連合より2025年春闘の基本構想が示され、全体の賃上げ目安が5%、中小企業では価格是正分としてさらに1%上乗せした「6%」の目安が示されました。あえて強調されたのは、2024までの春闘で、中小企業の賃上げが大手企業ほど実現できていないからです。本記事では2025年、春闘で掲げられた中小企業の賃上げ6%目標達成に向け、現状に応じた実現方法を示します。
2025年中小企業の春闘目標「6%」価格転嫁が鍵
連合は2025年春闘において、中小企業の賃上げ率「6%以上」という目標を打ち出しました。2024年の「5%以上」から1ポイントの引き上げとなります。
芳野友子会長は「中小の賃金底上げは日本全体の底上げにつながる」と強調し、企業規模による賃金格差是正に向けた強い決意を表明しました。労働者の約7割が働く中小企業の賃金改善なくして、日本経済の成長は実現できないとの認識が示されています。
また、格差是正のためには、価格転嫁が重要であると強調し、労使交渉の場でもう一度企業の取り組みを議論する必要性も述べています。
(茅野会長)ことしの春闘の結果をみると大手と中小の格差が広がり、来年は5%以上の賃上げを継続し、格差是正をしっかり行っていきたい。そのためには価格転嫁が重要で、加盟する労働組合に対して、もう一度、自社の取り組みがどうなっているのか、労使交渉の場でも議論してほしい
引用元:NHK News Web|連合 来年の春闘 賃上げ5%以上 中小企業は6%以上要求の方針(2024年10月18日)
参考:日本経済新聞|25年春闘、格差是正主軸に 連合目標、中小「6%以上」
近年の中小企業の春闘賃上げ状況
近年の中小企業の春闘は、以下のとおり大手企業との格差が目立ちます。
年度 | 中小企業(300人未満)賃上げ率 | 大手企業(300人以上)の賃上げ率 | 大手企業との格差 |
2024年 | 4.45% | 5.19% | 0.74ポイント |
2023年 | 3.23% | 3.64% | 0.41ポイント |
2022年 | 1.96% | 2.09% | 0.13ポイント |
出典:~2023 春季生活闘争 第 7 回(最終)回答集計結果について~、~2024 春季生活闘争 第 7 回(最終)回答集計結果について~
2024年の春闘では、大手企業の多くが5%を超える賃上げを実現する中、中小企業との格差は0.74ポイントに拡大しています。この明白な格差拡大を鑑みて、2025年春闘では格差是正分として1%以上を上乗せした6%以上の賃上げ目標が設定されました。
春闘中小企業賃上げ6%実現の課題である価格転嫁の現状
賃上げ原資の確保において、価格転嫁は重要な要素となります。しかし、中小企業庁が2024年4月〜5月に実施した「価格交渉月間間(2024年3⽉)フォローアップ調査」によると、以下の結果となっています。
- 価格交渉が行われた割合:59.4%(半年前58.5%)
- コストの対する価格転嫁率:46.1%(半年前63.0%)
- 全く価格転嫁できない割合:19.8%(半年前20.37%)
価格交渉ができる雰囲気が醸成されつつあり、46.1%の企業でコストを価格転嫁できた一方で、20%の企業は全く転嫁できていない状況です。「価格転嫁できた企業」と「価格転嫁できない企業」の二極化傾向がみられます。
出典:中⼩企業庁|価格交渉月間間(2024年3⽉)フォローアップ調査
最低賃金の引き上げが中小企業の「賃上げ」を後押し
政府は2020年代半ばまでに最低賃金額が全国加重平均で1,500円到達を目指す方針を打ち出しています。2024年10月からの最低賃金は全国加重平均で51円引き上げられ1,055円となり、引き上げ幅は過去最大を記録しました。
27県では国が提示した目安を上回る引き上げを実施しています。とくに、東京都では1,172円まで上昇し、地方との格差是正も課題です。
最低賃金の上昇は、中小企業における賃金水準の底上げに直接的な影響を与えるでしょう。中小企業の成長のチャンスととらえ、持続可能な賃上げの実現に前向きに取り組むことが大切です。
出典:厚生労働省|地域別最低賃金の全国一覧
出典:日本経済新聞|最低賃金引き上げ額、国の目安「50円」超え27県に
関連記事:【社労士監修】最低賃金引き上げによる中小企業への影響。厚生労働省の支援事業も紹介
政府による賃上げ支援策、2025年度は内容を大幅拡充
中小企業の賃上げの実現を後押しするため、政府は2025年度予算で1,548億円の支援パッケージを編成しました。そのうち、1,349億円分は賃上げ状況による支援区分が拡充された助成金です。賃上げ率の高い企業への支援の強化が盛り込まれており、新たな支援区分(賃上げ率7%以上達成など)を設けることで、積極的な賃上げを促進します。
ここでは、支援内容が拡充された助成金を紹介します。
業務改善助成金(22億円)
【制度概要】
事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上のための設備投資等を行う中小企業・小規模事業者に対して、その設備投資等にかかった費用の一部を助成します。
【2025年度の変更点】
- 地域間格差に配慮した助成率区分の再編
- 支援時期等の見直しによる重点化
具体的には、最低賃金別助成率の区分を「1,000円未満(5分の4)」から「1,000円以上(4分の3)」に変更、生産性要件の廃止、夏秋における賃上げ・募集時期の重点化、特定時期の追加募集枠を設ける(推進枠)といった見直しが行われます。
出典:厚生労働省|令和7年度予算概算請求の主要事項
働き方改革推進支援助成金(70億円)
【制度概要】
生産性向上に取り組む企業に対し、外部専門家によるコンサルティングや設備導入等の費用を助成します。
【2025年度の変更点】
- 現行の賃上げ率3%、5%の区分に加え、7%区分を新設
- 7%以上の賃上げを実現した企業への助成を強化
出典:厚生労働省|令和7年度予算概算請求の主要事項
人材開発支援助成金(620億円)
【制度概要】
従業員の職業訓練を実施する企業に対し、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成します。
【2025年度の変更点】
- 訓練終了後に賃上げ等した場合の賃金助成額の引き上げを導入
出典:厚生労働省|令和7年度予算概算請求の主要事項
人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)(4億円)
【制度概要】
雇用管理制度(賃金制度、諸手当制度、人事評価制度など)を労働協約・就業規則を作成・変更することにより、導入し、従業員の離職率の低下に取り組む事業主に助成を行います。
【2025年度の変更点】
- 令和7年度から制度を再開
- 人事評価改善等助成コースを統合
- 賃上げ(5%)を実現した場合、各支給額の25%分を上乗せ支給を新設
出典:厚生労働省|令和7年度予算概算請求の主要事項
キャリアアップ助成金(正社員化コース・賃金規定等改定コース)(633億円)
【制度概要】
非正規雇用労働者の正社員化や賃金規定の改定を行う企業に対して助成を行います。正社員転換時に3%以上の賃上げを実施した場合や、賃金規定を増額改定した場合に助成金を支給します。
【2025年度の変更点】
- 賃金規定等改定コースの区分を2区分から4区分へ拡充
- 賃上げ率6%以上の場合の助成額を7万円へ引き上げ
- 昇給制度を新たに設けた場合の加算措置(1事業所20万円)を新設
出典:厚生労働省|令和7年度予算概算請求の主要事項
実質手取りアップを実現する「第3の賃上げ」も活用
政府の助成金活用に加え、「第3の賃上げ」と呼ばれる福利厚生を活用した賃上げ手法も注目されています。第3の賃上げとは、「実質手取り」を増やすために、福利厚生サービスを活用することです。実施すると、従業員は福利厚生サービスを利用することで、税制優遇を受けられるため実質手取りが増えます。企業は福利厚生費として経費の処理ができることから、税負担を抑えられます。
出典:株式会社エデンレッドジャパン|“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
福利厚生サービス導入で従業員の手取りが増える仕組み
企業からの還元には、給与を増やす方法と、福利厚生を充実させる方法があります。一見すると給与アップの方が分かりやすい還元と思われますが、実は福利厚生による還元の方が、従業員の実質的な手取りを増やせる場合が多いのです。
食事補助や社宅などの福利厚生として受け取る場合、一定の要件を満たせば所得税の課税対象になりません。そのため、非課税枠となった分の手取りが増え、支給された金額の恩恵を多く受けることができます。
「第3の賃上げ」が企業にメリットをもたらす仕組み
福利厚生による「第3の賃上げ」には、企業にとって複数の重要なメリットがあります。福利厚生費用は全額を経費として計上できるため、企業の税務上の負担を効果的に抑えられます。また、福利厚生の拡充は従業員の満足度向上にもつながり、人材の定着に貢献するでしょう。充実した福利厚生制度は採用活動での競争力も高め、企業の魅力をアピールする強みとなります。
企業が納めなくてはならない法人税の負担を抑えながら、従業員満足度向上や採用活動での魅力アップにもなるのが「第3の賃上げ」の魅力です。
第3の賃上げの代名詞!食の福利厚生サービス「チケットレストラン」
物価高の今、エデンレッドジャパンが提供する「チケットレストラン」は「第3の賃上げ」の代表例として注目を集めています。従業員も企業と同等以上の負担が必要ではあるものの、月額最大3,500円(税抜)の食事補助で、従業員の毎日の食事をサポートできるサービスです。
導入方法はシンプルです。事前に金額がチャージされた専用ICカードを従業員に配布するだけでスタートできます。ランチはもちろん、朝食やカフェでのティータイム、残業時の夕食まで、全国25万店舗以上の加盟店で勤務中ならいつでも利用可能です。コンビニ、ファミレス、カフェチェーンなど、選択肢の豊富さが98%という高い利用率につながっています。
すでに3,000社以上が導入し、契約継続率99%、従業員満足度93%という数字は、チケットレストランの評価の証です。社員食堂や専用冷蔵庫などの特別な設備投資もありません。導入も継続もしやすく、負担の少ない形で「第3の賃上げ」を実現できます。
中小企業6%以上の賃上げに向け総合的にアプローチ
連合が掲げた中小企業「6%以上」という高い賃上げ目標を達成するためには、政府支援策の活用、生産性向上の取り組み、「第3の賃上げ」の導入を組み合わせた総合的なアプローチが効果的です。
とくに、食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を活用すると、企業負担を抑えながら従業員の実質手取りを増やせるため、比較的取り組みやすく、賃上げに向けての第一歩になります。まずは導入しやすい施策から始め、総合的な賃上げを実現していきましょう。