ロスジェネ世代とは、1993~2005年にかけて社会人になった世代のことです。いつ頃どのような出来事をきっかけに、ロスジェネ世代は生まれたのでしょうか?ロスジェネ世代の現在までの状況や、世代の特徴などを解説します。
ロスジェネ世代とは
ロスジェネとはロスト・ジェネレーションの略です。「失われた世代」「氷河期世代」ともよばれています。
1993~2005年にかけて社会人になった世代のことをさしており、内閣府の資料では1975~1984年まれの人を就職氷河期コア世代と位置づけています。2024年時点で40代の人材が、ロスジェネ世代といえるでしょう。
なぜロスジェネ世代は生まれたのでしょうか?ロスジェネ世代が生まれた背景にある経済状況や、今日まで続いている影響について見ていきましょう。
参考:内閣府男女雇用参画局|令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査報告書
ロスジェネ世代の前に起きたバブル崩壊
バブル崩壊前の日本は、バブル景気とよばれる好景気で、地価や株価がどんどん上がっていました。土地は必ず値上がりするという「土地神話」が信じられていたのもこの時期です。
ただしバブル景気は実体を伴うものではなかったことから、日銀は金融を引き締め始めます。これにより金利が上昇し始めると、多額の資金を借り入れた企業の返済が追いつかなくなり倒産しました。
多くの企業が倒産したことから、銀行の経営が危うくなるほどです。この影響を受けて、倒産を免れた企業も、ボーナスの支給額を減らす・人員削減を行う、といった対策を行いました。
景気が急激に後退したことから、バブル崩壊とよばれています。
ロスジェネ世代はバブル崩壊後の経済停滞で生まれた
ロスジェネ世代は、バブル崩壊後の景気が停滞している時期に就職活動を行った世代です。経済の先行きが不透明な中、企業は新卒採用を縮小したり、見送ったりしました。
就職を希望しても仕事に就けない人や、仕方なく希望と異なる仕事に就いた人が多いことは「令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査報告書」から分かります。
男女ともに就職前の仕事に対する希望度に対して「希望通り」と回答した割合が、ロスジェネ世代は前後の世代よりも低い結果です。実際に働いてみたときの魅力度も、ロスジェネ世代は低い傾向があります。
仕事の総数が少なくなっている状況で、希望をかなえるよりも仕事に就くことを優先したケースが多かったと考えられるでしょう。
ロスジェネ世代の雇用・賃上げの現状
「令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査報告書」によると、ロスジェネ世代はそれより上の世代と比べて、大学卒業後に非正規雇用の仕事に就く割合が増えました。
非正規雇用で働く割合は、ロスジェネ世代より若い世代もロスジェネ世代と同程度です。ただし就職した仕事が「希望通りだったか」「魅力的だったか」という質問に対して「はい」と回答した割合は、若い世代の方が高くなっています。
ロスジェネ世代は希望と異なる不本意な雇用でキャリアをスタートさせているといえるでしょう。希望と異なる形でスタートしたキャリアは、ロスジェネ世代の現在の雇用にも影響を及ぼしています。
マイナビの「就職氷河期世代の実情と就労意識」によると、ロスジェネ世代は他の世代と比べて、2018年時点でも大企業で働く人の割合が低いそうです。「正社員の仕事がないから」という理由で不本意ながら非正規雇用で働く人も50万人存在します。
また日本国内では賃上げの動きが広がっていますが、ロスジェネ世代の賃上げは他の世代と比べると進んでいません。
正社員の賃上げは若い世代の人材確保を目指しているケースが多く、ロスジェネ世代は手薄になりがちです。また非正規雇用の賃上げが正社員より広がりにくいことも、非正規雇用で働く人が多いロスジェネ世代の賃上げが進みにくい理由と考えられます。
参考:
内閣府男女雇用参画局|令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査報告書
マイナビ|就職氷河期世代の実情と就労意識
関連記事:【氷河期世代の賃上げ】賃金の課題と対策!食事補助の福利厚生の可能性
最も影響が大きかったのはロスジェネ世代の女性
アントレが実施した「ロスジェネの昔と今、就職氷河期世代の働き方実態調査」によると、バブル崩壊後の就職氷河期の影響を大きく受けたのは、ロスジェネ世代の女性だそうです。
ロスジェネ世代は男女ともに正社員率が他の世代より低くなっていますが、特に女性は53.8%と、約半数が希望しても正社員になれない状況でした。
2023年時点で実施した同調査において、新卒時から勤続している人が0%であることからも、不本意な就職であったことが分かります。
参考:アントレ|ロスジェネの昔と今、就職氷河期世代の働き方実態調査
ロスジェネ世代の特徴
バブル崩壊後の経済状況により、不本意な就職をした人の多いロスジェネ世代には、どのような特徴があるのでしょうか?ここでは5つの特徴を解説します。
仕事に積極的な人材が多い
新卒採用時に希望の就職がかなわなかったどころか、非正規雇用でしか就職できなかった人もいるロスジェネ世代は、仕事に積極的に取り組む傾向があります。
「代わりはいくらでもいる」といわれてきた世代でもあるため、他の人に代替されないような成果をあげるには何ができるか、どのように企業に貢献すれば評価されるか、といったことを意識しながら働く人材が多いでしょう。
資格取得への意欲が高い
常に必要とされる人材であろうとするため、資格取得を目指す人が多いのも特徴です。自ら新しい知識やスキルを習得して、企業の業務に役立てようとします。
貯金をする人が多い
子ども時代にバブル崩壊を目の当たりにしていることや、新卒採用で不安定な仕事にしか就けない経験をしていることから、収入を得ると貯金する人が多いのも特徴です。
結婚に対する意欲が低い
非正規雇用で働く人が上の世代より多く、正社員で働いていてもなかなか給与が上がらないロスジェネ世代は、自分の生活で手一杯です。その結果、結婚に対する意欲が低い人や、結婚したくてもできないと考えている人が多い世代でもあります。
慎重で悲観的な考え方を持つ人が多い
バブル崩壊後の就職氷河期には、どれだけ努力しても就職できない人が一定数存在しました。そのような状況で仕事に就くには、希望する企業よりランクを落として就職活動をするケースもあったそうです。
自分の努力でどうにもできないことで希望がかなわず、就職したからといって安泰といえない環境の中で、悲観的な考えを持つ人が多い世代でもあります。
ロスジェネ世代の前と次はどんな世代?
ロスジェネ世代は雇用や給与において、2024年時点でも他の世代より苦しい面があります。経済状況が悪い中でキャリアをスタートしたことから、手にした仕事を失わないよう積極的に取り組むのも特徴です。その反面、慎重さと悲観的な考え方を持っており、就職や転職でも確実性を求めます。
このような特徴は他の世代にも見られることです。ロスジェネ世代の前と次はどのような特徴のある世代なのでしょうか。
団塊世代
1947~1949年生まれは同年代の人口が多いことから団塊世代といいます。高度経済成長期とバブル経済を経験しており、将来に対して希望を抱きやすい時代背景のある世代です。
年功序列や終身雇用が一般的で、1度就職すると定年退職まで勤め上げる人が多いのも特徴といえます。
新人類
1960年代生まれで子ども時代に高度経済成長を目の当たりにしながら育っています。日本が豊かな国になりつつあることを感じながら成長している世代です。上の世代からは「これまでの常識が通じない世代」と捉えられたため新人類とよばれています。
バブル世代
1965~1969年生まれはバブル景気のときに社会人となったため、バブル世代とよばれています。好景気により新卒者の大量雇用が行われていたため、就職活動で苦労していない世代です。
長時間労働や勤務時間外の接待などを当たり前に行ってきた世代でもあります。
ゆとり世代
1987~2004年生まれは、詰め込み教育からの転換が行われた時期に子ども時代を過ごしていることから、ゆとり世代とよばれています。
仕事よりプライベートを重視する傾向がある点や、学生時代からスマホを使い横のつながりを積極的に作る点、共感を大切にする点が特徴です。
Z世代
1995~2010年生まれをZ世代といいます。物心ついたときには、パソコンやスマホなどのモバイル端末が身近にある環境で育っていることから、デジタルネイティブ世代ともよばれている世代です。
何事も効率を重視する傾向や、多様性を重要視する考え方などが特徴といえます。
ロスジェネ世代の老後について
ロスジェネ世代は、新卒採用のタイミングで希望する就職が実現しなかった人の割合が高いのが特徴です。非正規雇用や無業で社会人としてキャリアをスタートした人もおり、現在も雇用が不安定なまま働いているケースも見られます。
非正規雇用や無業では、収入が低く社会保険が手薄です。加えて今の生活費で手一杯で、老後に向けた資金づくりが不十分なこともあるでしょう。
老後を迎えても、年金や老後資金のみでは暮らせず、働き続ける必要があることも考えられます。病気やけがといった理由で働けなくなれば、生活が維持できなくなる恐れもあるでしょう。
ロスジェネ世代の雇用促進は企業にもプラス
厳しい環境に置かれ続けてきたロスジェネ世代は、企業にとって重要な人材となる可能性があります。ロスジェネ世代の雇用がプラスに働く理由を見ていきましょう。
仕事に対する積極的な姿勢
ロスジェネ世代は働きたくても働けないという経験をしている人もおり、就職すると積極的に仕事に取り組む傾向があります。この働き方は、他の従業員をけん引する役割を果たすリーダー層を採用したいと考えている企業で役立つでしょう。
助成金の活用が可能
ロスジェネ世代の雇用を促進するために、国は以下のような複数の助成金を用意しています。ロスジェネ世代を雇用することで、人材確保を行いつつ助成金の受け取りが可能です。
助成金 |
助成金の内容 |
トライアル雇用助成金 「一般トライアルコース」 |
常用雇用につながる取り組みとして、原則3カ月の試行雇用を行うことで、最大4万円を最長3カ月受け取れる |
特定求職者雇用開発助成金 「就職氷河期世代安定雇用実現コース」 |
要件を満たす企業が、要件を満たすロスジェネ世代の人材を正規雇用すると、60万円(大企業は50万円)を受け取れる |
人材開発支援助成金 「人材育成支援コース」 |
有期契約労働者を対象に、要件を満たす訓練を実施すると、訓練にかかる経費の70%と、訓練中の賃金について1人あたり1時間760円(大企業は380円)の助成金を受け取れる。例えば非正規雇用で働くロスジェネ世代の正規雇用への転換の際に利用できる |
キャリアアップ助成金 「正社員化コース」 |
有期雇用労働者を正社員にすると中小企業80万円・大企業60万円が、無期雇用労働者を正社員にすると中小企業40万円・大企業30万円が受け取れる |
参考:
厚生労働省|トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)のご案内
厚生労働省|「特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)」のご案内
厚生労働省|人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内
厚生労働省|キャリアアップ助成金のご 案 内(令和6年度版)
関連記事:【社労士監修】人材採用に役立つ助成金の支給要件や支給額は?活用の注意点も解説
ロスジェネ世代とはバブル崩壊後に社会人になった世代
ロスジェネ世代はバブル崩壊後の1993~2005年にかけて社会人になりました。景気が後退する中、新卒採用を絞ったり見送ったりする企業もあり、希望通りの就職が難しかった世代です。
非正規雇用や無業で社会人になる人もおり、その影響は2024年時点でも続いています。希望に反して不安定な雇用で働いている人は2018年時点でも50万人存在しますし、正社員として勤務している人も若い世代と比べると賃上げ幅が少ないそうです。
ロスジェネ世代の賃上げが進みにくい状況を改善するには、実質的な手取り額アップにつながる福利厚生の導入が役立ちます。例えばエデンレッドジャパンの提供する食の福利厚生サービス「チケットレストラン」なら、食事代のサポートにより従業員が使える給与を増やすことが可能です。
要件を満たして支給すると従業員の税負担を増やすことなく支給できるため、同額の賃上げよりも手取り額が上がったことを実感しやすい仕組みといえます。ロスジェネ世代の待遇改善に検討してみてはいかがでしょうか。