近年、人手不足や物価上昇を背景に、賃上げの必要性が叫ばれています。しかし、賃上げは本当に効果的な戦略なのでしょうか? 本記事では、リクルートワークスによる最新のレポートを基に賃上げの効果と限界を分析し、最低賃金1,500円など賃上げのデメリットについて深掘りします。さらにハイブリッドな賃上げとして注目される「第3の賃上げ」について解説します。
最低賃金1,500円とは?概要を確認
最低賃金1500円とは、全国一律で時給1,500円以上を最低賃金とする構想です。現在、全国労働組合総連合(全労連)などが法改正を求めて運動を展開しています。
出典:全国生協労働組合連合会|低賃金は全国一律制度へ! 8時間働いたら 暮らせる 時給1500円へ
最低賃金1,500円はいつから?
具体的な実施時期は未定ですが、全労連は早期の実現を目指しています。2024年の最低賃金(全国加重平均)が1,055円(昨年比+51円)であることを考えると、一気に1,500円まで引き上げるには相当な時間がかかると予想されます。
出典:厚生労働省|地域別最低賃金の全国一覧
最低賃金1,500円はなぜ?根拠を確認
全労連によると、全国どこでも「人間らしく暮らす」ために必要な「最低生計費」が1,500円以上となっています。また、地域間格差の是正も目的の一つです。
出典:全国生協労働組合連合会|低賃金は全国一律制度へ! 8時間働いたら 暮らせる 時給1500円へ
賃上げの効果・メリット:採用にはプラス効果
次に、賃上げの効果・メリットについての統計を紹介します。最低賃金を上げたとしても、それに見合う効果が得られるかどうか、見ていきましょう。
賃金を上げると応募者が増加
リクルートワークス研究所の「Works Report 2024」によると、賃上げは採用に明確な効果があることが示されています。賃金を1%上げることで、応募者数は3.58%増加し(2019年3月〜2023年6月に調査を実施)、入社者数も約1.55%増加することが分かりました。数字は、賃上げが採用に対して確かな効果を持つことを示します。とくに人手不足に悩む企業にとって、賃上げは有効な採用戦略の一つと言えるでしょう。
出典:リクルートワークス研究所|Works Report 2024
適切な賃金水準であれば賃上げ幅は影響しない
興味深いことに、現在の賃金水準に関わらず、賃上げの効果はほぼ同じであることも明らかになりました。最低賃金+50円未満の範囲でも、150円以上の範囲でも、賃上げの効果は同程度だったためです。これは、各企業が市場の状況に応じて適切な賃金水準を模索した結果と考えられます。つまり、賃上げでは、適切な賃金水準を設定することが重要です。
出典:リクルートワークス研究所|Works Report 2024
賃上げの限界・デメリット:離職防止には効果が薄い
一方で、既存従業員の離職防止に対する賃上げの効果は、期待ほど高くないことが明らかになりました。同レポートによると、離職率に対する賃金弾力性(賃金を1%上げることによる効果の大きさ)は+0.023と、効果が期待できない数値でした。単純に賃金を上げれば離職率が下がるという単純な関係性は見出せません。賃上げで期待する効果が得られないことは、賃上げによるデメリットとも捉えられます。
ただし、この結果を一概に「賃上げは離職防止に効果がない」と結論づけるのは早計です。レポートでは、職場環境によっては賃上げが離職防止に効果を示す場合もあることが分かっています。実際、時間あたりの売上高が高い店舗では賃上げが離職率を抑制し、時間あたりの売上高が低い店舗でも賃上げが有効でした。
賃上げの効果は、職場環境や業務内容によって異なる可能性を示すと考えられます。単純な賃上げだけでなく、職場環境の改善や業務効率の向上など、総合的なアプローチが人材定着では求められていると考えられます。
出典:リクルートワークス研究所|Works Report 2024
実質手取りを増やす「第3の賃上げ」
賃上げには明確な効果と限界があることが分かりました。では、採用力強化と人材定着を両立させる方法はないのでしょうか? そこで注目したいのが、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」を活用した「第3の賃上げ」です。
「チケットレストラン」は、従業員の実質的な手取りを増やす食の福利厚生サービスです。この「第3の賃上げ」には、以下のような特徴があります。
- 非課税で処理可能:一定の要件を満たせば、食事補助分は非課税です。
- 従業員の実質手取り増加:給与で還元する場合と比べて、従業員の手取りが増えます。
- 企業の税負担軽減:福利厚生として提供することで、企業の税負担も軽減されます。
- 雇用形態に関係なく提供可能:正規雇用の従業員、パート、アルバイトなど、すべての従業員に提供可能です。
具体的な効果を見てみましょう。年収127万円のパートタイマー(社会保険未加入)に対し、年間42,000円の待遇改善を行う場合を考えてみます。通常の賃上げの場合、42,000円を給与として支給すると、年収が130万円を超えて社会保険加入義務が発生し、結果として手取りが大幅に減少してしまいます。
一方、「チケットレストラン」を活用した場合、42,000円分の食事補助を提供することで、年収130万円の壁を超えず、社会保険加入義務も発生しません。嬉しいことに、42,000円がそのまま手元に残ります。結果として、通常の賃上げと比べて164,110円も手取りが増加します。
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
「第3の賃上げ」は採用強化・人材定着に有効
「チケットレストラン」を活用したハイブリッド型の「第3の賃上げ」には、以下のような採用強化、人材定着のほか、さまざまなメリットがあります。
- 採用競争力の強化:魅力的な福利厚生として訴求可能であり、採用市場での競争力向上につながります。
- 人材定着:日常的な生活支援による従業員満足度向上が期待でき、離職防止や人材定着に寄与します。
- エンゲージメント向上:コンビニなどで毎日使えるため、エンゲージメント向上に効果的です。
- 公平性:雇用形態に関係なく、支給対象の従業員に提供可能です。
- 導入のしやすさ:企業規模に関わらず実施可能で、少額から始められます。
とくに、非正規雇用者の待遇改善にも活用できる点は、人材定着への訴求力が高く、多様な雇用形態が共存する令和の企業にとって大きな意味を持つでしょう。就業時間内なら毎日使える点においても、企業のサポートを日常的に感じられエンゲージメント向上にも効果的です。
内閣府による2021年度の「男女共同参画白書 」において、非正規雇用者について、男性652万人(21.8%)、女性1,413万人(53.6%)と示されています。このことから、非正規雇用の採用では、女性採用に力を入れるのが得策です。「チケットレストラン」は、ランチにもう一品追加、おやつやコーヒーの購入、「ドトール」「上島珈琲店」「サンマルクカフェ」「Soup Stock Tokyo」などのカフェでも利用できます。女性が喜ぶ福利厚生がある企業として、女性採用強化でも強みにもなるでしょう。
出典:内閣府 男女共同参画局|男女共同参画白書 令和4年版
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ハイブリッドな賃上げで採用強化・人材定着をダブルで推進
統計データは賃上げの効果と限界を明確に示しています。賃上げは、採用には効果的ですが、人材定着には必ずしも有効とは限りません。この事実を踏まえ、企業は単純な賃上げだけでなく、より戦略的なアプローチを検討する必要があります。
「第3の賃上げ」は、戦略的アプローチの一つです。採用力強化と人材定着の両面で効果が期待できるため、現代の労働市場が抱える課題に対する有効な解決策となり得ます。賃上げに加えて、職場環境の改善にもつながる「チケットレストラン」を導入してみませんか?