通所してきた利用者に、医師の管理のもと通所リハビリ計画にしたがって理学療法や作業療法などのリハビリテーションを提供する通所リハビリテーションは、別名デイケアとも呼ばれる介護サービスです。2024年の介護報酬改定では、通所リハビリテーションもほかの介護サービス同様、基本報酬を中心にさまざまな改定があります。本記事では、その改定内容を詳しく解説します。
2024年度介護報酬改定「通所リハビリテーション」施行日
通所リハビリテーションを含む4つの介護サービス(訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導)については、従来の4月1日ではなく、2024年6月1日に改定が施行されます。理由は、医療分野の診療報酬改定がシステムベンダーなどの関係で6月1日に実施となるためです。医療とも深く関わるこれらのサービスで、改定時期を合わせています。
通所リハビリテーション基本報酬の改定内容
通所リハビリテーション事業所の規模の違いや人員体制の違いに応じて、基本報酬を適正に設定し直します。通所リハビリテーション利用者へのサービス確保と事業者の経営実態の両立を図る意図もあると考えられます。
1.事業所規模別の基本報酬設定
通所リハビリの基本報酬を、大規模事業所(大規模型)と通常規模事業所(通常規模型)の2つに分けて設定することになりました。なお、3段階から2段階へと見直されます。大規模型と小規模型では、人件費・設備投資・運営コストにかなりの開きがあります。規模の違いに応じて適正な報酬設定を行い、公平性を確保するのが狙いです。
2.報酬水準の全体的な見直し
事業所規模別の報酬設定に加え、報酬水準の全体的な見直しも行われました。介護人材の確保が課題となっている中で、事業所の経営実態をふまえた適正水準への是正が図られました。
3.一部の大規模型事業所は通常規模型と同等評価
一方で、以下の2つの要件を満たす大規模型の事業所については、通常規模型の事業所と同様の評価がなされます。
- リハビリテーションマネジメント加算の算定率が利用者全体で80%を超えている
- リハビリ専門職の配置が10人に1人以上であること
こうした手厚い人員配置を評価する形となり、全体として報酬の適正化が図られています。
通所リハビリテーション基本報酬の改定額
事業所規模ごとに改定額を解説します。
通所リハビリテーション(通常規模型)(7時間以上8時間未満の場合)
通常規模型(7時間以上8時間未満の場合)の報酬は+5〜10単位と微増です。
区分 | 現行単位 | 改定後単位 | 増減 |
要介護1 | 757単位 | 762単位 | +5単位 |
要介護2 | 897単位 | 903単位 | +6単位 |
要介護3 | 1,039単位 | 1,046単位 | +7単位 |
要介護4 | 1,206単位 | 1,215単位 | +9単位 |
要介護5 | 1,369単位 | 1,379単位 | +10単位 |
通所リハビリテーション(大規模型)(7時間以上8時間未満の場合)
大規模型は減額される場合が多くなっていますが、一定の条件を満たせば通常規模型と同等の評価を受けられるようになりました。
区分 | 現行単位
旧大規模(Ⅰ) |
改定後単位 | 増減 |
要介護1 | 737単位(Ⅰ)
708単位(Ⅱ) |
714単位 | -20単位(Ⅰ)
+6単位(Ⅱ) |
要介護2 | 868単位(Ⅰ)
841単位(Ⅱ) |
847単位 | -21単位(Ⅰ)
+6単位(Ⅱ) |
要介護3 | 1,006単位(Ⅰ)
973単位(Ⅱ) |
983単位 | -23単位(Ⅰ)
+10単位(Ⅱ) |
要介護4 | 1,166単位(Ⅰ)
1,129単位(Ⅱ) |
1,140単位 | -26単位(Ⅰ)
+11単位(Ⅱ) |
要介護5 | 1,325単位(Ⅰ)
1,282単位(Ⅱ) |
1,300単位 | -25単位(Ⅰ)
+18単位(Ⅱ) |
介護予防通所リハビリテーション
要支援者を対象とする通所リハビリテーションでは、基本報酬が大きく増加します。
区分 | 現行単位 | 改定後単位 | 増減 |
要支援1 | 2,053単位/月 | 2,268単位/月 | +215単位 |
要支援2 | 3,999単位/月 | 4,228単位/月 | +229単位 |
2024年度介護報酬改定「通所リハビリテーション」の主な変更点
続いて、基本報酬以外の変更点の主な改定内容を確認しましょう。なお、記事は厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」を参照して作成しています。
1.豪雪地帯等における所要時間の取扱い明確化
豪雪地帯などで急な悪天候により、通所リハビリテーション事業所への移動時間が通常より大幅に長くなることがあります。こうした場合の移動に要する時間の取扱いを明確化し、報酬請求上適切に評価できるようにします。移動時間が長くなれば、サービス提供時間が短くなる可能性がありますが、あらかじめ計画した単位数での算定が可能です。
2.機能訓練事業所での共生型サービス・基準該当サービスの提供拡充
リハビリテーションや機能訓練を提供する通所リハビリテーション事業所において、障害福祉サービスの共生型サービスや基準該当サービスの提供ができるようになります。
3.医療機関のリハビリテーション計画書受け取りの義務化
利用者がリハビリテーションを受けるに当たり、医療機関から提供されるリハビリテーションの実施計画書などの受け取りと内容の把握を通所リハビリテーション事業所に対して義務化します。これまでは任意となっていましたが、医療と介護の連携をより強化し、切れ目のないサービスを実現するために義務化されます。
4.退院後早期リハビリテーション実施に向けた情報連携推進
利用者が医療機関から退院した後、速やかに介護サービスを受けられるようにするため、病院と介護事業所の間での情報連携を一層推進する加算を新設します。利用者の状況や必要なケアについて、医療と介護の両側で適切に情報共有できるようにし、在宅生活への移行をスムーズにします。
区分 | 現行 | 改定後 |
退院時共同指導加算 | なし | 600単位/回 |
5.事業継続計画未策定事業所への減算導入
災害発生時などの緊急事態に備えた事業継続計画(BCP)を策定していない場合、以下のとおり一定割合単位数が減算されます。BCPがないと、有事の際にサービス提供を続けられずに利用者に大きな影響が出るリスクがあるためです。
区分 | 現行 | 改定後 |
事業継続計画未実施減算 | なし | 所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算 |
6.高齢者虐待防止の推進
高齢者への虐待防止のため、通所リハビリ事業所における取り組みをより一層強化します。職員に対する虐待防止研修などを徹底し、早期発見や再発防止、被害者支援などの対策を充実させます。ただし、その性質から3年間の経過措置期間が設けられました。
区分 | 現行 | 改定後 |
高齢者虐待防止措置未実施減算 | なし | 所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算 |
7.身体拘束適正化の推進
通所リハビリテーションにおける利用者への身体拘束は、やむを得ない場合を除いて原則禁止されています。身体拘束をできる限り回避するとともに、拘束が行われる場合は記録が義務付けられます。
8.リハビリテーション・口腔・栄養の一体的取り組みの推進
リハビリテーションとともに、口腔ケアや栄養管理も一体的に実施し、利用者の摂食嚥下能力や栄養状態を総合的に改善することに取り組みます。「リハビリテーションマネジメント加算Bイ」と「同加算Bロ」は廃止され、改定後の「リハビリテーションマネジメント加算(イ)」「リハビリテーションマネジメント加算(ロ)」と同要件を設定します。加算Bは、医師が利用者又はその家族に説明した場合の270単位加算として要件が組み替えられました。
出典:厚生労働省|令和6年度介護報酬改定における改定事項について
9.リハビリテーション・個別機能訓練・口腔・栄養の一体的計画書見直し
上記8の取り組みに合わせ、利用者一人ひとりの介護計画書の記載項目を見直します。リハビリテーション・機能訓練・口腔ケア・栄養管理に関する内容を一体的に盛り込めるよう見直します。
10.通所リハビリテーションのみなし指定の見直し
介護保険法第 72 条第1項による通所リハビリテーション事業所及び訪問リハビリテーション事業所に係るみなし指定を受けている介護老人保健施設と介護医療院については、事業所への医師の配置基準について、施設への医師の配置基準を満たせば通所リハビリテーションの医師の配置基準を満たすとみなされるようになります。
11.介護予防でのリハビリテーション質向上の評価 (介護予防分野のみ)
介護予防を目的とした通所型サービスにおいて、リハビリテーションの質を高める優れた取り組みを行っている事業所を新たに評価する加算が新設されました。利用開始から12か月経過した後の減算を行わない基準が追加されます。新設要件を満たした場合、減算がありませんが、満たさなかった場合は以下のとおりの減算です。
区分 | 現行 | 改定後 |
要支援1 | 20単位減算 | 120単位減算 |
要支援2 | 40単位減算 | 240単位減算 |
12.ケアプラン作成時の「主治の医師等」の明確化
ケアプランを作成する際に、入院中の医療機関の医師から指示・助言を受けることが望ましいという内容が追加されました。
13.入浴介助加算(Ⅱ)の見直し
入浴の介助を行った場合に算定できる「入浴介助加算(Ⅱ)」について、算定要件を見直します。算定要件である「医師等による、利用者宅浴室の環境評価・助言」について、医師の代わりに介護職員が訪問し、医師等の指示の下、ICT機器を活用して状況把握を行い、医師等が評価・助言する場合も算定ができるようになります。要件における変更点を算定要件等に明記しました。
14.科学的介護推進体制加算の見直し
ICTやセンサー等を活用してデータに基づく介護サービスの質の確保や業務の効率化に取り組む事業所に対する「科学的介護推進体制加算」について、加算要件を見直します。LIFEへのデータ提出頻度について、少なくとも「6月に1回」から「3月に1回」に増加しました。ほかのLIFE関連加算とデータ提出時期を揃えるなど、入力負荷軽減のための見直しも行われます。
15.処遇改善加算の一本化
介護職員の処遇改善を目的に、これまで複数の異なる加算(介護職員処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算)が設けられていましたが、今回一本化されます。統一的な「職員等処遇改善加算」が新設され、事務の簡素化とともに算定へのハードルが下がり、処遇改善の推進が図られる見込みです。
16.テレワークの取扱い
今回の改定でテレワークに関する取扱いが明確化され、介護職でもテレワークが可能な業務とそうでない業務の範囲が示されます。
17.外国人介護人材の取扱い見直し
一定の日本語能力と専門知識を有する外国人介護人材であれば、人員基準の要件を満たすものとして職員等とみなされるようになります。人材確保の観点からの改正です。
18.運動器機能向上加算の基本報酬化(介護予防分野のみ)
介護予防の通所リハビリテーションにおいて、従来「運動器機能向上加算」として算定されていた費用が、基本報酬に包括化されます。つまり運動器リハビリは標準的なサービスとして位置付けられ、全事業所で必須の取り組みとなります。選択的サービス複数実施加算でも見直しが行われ「選択的サービス複数実施加算(Ⅰ)」は別の加算の評価に組み込まれ「選択的サービス複数実施加算(Ⅱ)」は新設される一体的サービス提供加算として算定できるようになります。
出典:厚生労働省|令和6年度介護報酬改定における改定事項について
19.特別地域加算等の対象地域明確化
介護人材の確保が困難な地域で実施される「特別地域加算」や「中山間地域加算」について、対象となる地域を制度の趣旨に沿って明確に定義します。加算の適用範囲をわかりやすくすることで、公平性を確保でき事務の簡素化にもつながるためです。
20.送迎に係る取扱い明確化
通所系サービスにおいて、利用者の自宅と事業所間の送迎を行う際の適切な取扱いを明確化します。具体的には、各事業者において責任の所在を明確にすることで、近隣の親戚の家への送迎と、ほかの介護事業所や障害福祉サービス利用者との同乗が可能になります。
出典:厚生労働省|令和6年度介護報酬改定における改定事項について
福利厚生で介護人材の確保を推進
介護の現場で質の高いサービスを提供する上で非常に重要となるのが従業員の健康です。なかでも、食事はQOL(生活の質)を高めるという観点で非常に重要であることがわかっています。厚生労働省の生活習慣病予防のための健康情報サイトでは、食べることは精神的な健康感にもプラスと記されています。
従業員の食事の質を高める取り組みに、食事補助の福利厚生が挙げられます。食事補助とは、従業員に対し、毎日の食事代を一部補助することで生活の負担を軽減する制度です。株式会社ビズヒッツが2021年に実施した「あったら嬉しい福利厚生に対する意識調査」によると、食事補助は第4位となっており、従業員からのニーズが高い福利厚生でもあります。
介護の仕事は肉体的・精神的にストレスがかかり、適切な栄養摂取が欠かせません。食事補助の導入により、従業員がいつもの食事よりも栄養バランスの取れた食事を手にいれるようになれば、肉体的・精神的な健康増進につながり、ひいてはサービスの質の向上につながります。食事補助を通して、従業員の企業に対する愛着や定着率の向上効果も得られるでしょう。
出典:PR TINES|【あったら嬉しい福利厚生ランキング】男女501人アンケート調査
少ないコストで導入できる「チケットレストラン」
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、少ないコストで運営負荷についてもほとんどかからず導入できる食の福利厚生サービスです。従業員の食事代を企業が半額負担し、従業員のランチ代が半額になります。導入実績は2,000社以上、企業の規模にも従業員の勤務環境にもよらず、サービスを導入し利用できることから、導入後の企業継続率99%、従業員利用率98%、従業員満足度93%の評価を得ています。
介護事業者に「チケットレストラン」が喜ばれる理由
肉体的に負担がある介護サービスでは、体力の充足が不可欠です。「チケットレストラン」の加盟店には、全国のコンビニ、カフェ、3大牛丼チェーンなどがあり、事業所付近のコンビニでおにぎり・お茶・お菓子を購入することも、丼物で空腹を満たすこともできます。
従業員に還元した給与について、所得税が課税されないことも「チケットレストラン」が喜ばれる理由です。介護業界では、報酬が決まっているがゆえに職員の処遇改善が難しいという課題がありますが「チケットレストラン」の場合、その課題をクリアできます。従業員は手元に残る手取りが増加し、企業は福利厚生費を経費として計上でき、税負担を抑えられる双方にメリットがあるサービスです。
介護人材の一層の活躍を事業者が後押し
2024年度の介護報酬改定「通所リハビリテーション」では、介護職員の処遇改善、医療と介護の連携強化、ICTの導入による業務効率化、事業所経営の観点での変更などが盛り込まれています。虐待防止研修など、介護職員に新たに実施する研修も増えており、すべての項目を確実に実施するためには介護職員の協力が不可欠です。介護人材が働きやすく、さらに質の高いサービスが提供できるよう、介護職員のモチベーションを高めることが事業継続のために求められます。
毎日のランチに使える食の福利厚生「チケットレストラン」は、食事で従業員の心と体を満たすサービスです。賃上げの代替にもなるなど、介護職員が喜ぶ福利厚生を導入してみませんか。