メンタルヘルスを良好に保つ上で、間食は無視できない大切な要素です。うつ病をはじめとするメンタルヘルスの問題が注目される昨今だからこそ、メンタルヘルスに間食が与える影響や、会社が行える食事を通じた従業員のサポートについて理解を深めていきましょう。
うつ病と食事の関連性について
うつ病は、無気力・集中力の低下・睡眠障害・食欲不振・体重の増減といったさまざまな心身の症状を伴う気分障害です。
その罹患率は高く、日本人の100人に6人が、人生の中で1度は経験するともいわれています。
そんなうつ病について、近年、食事との関連性が広く指摘されるようになりました。海外を中心に行われている研究の中で、うつ病患者の多くに特定の栄養素の不足が見られることが明らかになってきたからです。
あくまでも発展途上の研究ではありますが、この説に基づけば、不足している栄養素をうまく補うことでメンタルヘルスのサポートが可能になります。
なお摂取する栄養素にこだわることは、メンタルヘルスの向上だけでなく、生活習慣病の予防にも役立ちます。わたしたち現代人にとって、食生活の見直しは無視できない重要なテーマといえるでしょう。
不足するとメンタルヘルスに悪影響を与える栄養素
諸説ありますが、うつ病と関連が深いといわれている栄養素には以下のようなものがあります。
これらの栄養素を意識して取ることで、うつ病の発症リスクを抑える効果が期待できるかもしれません。
メンタルヘルスと間食についてのポイント4つ
メンタルヘルスと食事との関係を考える上で、特に注目したいのが間食です。
間食をうまく取り入れられれば、不足しがちな栄養素を簡単に補給できます。一方で取り方を間違えた場合、心身へ悪影響を及ぼす可能性が否定できません。
以下、間食をメンタルヘルスの向上に役立てる上で意識したいポイントを4つ紹介します。
1.間食によるカロリー摂取とカロリー過多が、心身に影響を与える場合もあり得る
厚生労働省によると、人の1日当たりの推定エネルギー必要量は以下のようになっています。※身体活動レベルが普通の場合
仮に35歳の男女が間食でショートケーキ(約350kcal)を食べたとすると、1日当たりの推定エネルギー必要量のうち、男性で約13%・女性は実に17%以上を1度の間食で摂取してしまう計算となります。
さらにいうと、カロリーが高い食べ物は、その多くが大量の糖質と脂質とでできています。間食を足りない栄養素を補給する手段と考えるなら、残念ながら逆効果となってしまうでしょう。
心身へ与える影響を踏まえても、体内の栄養バランスが崩れたり、カロリー過多になったりする可能性がある間食は控える必要がありそうです。
2.カロリー消費が追いつかないと、心身に影響がある場合もあり得る
たとえ間食でカロリー過多になってしまったとしても、1日トータルでの摂取カロリーがコントロールできていれば問題はありません。
しかし、コントロールできない場合には注意が必要です。
高カロリー・高糖質・高脂質の間食は、肥満・糖尿病・高脂血症といった生活習慣病のリスクを高めます。
体に不調が起きれば、仕事のパフォーマンスもおのずと低下します。ただでさえ栄養バランスが崩れているところに、仕事のパフォーマンス低下による自信喪失や自己嫌悪が加われば、メンタルヘルスに悪影響を与える可能性も高まるでしょう。
心身の健康を考えるなら、間食の取り方にはくれぐれも慎重になる必要がありそうです。
3.特定の間食をやめられない場合、栄養が不足している可能性もあり得る
摂取カロリーそのものは十分にもかかわらず、必要な栄養が摂取できていない状態を『新型栄養失調』といいます。間食をやめられない原因が、特定の食べ物に対する強い欲求である場合、この新型栄養失調に陥っている可能性について考えてみる必要があるでしょう。
たとえば甘いものをやめられない場合、三大栄養素として知られる『炭水化物(脂質)』『タンパク質』『脂質』が不足している可能性が考えられます。
三大栄養素は、体を作り動かすために必要不可欠なエネルギー源です。甘いものへの強い欲求は、エネルギー供給が不十分なことによる体からのSOSサインといってよいでしょう。
同様に、ジャンクフードがやめられない場合にはカリウム不足が、しょっぱいものがやめられない場合にはミネラル不足が疑われます。
「どうしても○○がやめられない」と感じたら、特に不足している栄養素がないかどうかを振り返ってみる必要があるでしょう。
4.間食を通して心を安定させる人もいる
カロリー過多への抵抗から、間食についてネガティブな印象を持つ人もいます。
しかし、間食は必ずしも悪いことではありません。なぜなら、心を安定させるための手段として間食を求めるケースもあるからです。
このタイプの人にとって、間食は一種のストレス発散行為です。「カロリーが気になるから」と無理に間食をやめてしまえば、ストレスは解消されません。蓄積したストレスは、メンタルヘルスを悪化させる大きな原因となるでしょう。
「甘いものを食べると気持ちが落ち着く」「間食の時間が楽しみ」という場合、無理に間食を控えるのはかえって逆効果です。カロリーや栄養素に注意しつつ、メンタルヘルスを良好に保つ一つの手段として間食を楽しみましょう。
間食をすべき人、前向きに検討していい人
必要な栄養素を3度の食事から十分に取れている人にとって、間食は必要不可欠なものではありません。一方で、中には積極的に間食を食べたほうがいい人もいます。
間食を食べたほうがいい人と、その主な理由を確認していきましょう。
幼児や子ども
日々成長し、活発に活動する幼児や子供の体は、常に多くの栄養を必要としています。
一方、幼児の胃袋の大きさは大人の1/3程度にすぎず、消化機能も未熟です。また、1度に食べられる量も決して多くありません。3度の食事だけで必要な栄養を十分に摂取するのは難しいのが現実です。
間食は、そんな幼児や子どもにとって絶好の栄養摂取源です。
エネルギー補給にぴったりな『おにぎり』『バナナ』・丈夫な骨や歯を作るのを助ける『牛乳』『チーズ』・ビタミンやミネラル補給ができる『果物』『野菜』などをじょうずに組み合わせることで、幼児や子どもに必要な栄養を効率的に補うことができるでしょう。
食事に偏りがあり、間食を通して栄養を補助したほうがいい人
生活サイクルなどが原因で食生活に偏りがある人は、摂取している栄養にもおのずと偏りが生まれます。
「残業続きで夕食はいつもコンビニ弁当」といったケースや、「職場の立地が悪く、昼食は決まったお店でしか食べられない」といったケースはこの典型といえるでしょう。
心身の健康維持のためにも、自分に不足している栄養素を把握し、間食を通じて意識的に補給するのがおすすめです。
メンタルヘルスのために、間食しすぎないほうがいいもの5選
メンタルヘルスの維持に効果的な間食ですが、中には取りすぎに注意が必要な食材もあります。以下、その理由も合わせて確認していきましょう。
1.糖分の多いもの
エネルギー源として重要な役割を担う糖質ですが、必要以上に取りすぎてしまうと脂肪として体内に蓄積されます。
また、急激な血糖値の上昇はインスリンの大量分泌を招き、『血糖値スパイク』と呼ばれる血糖値の乱高下を引き起こします。
血糖値スパイクは、眠気やだるさをはじめとするうつ症状の原因の1つです。糖分の多いものの取りすぎは、フィジカル面・メンタル面の双方に大きな悪影響を及ぼすことになるでしょう。
2.脂肪分の多いもの
脂質は三大栄養素の中でも最もエネルギーの大きい栄養素で、取りすぎは肥満の大きな原因になります。また、肥満は細胞の慢性的な炎症を引き起こしますが、この慢性炎症はうつ病の発生因子でもあります。
なお、脂質は食事から取る以外に肝臓でも作られる栄養素です。もともと過剰摂取になりやすい栄養素である点を心に留めておきましょう。
3.エンプティカロリーフード
『エンプティカロリーフード』とは、カロリーこそ高いものの、体に必要な栄養素に乏しい食べ物で代表的なものは以下の通りです。
・ファストフード
・カップ麺
・スナック菓子
・清涼飲料水
・アルコール飲料
糖質や脂質は多い一方、ビタミン・ミネラルなどはほとんど含みません。
エンプティカロリーフードを日常的に摂取した場合、メンタルヘルスを良好に保つために必要な栄養素が不足するため心身に不調を感じやすくなるでしょう。
4.塩分の多いもの
塩分が多い食べ物は、過剰摂取をしたからといって直接メンタルヘルスに影響を及ぼすものではありません。
しかし塩分は、むくみやすさや食欲亢進(食欲が増すこと)を引き起こし、体重増加の原因になります。また、脳卒中・心筋梗塞・心不全といった深刻な疾患のリスクを高めます。
体の不調と心の不調は密接に関わっていることから、やはり塩分の過剰摂取は控えるようにしましょう。
5.自身の食生活で不足している栄養を補給するためのサポートにならないもの
間食は、不足しているカロリーや栄養素を補う目的で取るものです。通常の食事で十分に補給できている栄養素については、間食で取る必要がありません。
仮に、普段から麺類を好んで食べている人が、間食にアイスクリームを食べたなら、明らかな糖質の過剰摂取となってしまいます。間食をするのなら、自身の食生活で不足している栄養素を含む食材を意識して選ぶ必要があるでしょう。
メンタルヘルスのために、間食におすすめの食材5選
間食で取りすぎるのに不向きな食材がある一方、間食に適した食材もあります。メンタルヘルスを考える上で間食におすすめな食材を5つ紹介します。
1.自身に不足している栄養
間食におすすめな食材として、まず挙げられるのは自身に不足している栄養です。間食を通じて栄養バランスを整えられれば、良好なメンタルヘルスを保つ上でも大いに役立ちます。
可能であれば、食事や間食をノートやスマホに記録しておくのがおすすめです。間食に取るべき栄養を把握できるほか、食生活を見直す大切なヒントになるでしょう。
2.食物繊維を補えるもの
食物繊維は、日常の食事で不足しがちな成分の1つで、排便を促して腸内環境を整えたり、血糖値の上昇を抑制したりとさまざまな特性を持っています。
便秘で悩んでいる人や、美肌を目指す人は特に意識して取りたい成分といえるでしょう。
・食物繊維が多く含まれる食べ物:ドライフルーツ・干し芋・酢昆布・こんにゃくゼリーなど
3.タンパク質を補えるもの
タンパク質は、わたしたちの体そのものを作る栄養素です。不足してしまうと、肌や髪の乾燥・骨密度の低下・集中力の低下といった症状を引き起こします。
不足に気付きにくい栄誉素でもあることから、間食でじょうずに摂取するのがおすすめです。
・タンパク質が多く含まれる食べ物:ゆで卵・ヨーグルト・チーズ・サラダチキンなど
4.質の高い脂質を補えるもの
脂質は日常の中で比較的摂取しやすい栄養素です。しかしながら、『オメガ3系脂肪酸』や『中鎖脂肪酸』のような良質な脂質は不足しがちな傾向にあります。
過剰になりがちな栄養素だからこそ、質にこだわって摂取する必要があるでしょう。
質の高い脂質が多く含まれる食べ物:魚介類・ココナッツ・パーム・牛乳など
5.血糖値を急激にあげすぎないもの
前述のとおり、血糖値の急激な上昇は血糖値スパイクを引き起こす原因になります。血糖値スパイクは眠気やだるさの原因となることから、仕事のパフォーマンスにも影響するでしょう。
糖質が多く含まれる食材を避けたり、食物繊維やタンパク質を先に取ったりすることで、血糖値の急激な上昇を抑えることが可能です。
社員や従業員のメンタルヘルスのために、会社ができること3つ
従業員のメンタルヘルスは、会社の業績や環境を大きく左右する重要な要素です。最適な職場環境を整える上で、会社が行える取り組みを3つ紹介します。
1.法定福利を提供する
従業員のメンタルヘルスのために、会社が行える取り組みとしてまず挙げられるのが『法定福利厚生』です。
どんなに健康な人であったとしても、心身の病気や怪我に一切見舞われることなく生涯を過ごすことはできません。思いがけない出来事が起きたとき、会社が健康保険や労災保険でサポートできれば、従業員の負担は最低限で済みます。
また、2015年12月に施行された改正労働安全法により、常時50人以上の労働者がいる事業所は年1回のストレスチェックが義務化されました(ストレスチェック制度)。
万が一の事態を不安に思うことなく仕事に従事できる環境が整えられていることは、従業員のメンタル面の安定にも大きく寄与するでしょう。
2.法定外福利で健康維持に関連する福利厚生を提供する
『法定外福利厚生』は、会社独自で設定する福利厚生であるぶん、内容の自由度が高い傾向にあります。
メンタルヘルスの維持管理にまつわる施策も会社によってさまざまですが、主な施策としては以下のようなものが挙げられます。
・特別休暇
・人間ドック
・休暇・休職制度
・メンタルヘルスにまつわる研修
・介護・育児サポート
・レジャー施設・宿泊施設の割引
法定外福利厚生が充実した会社は、すなわち社員や従業員にとって働きやすい会社となります。心身ともに健康を保ち、生き生きと業務に邁進できるでしょう。
3.食事をサポートする
社員や従業員のメンタルヘルスを考えるなら、ぜひ取り組みたいのが間食を含む食事のサポートです。
食事がメンタルヘルスに与える影響は非常に大きく、食生活の大きな偏りはうつ病をはじめとするメンタルの不調の原因ともなります。
手軽に質のよい食事を取れる環境を用意することは、従業員のメンタルヘルスサポートとして絶好の手段といえます。
また、日々忙しく働く社会人にとって、食事の時間は大切なリラックスタイムでもあり、食事の充実は、仕事に対する意欲の向上にもつながるでしょう。
誰もが気持ちよく最大限のパフォーマンスを発揮できる職場環境を作るためにも、ぜひ福利厚生の一環として従業員の食事サポートを実施してみてはいかがでしょうか。
日本では「チケットレストラン」の知名度が高く、30年以上の実績があるため以前から導入を続けている企業が多いことでも知られています。全国の飲食店やコンビニなど7万店以上で使える電子カードでの食費補助となるため、地域や職種での公平性が高く評価されています。
終わりに
バランスのよい食事を取り、間食を通じて不足した栄養素を補給することは、心身を健康に保つための第一歩です。
従業員の食事や間食に対する意識を高め、福利厚生を通じて食事のサポートをすることにより、働きやすく成果が挙がりやすい理想的な職場環境を整えられるでしょう。
参考
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_depressive.html
https://www.neurochemistry.jp/web/57th/contents/S29.html
https://m-eiyou.com/nutrients/
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
https://cp.glico.com/bifix/article/2018/01/31/post_160.html
https://medical.jiji.com/topics/2219
https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/nutrition/
http://kurotaninaika-clinic.or.jp/index.php?id=58
https://www.mannanlife.co.jp/learns/fiber/
https://shop.nisshin.oilliogroup.com/shop/pages/column_191205_02.aspx
https://note.com/okinawarinzai/n/n26c6d1184d7f
https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/blood_sugar_spike/
https://www.nissay-biz-site.com/article/t4264bc3