2030年問題、2040年問題、その先の2050年問題、これらは今後日本が直面する高齢化と少子化による社会問題を進行の段階で区切ったものです。近い将来日本に訪れる人口構造の変化は、企業の存続にも影響します。2030年問題や2040年問題とは何か、未来がどのような姿を描くのか、そのために企業ができることについて、本記事では詳しく解説します。
2025年問題、2030年問題、2040年問題、2050年問題とは?
出典:厚生労働省|我が国の人口について
2030年問題も2040年問題も、高齢化と少子化による人口構成の変化で生じる社会問題です。段階ごとに進行する問題や課題について、どのような変化が社会に影響を与えるのかを紐解きます。
2025年問題
2025年問題で焦点となる社会構造の変化は、以下です。
- 団塊の世代がすべて75歳以上に達する見込み
- 後期高齢者(75歳以上)の人口が2,180万人まで増加し、全人口の17.8%に達すると推定
2025年問題は、高齢化問題のスタート地点という位置付けです。高齢者は増えますが、まだ高齢者割合が増加するスタートとも見なされています。ポイントとなるのが、団塊の世代です。1947年〜1949年ごろの第1次ベビーブームに生まれた世代は、大きな固まりとして人口構成の中で高い山を作ります。
出典:国立社会保障・人口問題研究所|人口ピラミッド
2030年問題
2030年問題で焦点となる社会構造の変化は、以下です。
- 65歳以上の高齢者が3,716万人となり、全人口の31%に達すると推測
- 生産年齢人口は6,875万人となり、7,000万人を割り込むと推測
2030年問題では、高齢化が進行しますが、あくまでも通過点にすぎません。全人口の3割以上が高齢者となり、3人に1人が高齢者という状況です。2030年になると、生産年齢人口の減少が目立ち始めます。ピーク時である1995年と比較すると、1,800万人以上の減少見込みです。国内の需要が減少する一方で、人材不足も顕著になると考えられています。
出典:国立社会保障・人口問題研究所|人口ピラミッド
2040年問題
2040年問題で焦点となる社会構造の変化は、以下です。
- 団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者人口がピークに達する(3,921万人)と推測
- 生産年齢人口が急激に減少すると推測
2040年問題で焦点となるのは、第2次ベビーブームの時期(1971〜1974年)に生まれた団塊ジュニア世代の高齢化です。人口ピラミッドで大きな山を形成している世代が、生産年齢人口から高齢者へと社会的な位置付けが変わることで「労働力の急激な減少」「社会保障費の増大」という社会影響を与えます。経済成長もマイナスになるでしょう。一方、少子化は進むため労働力不足もより一層深刻になると予測できます。
出典:国立社会保障・人口問題研究所|人口ピラミッド
2050年問題
2050年問題で焦点となる社会構造の変化は、以下です。
- 総人口が1億人を下回ると推測
- 75歳以上の人口が2054年まで増加が続くと推測
- 生産年齢人口が減少する見込み
総務省によると、2050年の生産年齢人口は5,275万人、65歳以上の高齢者は3,874万人、そのうち75歳以上が2,417万人です。4人に1人が75歳以上の高齢者となります。75歳以上になると、医療や介護サービスを利用する割合が高く、社会保障給付費の財源確保はいよいよ困難です。そのような事態にならないよう、2050年までに国も企業も抜本的な改革により国力を高め、税収を増やす対策が必須となります。
出典:国立社会保障・人口問題研究所|人口ピラミッド
参考:厚生労働省|我が国の人口について
参考:総務省統計局|統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-「高齢者の人口」
参考:総務省|令和4年版情報通信白書
2030年問題と2040年問題の相違点
10年以内に現実化する2030年問題、20年後に現実のものとなる2040年問題について、2つの問題の違いをわかりやすく以下のポイントにまとめます。
- 2030年から2040年にかけて、引き続き高齢化が一歩進む
- 2030年から2040年にかけて、引き続き総人口における若年層の割合が下がる
- 2030年から2040年にかけて、引き続き総人口が減少する
- 医療・介護・年金などの根本的な社会問題は2030年も2040年も同じ
- 2040年になると、医療崩壊・経済衰退・介護需要の高まりと向き合わざるをえない
- 社会保障制度の持続可能性は、GDPの成長率とも密接である
大事なことは、2030年問題も2040年問題も過渡期という点です。厚生労働省のデータによると、総人口は2070年に8,700万人、65歳以上の高齢化者の割合は39%と推定されています。
出典:厚生労働省|我が国の人口について
では、一体いつまで高齢化が続くのでしょうか。国立社会保障・人口問題研究所によるデータでは、65歳以上人口の割合は2080年ごろに40%に達し、以後横ばい傾向であることが示されています。
出典:国立社会保障・人口問題研究所|令和5年 日本の将来推定人口
2030年の未来予測イメージ
企業が2030年問題やその対策を検討するうえで、未来へのイメージを膨らませることも大切です。AIやロボットなどの台頭はめざましく、日々テクノロジーの発展は続いています。今後、どのような変革が訪れるかを理解し、対策につなげましょう。ここでは、2つの民間の資料を元に、2030年の未来予測イメージを紹介します。2030年に実現している可能性としては、以下のようなことがあります。
- AI(人口知能)やロボットの進化による職業の変容
- 小売の無人化
- バスの小型化・タクシー化
- 消滅可能性がある都市で、規格破壊による機能集約
- デジタル通貨が本格普及
AIやロボットが人間が行っている仕事を代替し、職業が変容すると推測されています。少し古い資料ですが、野村総合研究所による調査では、日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能と発表されています。
リアル店舗の無人化により、人手不足を補うことにもなりそうです。バスを利用する人が少なくなるため、バスを小型化し、タクシーのようにスマートフォンで呼ぶようなビジネスに変革する可能性もあるでしょう。地方では人がいなくても成立するインフラが必要となり、無人運転バスが機能を集約した設備に人を運ぶことが予測されています。
デジタル法定通貨も導入される可能性が高いです。カンボジアでは世界に先駆けてデジタル通貨が導入されましたが、日銀でも「中央銀行デジタル通貨」(CBDC)の実証実験を2021年4月にスタートさせています。なお、デジタル通貨については、2023年11月に日本銀行でも以下のような方針が示されており、2030年までには実現している可能性が高いでしょう。
・情報通信技術の急速な進歩を背景に、内外の様々な領域でデジタル化が進んでいる。技術革新のスピードの速さなどを踏まえると、今後、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に対する社会のニーズが急激に高まる可能性もある。
・現時点でCBDCを発行する計画はないが、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくことが重要。
出典:日本銀行|中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み
参考:ある21世紀未来企業プロジェクト|2030年の社会・企業の未来シナリオ
参考:野村総合研究所|2030年の日本の産業構造、社会的課題と情報通信ビジネスモデル動向
2040年の未来予測イメージ
出典:文部科学相|あなたが創る未来のデザイン
2040年の未来予想イメージについても、膨らませていきましょう。社会の未来像と科学技術の未来像とを結びつける助けになります。ここでは、文部科学省「あなたが創る未来のデザイン」を元に、未来予測イメージを紹介します。5,500人の科学技術者が予測した未来には、以下のような技術に基づいた暮らしがあるようです。なお、多くの技術が2030年ごろまでに実現し2040年までに社会的なサービスとして普及すると予測されています。
- 遠隔治療
- 自動運転システム
- 即時自動翻訳
- 臓器の3Dプリント
- 職人技をマスターするAI
- 農業助手ロボット
- 教育のデジタル化
- どこでも自動運転
技術の進歩で成り立つ2040年は、文部科学省では以下のような言葉で表現されています。
「人間らしさを再考し、多様性を認め共生する社会」
「リアルとバーチャルの調和が進んだ柔軟な社会」
「人間機能と維持回復とデジタルアシスタントの融合による個性が拡張した社会」
「カスタマイズと全体最適化が共存し、自分らしく生き続けられる社会」
未来予測イメージはすべて実現することはないかもしれません。しかし、文部科学省によると、1971年〜1992年における「30年以内の実現が期待される科学技術に関する専門家アンケート(デルファイ調査)」によりトピック化されたもののうち、7割は実現しているそうです。2040年に向けて、急速な変化に対応できる柔軟性を持つことの重要性が伺えます。
参考:文部科学省|令和2年化学技術白書「第2章 2040年の未来予測-科学技術が広げる未来社会-」
2030年問題や2040年問題の社会影響
ここからは、2030年問題と2040年問題が与える社会影響について解説します。
社会保障制度の維持が次第に困難になる
進む高齢化と減少する生産労働人口により、社会保障制度の持続可能性が問われます。総務省のデータでは、65歳以上を15〜64歳で支える割合について、2030年は1.9人ですが、2040年は1.5人と減少します。社会保障給付費は年々増える見込みにもかかわらず、税収が減るのです。政府は「2040年を展望した社会保障・働き方改革について」において、2040年を見据えた対策の必要性を強調しています。しかし、現実として社会保障制度が持続可能かどうかはわからず、少なくとも年金給付の引き下げなど基準の見直しが見込まれます。
参考:厚生労働省|2040年を展望した社会保障・働き方改革について
参考:総務省|令和4年 情報通信白書による現状報告の概要
自治体が消滅する
国土交通政策研究所による推計では、2040年には全国896の市区町村が消滅する可能性がある都市(消滅可能性都市)と認定されており、そのうち523市区町村は人口が1万人に足りず、消滅する可能性が高いとされています。自治体が縮小することの影響には、以下が挙げられます。
- 生活関連サービス(小売・飲食・医療機関など)が受けられなくなる
- 税収減で行政サービスの質が低下する
- 交通が不便になる
- 空き家・空き店舗・工場跡地が増加する
- 地域のコミュニティが機能低下する
総じて、豊かな暮らしを支える基盤が少なくなることがわかります。人口減少による自治体の消滅は、危機感をもって考えなけばならない課題です。
出典:国土交通政策研究所|「地域消滅時代」を見据えた今後の国土交通戦略のあり方について
参考:国土交通省|平成26年度国土交通白書「第1章第2節 人口減少が地方のまち・生活に与える影響」
企業がすべき2030年問題や2040年問題への対策
2030年問題や2040年問題に対して、どのような解決策が企業に求められるのでしょうか。4つの対策を解説します。
1.幅広い人材の活用
2030年から2040年にかけて、生産労働人口が減少する見込みです。企業は労働力となりえる人材を積極的に活用することになるでしょう。シニア人材・女性・外国人などがその対象です。65歳以上であっても、生産活動を担う体力を備えている場合も多く、市場が広がる介護業界での活躍も期待できます。ライフイベントを機に社会と隔離されている女性も、貴重な労働力です。そのためには、育児や介護など家庭の事情と両立しながら働ける職場環境作りが必要になります。
外国人については、国立社会保障・人口問題研究所による令和5年「日本の将来推計人口」の2070年人口ピラミッド上において「外国人」として表現されているのが象徴的です。幅広い人材として、外国人の採用にも積極的に取り組まなければなりません。
出典:国立社会保障・人口問題研究所|令和5年「日本の将来推計人口」
2.働き方改革
多様な人材が自由度を持って働ける企業になることが大切です。2030年・2040年には、労働力の深刻な不足が常習化し、正規従業員や非正規従業員を自由に選択する人が増える可能性もあります。デジタル機器があたりまえにある2000年以降に成人する世代は、そうでない世代とは考え方が異なり、SNSの活用が得意で、帰属意識が高いといった特徴があるようです。多くの企業では、新たな価値観を持つ世代と共生し、AIやロボットの導入を実現しつつ、時代の変革期を乗り越えることになります。一方、テクノロジーが仕事を代替し、代替できない仕事かどうかで格差が広がることも示唆されています。
今後起きる働き方の変化に向けて、企業が今できることは、現在の従業員がより働きやすい職場を目指すこと、つまり、未来への土台作りです。末長く多様な働き方を容認できる仕組み、たとえばリモートワークや時短勤務などはぜひ整備しておきましょう。
企業ブランディングや従業員満足度を高める取り組みならば、福利厚生の導入があります。たとえば、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」です。「チケットレストラン」は、従業員のランチ代を半額支給するという食の福利厚生サービスです。どのような未来が訪れ、働き方が多様化したとしても、食事は欠かせません。デジタル時代にもマッチする「チケットレストラン」は、末長く活躍したい企業を食事サービスによりサポートできます。
3.デジタル化
2030年や2040年の未来予測イメージを知ると、業務のデジタル化が大前提であることがわかります。紙ベースの事務や印鑑での署名捺印などは過去の産物となるでしょう。各種のバラバラに管理されている企業の蓄積データは、デジタル化を阻害するものになります。デジタル化は単に利便性が増すといった理由だけでなく、人材不足を補うという重要な役割を担います。さらに、変革の時期に訪れる新たなビジネスチャンスを逃さないためにも、必要な取り組みです。
4.デジタル人材の育成
デジタル化を実現するためには、デジタル化を牽引するデジタル人材が必要となります。今、企業が取り組むべきは、デジタル人材の育成です。現在の業務に知見のある従業員が、リスキリングなどによりデジタル人材になるよう促し、次世代をつなぐ橋となって活躍してもらいましょう。政府もデジタル化への危機感を持ち、デジタル人材育成のためのリスキリングを推奨し、各種助成金を設けているので、賢く活用してください。
参考記事:【社労士監修】リスキリングの補助金・助成金の種類と成功のポイント
少子高齢化でも国力を上げられる仕組み作りを整備
2030年問題や2040年問題では、高まる高齢化率と少子化、そして生産年齢人口の減少が進むことが焦点です。国をあげて経済を活性化しなければ、社会保障制度の存続が危ぶまれています。企業ができることは、将来必ず生じる人手不足を解消するための取り組みです。シニア・女性・外国人などが活躍しやすい企業を目指して、働きやすい仕組みを整備し、しっかりと未来への土台を固めましょう。なかでも食事補助は現在も未来も変わらず提供できる魅力的な福利厚生です。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」で、従業員のやる気を高め、企業の生き残りと国力の向上につなげませんか。