が増えても手取りが減ってしまう」という矛盾を孕んでいることが問題です。ここからは、企業と労働者の立場から、年収の壁による課題を掘り下げていきましょう。

企業側の課題

企業側の課題を3つのポイントで解説します。

1.人手不足の解消が難しい

労働者が労働時間を増やして収入を増やしたとしても、増えた労働時間に対して手取り収入がマイナスになる、もしくはそれほど変わらないことで、労働へのモチベーションが下がってしまいます。年収の壁が、企業の労働力確保を阻んでいるのです。

2.賃上げしても従業員が喜ばない

企業が賃上げを実施して、従業員の年収が上がったとしても、上記と同じ理由で増えた年収に対応する手取り収入増加のメリットが得られません。賃上げによって手取り収入が減るケースもあり、従業員に還元するはずの賃上げが本末転倒です。年収の壁があることで、賃上げを実施しても従業員の満足度が上がらず、生産性の向上につなげにくくなります。

3.企業負担の増加

社会保険料は企業と従業員との折半です。つまり、企業も従業員の社会保険加入により負担が増えるため、抵抗感があり年収の壁を容易に超えられない原因となっています。

労働者側の課題

労働者側の課題を4つのポイントで解説します。

1.扶養の範囲内では時間や仕事内容に制約がある

配偶者控除を失うリスクを避けるためには、年収の壁を超えないよう、就労時間や仕事内容を調整せざるを得ません。このように、年収の壁は女性の就業機会を奪う要因でもあります。

2.スキルアップしにくい

年収の壁により、仕事量を増やしたり高い給与のポストにチャレンジできません。そのため、キャリアアップやスキルアップがしにくくなります。

3.厚生年金未加入で将来の年金を多く受給できない

年収の壁のため、社会保険に長期未加入状態が続き、将来受給できる年金額が減額される可能性があります。

4.障害年金・遺族年金の受給資格が得られない

厚生年金に未加入であると、障害年金や遺族年金の受給資格も得られません。

年収の壁・支援強化パッケージとは?

政府は2023年10月から、短時間労働者への社会保険適用を促進するため「年収の壁・支援強化パッケージ」を開始しました。この制度は、従来の支援メニューに加えて新たな対策を講じるもので、労働者が社会保険に加入する際に生じる手取り収入の減少のデメリットを緩和し、就業を促進することが狙いです。

そのため、社会保険料の事業主負担分の一部に対する助成金の支給や、労働時間を延長した際の賃金への上乗せ支援などを実施します。主な年収の壁への対策として、106万円と130万円の壁への対処を盛り込んでいます。

【106万円の壁への支援】社会保険適用時の処遇改善対策

事業主が、以下に紹介する3つの支援メニューから取り組みを選択できます。

1.手当等支給メニュー

労働者が社会保険に加入する際に、事業主が社会保険適用促進手当等を支給し、その割合が1年目と2年目で賃金の15%、3年目で賃金の18%以上の要件を満たす場合、1人あたり3年間で最大50万円が助成されます。年収の壁支援強化パッケージとは_01

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内

2.労働時間延長メニュー

労働者が社会保険に加入する際に、事業主が労働時間を延長して賃金を増やし、手取り減少を防ぐ場合、事業主に対して従業員1人あたり6か月30万円(中小企業)または22.5万円(大企業)が助成されます。増加する時間数と賃金の増額の取り組みについては、1〜2時間で15%以上増額、2〜3時間で10%以上の増額、3〜4時間で5%以上の増額、4時間以上では増額に制限なし、となっています。

年収の壁支援強化パッケージとは_02出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内

3.併用メニュー

1年目は手当等支給メニュー、2年目は労働時間延長メニューに取り組む場合も助成されます。

年収の壁支援強化パッケージとは_03

出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内

【130万円の壁への支援】扶養のままをキープする配偶者控除適用措置

一時的に130万円を超えてしまった場合でも、一定の証明書を提出することで、配偶者控除が受けられるようにする措置も設けられました。配偶者控除から外れることによる、家計全体の手取り減少を防げます。

出典:厚生労働省|パート・アルバイトで働く「130万円の壁」でお困りの皆さまへ

年収の壁・支援強化パッケージに取り組む企業4つのメリット

企業が得られるメリットを解説します。

1.人手不足の解消

賃金アップによる処遇改善が実現でき、人材確保と定着化を促せます。人手不足の深刻な企業では、正規従業員を募集してもなかなか応募がありません。そこで、有効な対策となるのが、年収の壁・支援強化パッケージの活用です。短時間勤務者を積極的に採用し、時間外労働が可能な人材を確保することで、人手不足の解消につなげられます。

採用と同時に、手当支給や労働時間延長による手取り減少防止措置を講じることで、処遇面での魅力も高められます。また、一時的な繁忙に対しても、配偶者控除適用措置を提案することで、従業員の労働時間延長を促しやすく、人材が確保しやすくなるでしょう。

2.従業員満足度の向上による生産性向上

年収の壁で問題視される手取り減少がなくなるため、賃上げへの従業員満足度が向上します。労働へのモチベーションアップ、および意欲向上を受けての生産性向上にもつながるでしょう。

3.従業員のモチベーション向上

社会保険の加入は従業員にとって大きなメリットです。加入して得られるメリットが大きい社会保険を、積極的に加入するよう促すことは、従業員を大事にしていることの現れといえます。健康保険の傷病手当や出産手当、厚生年金の老齢年金・障害年金・遺族年金などのメリットを具体的に示すことで、労働者のモチベーションアップが期待でき、定着率をより高める効果も得られるでしょう。

4.女性の就業促進に貢献

年収の壁を払拭するという働き方の見直しを支援することで、女性の就業促進にもつながります。労働時間の上限を取り払うことで、短時間勤務から時間外労働を前提としたフルタイム勤務へと移行するケースも増えるでしょう。結婚・出産などにより、就業から離れてしまった女性が、時間の制限なく再び社会で活躍するための後押しになりえます。

年収の壁・支援強化パッケージに取り組む従業員2つのメリット

従業員が得られるメリットも押さえておきましょう。

1.モチベーションが高まる

手取り減少の心配がなくなるのが最大のメリットです。キャリアアップやスキルアップすればするほど、インセンティブが高まりその分賃金が上がるため、働く意欲が高まります。

2.社会保険に加入できる

社会保険に加入できるのがメリットです。社会保険の加入により、将来もらえる年金額が増える、障害を持つことになった場合障害年金が受け取れる、医療保険の給付が充実し傷病手当金や出産手当金が受けとれるなどのメリットがあります。企業が半額保険料を負担するため、保険料の支払いの費用が軽減されるのも魅力です。社会保険に加入することで、傷病や出産、老後の生活など、急なリスクに対する備えができ、生活の安定が図れます。

年収の壁・支援強化パッケージを支援する政府の狙い

なぜ今政府が年収の壁・支援強化パッケージを進めているのか、政府の狙いを押さえましょう。

働き方の見直しと女性の就労促進

年収の壁除去により、短時間勤務からフルタイム勤務へと働き方を見直しやすくなり、女性の就労が促進されることが期待されています。その背景にあるのは少子高齢化による労働力不足です。

所得向上と社会保険未加入者の解消

収入アップを支援することで、国民全体の所得向上につなげるとともに、社会保険の未加入者を減らすこともできます。国力を高めるための取り組みでもあるのです。

年収の壁・支援強化パッケージ4つの注意点

年収の壁・支援パッケージには、いくつかの注意点がありますので確認しましょう。

1.一時的な措置である

時限的な制度であることに注意が必要です。制度の見直しなど、抜本的な対策が必要とされています。

2.フルタイム労働者に比べ優遇され過ぎる面もある

賃金の増額など短時間勤務者に対する手厚い支援により、フルタイム労働者との不公平感が生じる恐れがあります。待遇の公平性を大きく逸脱していないか、配慮が必要です。

3.社会保険加入済みの従業員との不公平感が生じる

新規に社会保険に加入する従業員だけ優遇されるため、すでに加入している従業員との間で不公平が問題視される可能性があります。

4.助成金支給までに時間がかかる

制度を活用するには、事前に各種書類の提出が必要です。実際に助成金が支給されるまで、ある程度時間を要します。

従業員エンゲージメントを高め、働きやすさもアップ

年収の壁対策と同時に、企業には従業員エンゲージメントを高め、さらに個々の従業員のライフスタイルに適合する働きやすい職場環境を整備することが求められます。高いエンゲージメントにより、優秀な人材の確保と生産性の向上を図れるためです。賃金が見直されている今こそ、働き方全体を見直す絶好の機会です。ここからはエンゲージメントを高める方法に焦点を当てて解説します。

働きやすい職場環境の整備

短時間勤務者には、育児・介護と仕事の両立をして働くケースが多くみられます。多様な働き方の推進、長時間労働の是正など、従業員が働きやすい環境づくりに取り組むことが大切です。

能力開発を目的とした研修の実施

キャリアアップを後押しするため、スキルアップを狙った研修を積極的に行いましょう。短時間労働者の労働時間が増えることで、これまで以上に担う業務が増えれば、ジョブローテーションなど従業員の成長機会を促進することが求められます。企業からの手厚い研修でスキルアップができることで、従業員エンゲージメントも高まります。

福利厚生の拡充

企業が従業員やその家族に提供する手当や休暇などのサービスが福利厚生です。従業員が活用できる福利厚生を拡充することで、「企業にさらに貢献したい」という自発的意欲を引き出す効果が期待できます。

そのため、経営戦略として福利厚生を活用する企業も増えています。たとえば、近年注目されている「第3の賃上げ」は、福利厚生サービスを活用して実質手取りを増やせる賃上げです。働きやすさを高めるための戦略的な取り組みとして、とくにスタートアップ企業、中小企業などの「賃上げ代替策」として続々と導入されています。

参考記事:グッド!モーニングでも話題の「第3の賃上げ」|福利厚生の活用で低リスクな賃上げを実現!

福利厚生で"実質賃上げ”「チケットレストラン」の魅力

エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は「第3の賃上げ」の代表例です。「チケットレストラン」は、食の福利厚生で日本一を誇るサービスであり、従業員のランチ代を企業が半額補助します。導入後の継続率99%、利用率98%、満足率93%、実際に従業員が活用している福利厚生としても定評があります。

使い方も簡単です。配布された専用のICカードは、全国約25万店舗以上の加盟店で使用できます。加盟店には大手コンビニが含まれ、全国で24時間利用できる利便性の高さも魅力です。利用する店舗もタイミングも勤務時間内であれば自由に選択でき「今日はどの店に行こうか」というランチの楽しみを従業員に提供できます。

支払いはタッチ決済するだけでよく、企業が行うのは月1回のチャージ作業のみで運用簡単など、会計も管理も非常にスムーズです。

また、福利厚生費は一定の要件を満たすことで非課税で処理できるのもメリットです。給与で食事補助代を上乗せするよりも、福利厚生費として支給する方が所得税が非課税になる分手取りがアップします。加えて企業は全額を経費扱いにできるため、税負担を抑えられます。

年収の壁を超えて働くメリットは大きい

手取り減少を補う支援制度である「年収の壁・支援強化パッケージ」は、短時間労働者が年収の壁を超えて働くデメリットを払拭できる画期的な制度です。企業にとっても、助成金が得られるメリットがあります。ただし、時限的な措置であることを念頭に、処遇改善や働き方改革も同時に推進し、長期的に人材確保ができる企業を目指さなければなりません。

エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、食の福利厚生サービスであり、従業員の実質賃上げ支援ができ、全従業員に公平に提供できる、などハイブリッド型の魅力に富んだ福利厚生です。年収の壁を超えない従業員やすでに超えている従業員にも平等に提供できる福利厚生は、パッケージ活用による不公平感の払拭の緩和剤にもなるでしょう。

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