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【税理士監修】決算賞与とは?ボーナスとの違いや社会保険料の計算式

【税理士監修】決算賞与とは?ボーナスとの違いや社会保険料の計算式

2023.11.04

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監修者:舘野義和(税理士・1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和税理士事務所)

「決算賞与」とは、どのような賞与なのでしょうか?決算賞与は、全ての企業が支給する賞与ではないため「聞きなじみがない」という声もあります。今回は、決算賞与の支給を検討する企業に向けて「決算賞与とはどのような賞与か」「社会保険料との関係性と計算式」「損金参入するためのポイントと支給時期」などについて、詳しく解説します。決算賞与が支給できない企業に向けた「決算賞与に替わる待遇改善策」も紹介しますので、参考にしてください。

決算賞与とは?

決算賞与は、ほかの賞与に比べて聞きなじみがない方もいるでしょう。決算賞与とは、年次決算の時期に業績に基づいて支給される賞与のことです。決算賞与には、ほかにもいくつかルールがあります。詳しく見ていきましょう。

そもそも賞与とは?

賞与とは、毎月支給される給与とは別の報酬です。賞与の支給額や支給時期は、基本的には企業が自由に設定できます。おおよその額や時期などは、市場の動きと連動するため従業員・企業の双方が予測できる場合が多いです。原則としては、賞与は成果や勤務状況・企業の利益などに応じた取り扱いが認められています。

賞与は、正規雇用されている従業員や職員だけでなく、パートやアルバイトなど非正規雇用者にも支給されることがあります。賞与を「もらえるか」「もらえないか」の支給対象範囲は、企業の裁量に一任されています。

ちなみに、労働基準法関係通達では、賞与の定義は次のように定められています。


賞与とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものを云うこと。定期的に支給され、且その支給額が確定しているものは、名称の如何にかかわらず、これを賞与とはみなさないこと

引用:厚生労働省 労働基準法の施行に関する件

決算賞与とボーナスの違い

賞与は、支給の有無や支給額・支給時期が定められている、定期的な報酬ではありません。しかし、実際には、ボーナスとして多くの企業で夏や冬の年2回、もしくは年1回の賞与支給が一般的です。ボーナスは「通常賞与」とも呼ばれ、人事評価や勤務態度に基づいて支給額が決定します。ボーナスの有無や支給実績は、企業の求人票などにも明記されるケースがほとんどです。

一方、決算賞与は年次決算の結果に基づいて、支給が決定される賞与です。「臨時賞与」と呼ばれることもあります。従業員個人の評価ではなく、企業の経営層の意見や社会情勢なども加味して、支給の有無や支給額・支給時期が決定します。

「決まった時期に絶対支給される」とは、いい切れない一方、おおよそ予測がつく時期に支給されることが多い賞与がボーナス、支給の有無や支給時期は企業によって異なるが、年次決算の結果と経営層の意見などを反映して、支給が決まる賞与を決算賞与と捉えるとよいでしょう。

決算賞与の特徴

2023年10月、日本経済新聞で、昨今のインフレ対策のひとつとして「日本労働組合総連合会は、2024年の春季労使交渉で、基本給を一律に上げるベアと定期昇給を合わせた、5%以上の賃上げを求める方針を固めた」という報道がされました。しかし、5%の賃上げ要求に対し、良い回答ができない業界・企業も出てくると見られています。そこで、注目を集めているのが、決算賞与です。

決算賞与の支給について、検討を始めた企業のために、決算賞与の特徴を深掘りします。

出典:連合、賃上げ目標「5%以上」に 24年春季労使交渉 - 日本経済新聞

決算賞与がもらえる時期

決算の時期は、企業が自由に設定できます。ただし日本では年度末の3月や年末を決算月とする企業が多いです。

決算賞与にかかる経費を企業が損金算入するためには、事業年度の決算内で未払い計上する必要があります。賞与等を損金算入できる条件を法人税法施行令第72条の3を基に見ていきましょう。

  • イ その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。
  • ロ イの通知をした金額を当該通知をした全ての使用人に対し当該通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1月以内に支払つていること。
  • ハ その支給額につきイの通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。

引用:法人税法施行令第72条の3e-GOV法令検

つまり「決算賞与は、支給されることが決定したら従業員に通知を行い、事業年度終了日の翌日から1カ月以内に支給しなければならない」というわけです。3月31日が決算終了日である企業では、翌月4月1日~4月30日が決算賞与の支給時期となります。

決算賞与がもらえる人

決算賞与がある企業では、すべての従業員に支給されるのでしょうか?雇用形態に関わらず、非正規のパート・アルバイト従業員にも「賞与」を受けとる権利はあります。しかし、実際には、支給対象者は社内規程で定められていることが多いようです。企業によって差はあるものの、正規雇用の従業員以外には賞与を支給しない企業は少なくありません。

なお、賞与は、基本的には支給日の前月末日まで在籍していた従業員が支給対象です。決算賞与も決算月の末日まで在籍している従業員のみに支払われるケースが多いです。

決算賞与の平均支給額

決算賞与は、全ての企業が支給している報酬ではないため、平均支給額もはっきりしない傾向です。ただし、余剰利益が生まれた場合に従業員に還元するための賞与なので、何百万円といった額が支給されることは稀だといえます。

従業員の役職や企業の考え方にもよりますが、数万円~数十万が相場です。

決算賞与から引かれる社会保険料と税金

決算賞与は報酬の1種なので、決算賞与には社会保険料や税金がかかります。ほかの報酬と同じように従業員には、決算賞与支給通知に記された決算賞与額から社会保険料と税金を引いた額が振り込まれます。従業員から「決算賞与の手取り額が知りたい」といわれた場合には「決算賞与の額面ー(所得税+社会保険料)=決算賞与の手取り額」という計算式を提示するのがよいでしょう。

決算賞与から引かれる社会保険料や税金について、もう少し詳しく見ていきましょう。

決算賞与から引かれる社会保険料とは?

「給与」「ボーナス」「決算賞与」など種類に関わらず、企業から従業員の報酬には、社会保険料がかかります。社会保険料の内訳は「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」の3種類です。それぞれの計算式は次の通りです。

  • 健康保険料の計算式…1000円未満を切り捨てた額面報酬額×健康保険料率×2分の1
  • 厚生年金保険料の計算式…厚生年金保険料=額面報酬額×厚生年金保険料率(0.183)×2分の1
  • 雇用保険料の計算式…額面報酬額×0.003

なお、決算賞与の社会保険料については、企業も注意が必要です。決算月末日までに支給する決算賞与に対する社会保険料の企業負担分を損金に算入できます。

しかし、決算月末日を超えて決算賞与を支給する場合は決算賞与の社会保険料は損金算入できなくなります。決算賞与に付随した社会保険料を、決算で損金計上するつもりでいるならば、決算賞与は決算期末までに支給しましょう。

決算賞与から引かれる税金とは?

決算賞与から引かれる主な税金は、所得税です。賞与に対する所得税は賞与支給月の前月の給与を基に計算されます。また、2037年までは、復興特別所得税が加算されます。復興特別所得税は、原則として基準所得税額の2.1%です。

決算賞与から引かれる税金は、国税庁が発表している「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和 5 年分)」をもとに「賞与の額面ー(健康保険料+厚生年金保険料+雇用保険料)×賞与に対する源泉徴収税率」という計算式で求められます。

参考:賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和 5 年分)国税庁

決算賞与の支給手順

決算賞与は、正しい手順で支給することにより、決算申告で損金算入できます。決算賞与の支給手順を紹介します。

支給の有無は書面通知が必須

法人税法施行令第72条の3で公布されている「賞与等を損金算入できる条件」では

イ その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。

引用:法人税法施行令第72条の3 国税庁

と明記されています。決算賞与を事業年度の決算で損金算入するには、支給が決まり次第、対象の従業員にメールや文書で支給額や支給時期を通知する必要があります。

また、決算賞与通知書を発行すると同時に「決算賞与の支給と支給額や支給時期を確認した」という日付と署名を受けとるなどしておくと、万が一税務調査が入った場合などに決算賞与を支給した証明になります。

銀行振込で支給する

決算賞与は期日までに支給しなければ、損金算入できません。そのため、支給日や支給額を証明するために、銀行振込で支給するのが通例です。

決算賞与のメリット

決算賞与を支払うことで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?決算賞与が支給されることで期待できる決算賞与のメリットについて紹介します。

企業のイメージアップ

賞与は、毎月支給する給与とは異なり、企業からすると支給義務がある報酬ではありません。さらに、決算賞与はボーナスに比べて、一般的ではありません。決算賞与がある企業は、従業員や求職者・社会に対し「利益を従業員に還元する企業」といったイメージを与える可能性があるでしょう。顧客や取引先などさらに広いステークホルダーに向けたイメージアップと期待できます。

従業員のモチベーション向上

給与や賞与などの報酬は「従業員のモチベーションに影響を与える要素のひとつ」といっても過言ではないでしょう。決算賞与は、業績や経費の削減などにより、企業に余剰利益が生まれたと決算で判断された場合に支給される賞与です。「従業員に還元する」という意義があるので、従業員のモチベーション向上に働きかける効果が期待できます。

経費計上できる

決算賞与は、正しい手順を踏み、支給時期を守ることで決算対象年度に経費計上できます。決算年度内に決算賞与を支給することで、社会保険料等も損金算入できるため「企業の利益を適切に縮小し、法人税を抑える効果がある」といわれています。

決算賞与を支給できない場合の待遇改善

年次決算の結果により「全従業員に決算賞与を支給できるほどの余剰利益はない」と判断した企業は、従業員に利益をどのように還元すればよいのでしょうか?決算賞与を支給できない場合の従業員の待遇改善案を紹介します。

新しい福利厚生の導入

従業員やその家族が利用できる福利厚生は「給与以外の報酬」とも呼ばれ、福利厚生が充実している企業は「従業員を大切にする企業」として社会に認知される傾向です。企業独自の福利厚生なども度々ニュースになっています。

しかし、一般的には自分が勤める企業の福利厚生には、まだまだ改善の余地があると感じている従業員が多いでしょう。株式会社エデンレッドジャパンが、2020年に行った「働き方・待遇に関する意識調査」では「今後、待遇・働き方について自社に望むこと」という質問に対し、全国の中小企業に勤める30~50代の正社員男女600名の回答者が「基本給のアップ」「賞与額のアップ」「手当の充実」といった金銭面の次に「福利厚生の充実」を望んでいるという結果が出ました。

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引用:株式会社エデンレッドジャパン 「働き方・待遇に関する意識調査」

採用活動にも、企業の福利厚生が影響を与えるという調査結果もあります。マイナビキャリアリサ-チLabが発表した「マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査」では、2023年3月卒業見込みの全国の大学3年生・大学院1年生に対し「就活中企業に安定性を感じるポイント」を聞いたところ「福利厚生が充実している」という回答が最も票を集めました。

引用:マイナビキャリアリサーチLab マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査

充実した福利厚生を備える企業は、既存の従業員と求職者、双方から信頼を得られる可能性があるといえます。

福利厚生として、多くの従業員に支持されるのは「食」の福利厚生です。特に、ICカード配布型の食事補助サービス「チケットレストラン」は、従業員に平等に健康的な食事を提供できる、おすすめの福利厚生サービスです。

チケットレストラン」への加盟店は、大手コンビニエンスストアやファストフード・ファミリーレストランなど多岐にわたり、2023年11月現在は25万店舗を超えています。2023年3月より Uber Eats ともサービス連携を開始し、出張や外回り・リモートワークが多い従業員や近隣に外食できる店舗がない施設に勤める従業員でも、都会のオフィスに勤めるのと同等の福利厚生サービスが受けられます。

チケットレストラン」を導入することで、居住地や勤務地・働き方を限定せず、多くの従業員が「企業は自分の健康や生活に配慮してくれている」と実感できるでしょう。従業員のロイヤルティやワークエンゲージメントに働きかける効果が期待できます。資料請求はこちら

出典:株式会社エデンレッドジャパン 「働き方・待遇に関する意識調査」
出典:マイナビキャリアリサーチLab マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査

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企業内設備の充実

オフィスや企業の建物内に社員食堂や、多目的スペースを設けるなど、設備の充実を図る企業も増えています。スペースと設置費用がかかりますが、このような設備を設置した企業では「休憩時間に効率的に身心を休ませられる」「リラックスした雰囲気でミーティングができる」など、従業員から高評価を得ているようです。

自転車で通勤したい従業員のための駐輪スペースや、簡易個室のワーキングスペースを用意する企業も増えています。そこまでの設備投資・スペース確保が難しいケースでは、文具や軽食がそろうオフィスコンビニや従業員向けのフリードリンクスペースなどを設ける企業があります。

関連記事:オフィスコンビニとは何?サービス紹介と選び方やメリットデメリット

レクリエーションやワーケーション

従業員同士のコミュニケーションの活性化や従業員の健康意識を高めるために、スポーツ大会などのレクリエーションを定期的に開催する企業は多いです。近年は、登山やゲーム大会・サウナ会など多様なイベントが企画・実施されています。

また、旅行と仕事の両立を目的としたワーケーションを、チームや部署単位で企画する企業もあります。普段と異なる環境で業務を行いつつも、コミュニケーションやリラックスできる時間をたっぷり確保するなどが、ワーケーションのポイントです。ワーケーションには「新鮮な心持ちで業務にあたれる」「環境が替わってほかの従業員や業務への見方が変わった」などの声が上がっています。

関連記事:ワーケーション=デメリットだけ?企業が知っておきたい情報を解説!
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決算賞与で従業員のモチベーションアップ?支給できない企業は待遇改善を

決算賞与は、企業が年次決算に応じて支給を決定できる賞与です。損金算入するには、一定の条件があり、決算賞与にかかる社会保険料を損金計上するためにも支給時期が定められています。

昨今の物価上昇や賃上げのニュースなどから、自社の従業員にも「賞与を出したい」と考える企業は多いです。しかし、従業員全員に決算賞与を支給することが難しい企業や「支給できても額が低い」という企業もあるでしょう。そうした場合には、従業員全員が利用できる福利厚生や設備・イベントなどの導入がおすすめです。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」も選択肢に、自社ならではの待遇改善を目指しましょう

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