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【社労士監修】最低賃金引き上げによる中小企業への影響。厚生労働省の支援事業も紹介

【社労士監修】最低賃金引き上げによる中小企業への影響。厚生労働省の支援事業も紹介

2024.10.17

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

最低賃金が2024年10月から引き上げられます。これにより中小企業にはどのような影響があるのでしょうか。この影響に対して、中小企業ができる対策を紹介します。併せて最低賃金の引き上げに伴い厚生労働省が実施している、中小企業への支援事業についても見ていきましょう。

2024年10月からの最低賃金

最低賃金は毎年10月に改定されています。2024年10月の改定により、最低賃金の全国加重平均は1,055円になりました。2023年10月に改定された最低賃金からの、引き上げ額は51円です。

ここでは都道府県別の最低賃金を見ていきましょう。半数に近い都道府県で、引き上げ額が全国加重平均を上回っていることが分かります。

例えば徳島県では、2024年10月からの改定で、最低賃金が改定前より84円と他の都道府県と比べても大幅に引き上げられました。

都道府県

2024年改定後の最低賃金

改定前の最低賃金

引き上げ額

北海道

1,010円

960円

50円

青森

953円

898円

55円

岩手

952円

893円

59円

宮城

973円

923円

50円

秋田

951円

897円

54円

山形

955円

900円

55円

福島

955円

900円

55円

茨城

1,005円

953円

52円

栃木

1,004円

954円

50円

群馬

985円

935円

50円

埼玉

1,078円

1,028円

50円

千葉

1,076円

1,026円

50円

東京

1,163円

1,113円

50円

神奈川

1,162円

1,112円

50円

新潟

985円

931円

54円

富山

998円

948円

50円

石川

984円

933円

51円

福井

984円

931円

53円

山梨

988円

938円

50円

長野

998円

948円

50円

岐阜

1,001円

950円

51円

静岡

1,034円

984円

50円

愛知

1,077円

1,027円

50円

三重

1,023円

973円

50円

滋賀

1,017円

967円

50円

京都

1,058円

1,008円

50円

大阪

1,114円

1,064円

50円

兵庫

1,052円

1,001円

51円

奈良

986円

936円

50円

和歌山

980円

929円

51円

鳥取

957円

900円

57円

島根

962円

904円

58円

岡山

982円

932円

50円

広島

1,020円

970円

50円

山口

979円

928円

51円

徳島

980円

896円

84円

香川

970円

918円

52円

愛媛

956円

897円

59円

高知

952円

897円

55円

福岡

992円

941円

51円

佐賀

956円

900円

56円

長崎

953円

898円

55円

熊本

952円

898円

54円

大分

954円

899円

55円

宮崎

952円

897円

55円

鹿児島

953円

897円

56円

沖縄

952円

896円

56円

全国加重平均

1,055円

1,004円

51円

参考:厚生労働省|令和6年度 地域別最低賃金 答申状況

最低賃金の引き上げに対する中小企業の対応

東京商工リサーチが実施した2024年「最低賃金引き上げに関するアンケート」では「2024年度の最低賃金(時給)引き上げ額の目安は50円(全国加重平均)となりました。目安通りの引き上げとなった場合、貴社では給与設定を変更しますか?」という質問を行っています。

この質問への回答から、資本金1億円未満の4,957社の結果を見ていきましょう。

最低賃金の引き上げへの対応

実施割合

最低賃金を上回っており変更しない

58.77%

最低賃金を上回っているが引き上げ

21.57%

最低賃金を下回っており最低賃金を超える水準に引き上げ

7.65%

最低賃金を下回っており同額まで引き上げ

12.02%

この調査結果によると、2024年10月の最低賃金改定前に、改定後の最低賃金を上回っている中小企業は80.34%です。このうち21.57%は、改定後の最低賃金を超えているけれど、さらなる引き上げを実施する予定となっています。

残り19.67%の中小企業でも、最低賃金を超える水準まで引き上げると回答している割合が7.65%です。

このことから90%近い中小企業が、2024年10月の最低賃金改定後に、最低賃金を超える給与設定を予定していたことが分かります。

参考:東京商工リサーチ|2024年「最低賃金引き上げに関するアンケート」調査

最低賃金の引き上げが中小企業に及ぼす影響

地域ごとに定められている最低賃金を支払わない場合、企業には罰金が科されます。国が強制力をもって賃金の最低額を定めている最低賃金の引き上げにより、中小企業はどのような影響を受けるのでしょうか?

人件費の増加

最低賃金の改定により、従業員へ支払う賃金が最低賃金を下回る企業では、給与設定を変更し支払う賃金が最低賃金以上となるようにしなければいけません。これまでよりも人件費にかかるコストが増大します。

利益の減少

人件費が増えることで利益が減少する企業が出てくる恐れがあります。

帝国データバンクの「価格転嫁に関する実態調査-価格転嫁の状況分析(2024年2月・7月比較)-」によると、2024年2・7月の調査両方で、コストの上昇分を全て価格転嫁できていると回答した企業は2.5%です。またどちらか一方でも全て価格転嫁できている企業は、2月5.2%・7月5.0%でした。

また2・7月どちらも全く価格転嫁できていない企業は6.6%です。2月のみであれば13.0%、7月のみであれば10.4%が全く価格転嫁できていません。

2月より7月の価格転嫁率が拡大した企業は32.4%である半面、縮小した企業も20.8%存在しており、コスト上昇に価格転嫁が追いついていない状況が見られます。

最低賃金の改定により人件費が増加すれば、さらにコストが上昇するため、見込んでいた利益が出ない企業もあるかもしれません。

参考:帝国データバンク|価格転嫁に関する実態調査-価格転嫁の状況分析(2024年2月・7月比較)-

扶養内で働く従業員の労働時間減少

パートやアルバイトとして働く従業員の中には、扶養内での勤務を希望している人もいるでしょう。最低賃金の改定に合わせて、パートやアルバイトの時給を上げると、これまでの勤務時間では扶養を外れてしまう従業員が出てくるかもしれません。

扶養内で働き続けるために労働時間を減らさなければならず、人手不足につながる企業が出てくる恐れもあります。新たな人材の採用や教育のコストも必要です。

正規雇用の従業員の負担増

扶養内での勤務を希望するパートやアルバイトの労働時間が減少した場合、新たなパートやアルバイトが見つからず、正規雇用の従業員が担う仕事の割合が増加するケースもあるでしょう。残業や休日出勤が増える可能性もあります。

最低賃金の引き上げによる影響への対策

最低賃金の引き上げにより、中小企業はコストアップや人手不足などの影響を受けます。これらの影響に対して、中小企業ではどのような対策ができるのかを見ていきましょう。

自社の給与設定を見直す

まずは自社の給与設定を見直すことが重要です。現状で改定後の最低賃金を満たしている場合、無理に支払う賃金を上げる必要はありません。現状を適切に把握した上で、必要な取り組みを検討しましょう。

新たな人材を早いタイミングで採用する

最低賃金の引き上げにより予想される人手不足に対しては、新たな人材の採用が有効です。早いタイミングで採用活動に取り組むことで、自社に合う人材を採用しやすくなるでしょう。

スムーズな採用を行うには、給与アップや福利厚生の拡充など待遇改善の実施も有効です。

従業員のスキルアップによる生産性向上

扶養内で働く従業員の労働時間が減り、正規雇用の従業員の負担が増えることへの対策には、従業員のスキルアップが役立ちます。一人ひとりがスキルアップし生産性を高めることで、パートやアルバイトの労働時間が減っても、無理なく対応できるかもしれません。

業務の見直しやシステムの導入などによる業務効率化

今ある業務の見直しも生産性向上につながります。全体を見直すと、これまでの慣習で行っていたけれど無駄な業務や、二重に行っている業務が見つかるかもしれません。これらを見直すことで、業務量を減らせる可能性があります。

またシステムを導入することによる業務効率化も、最低賃金の改定による人手不足の解消につながるでしょう。

最低賃金引き上げに伴い厚生労働省が行う中小企業への支援事業

最低賃金の引き上げによる影響へ対策するにはコストや手間がかかります。中小企業の状況によっては、対策が難しい場合もあるでしょう。そのような中長期業をサポートするため、厚生労働省が実施している支援事業を紹介します。

働き方改革推進支援センターのご案内

働き方改革に対して中小企業が抱える課題を相談できる仕組みとして、厚生労働省では47都道府県に設置されている「働き方改革推進支援センター」を紹介しています。

来所・電話・メールなどで相談すると、労務管理の専門家に無料で相談できる仕組みです。自社内での解決が難しい状況でも、専門家の力を借りることでよい結果に結びつく可能性があります。

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援センター

業務改善助成金

「業務改善助成金」とは、生産性向上のための機械設備導入や人材育成などを導入し、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げたときに、設備投資にかかった費用の一部を受け取れる助成金のことです。

例えば在庫管理の効率化につながるPOSレジの導入や、スムーズなオペレーションにつながる配膳ロボットの導入、顧客管理情報をスピーディーに活用可能なシステムの導入などが対象となります。

助成金の上限額は、以下のように最低賃金の引き上げ額と最低賃金を引き上げる従業員数で定められています。

コース区分

事業場内最低賃金の引き上げ額

引き上げる人数

助成上限額

事業場規模30人未満の事業者

左記以外の事業者

30円コース

30円以上

1人

60万円

30万円

2~3人

90万円

50万円

4~6人

100万円

70万円

7人以上

120万円

100万円

10人以上※特例事業者のみ対象

130万円

120万円

45円コース

45円以上

1人

80万円

45万円

2~3人

110万円

70万円

4~6人

140万円

100万円

7人以上

160万円

150万円

10人以上※特例事業者のみ対象

180万円

180万円

60円コース

60円以上

1人

110万円

60万円

2~3人

160万円

90万円

4~6人

190万円

150万円

7人以上

230万円

230万円

10人以上※特例事業者のみ対象

300万円

300万円

90円コース

90円以上

1人

170万円

90万円

2~3人

240万円

150万円

4~6人

290万円

270万円

7人以上

450万円

450万円

10人以上※特例事業者のみ対象

600万円

600万円

参考:厚生労働省|業務改善助成金

働き方改革推進支援助成金 団体推進コース

商工会や事業協同組合などの事業主団体や要件を満たす共同事業主に所属している中小企業へ向けて、以下のいずれかを実施すると、事業主団体や共同事業主へ支給されるのが「働き方改革推進支援助成金 団体推進コース」です。

  • 市場調査の事業
  • 新しいビジネスモデルの開発や実験の事業
  • 材料費・水光熱費・在庫等の費用の低減実験の事業
  • 下請取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定の改善に向けた取引先との調整事業
  • 販路の拡大へ向けた展示会開催および出展の事業
  • 好事例の収集や普及啓発の事業
  • セミナーの開催等の事業
  • 巡回指導や相談窓口設置などの事業
  • 構成事業主が共同で利用する労働能率増進につながる設備・機器の導入や更新の事業
  • 人材確保の取り組みに向けた事業

中小企業を事業主団体がサポートすることで、業界全体の生産性向上や待遇改善を進める狙いがあります。中小企業が制度を活用するには、所属している事業主団体や共同事業主へ、実施している事業がないか問い合わせてみましょう。

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

最低賃金の引き上げに「チケットレストラン」でできる対策も

2024年10月の最低賃金の引き上げでは、全国加重平均で2023年の最低賃金より51円の引き上げが行われました。これにより中小企業の中には、人件費の増加による利益減少や、扶養内で働く従業員の労働時間減少による人手不足などが起こっているケースもあります。

このような事態への対策として、中小企業では給与設定の見直し、新たな人材の採用、従業員のスキルアップ、業務効率化などに取り組むとよいでしょう。

加えて対策の一環として有効なのが、食の福利厚生サービス「チケットレストラン」による従業員の待遇改善です。対象となる従業員の食事代を企業がサポートする仕組みにより、従業員が自由に使える賃金を増やせるため、実質的な手取り額アップがかないます。

また食事補助は一定の要件を満たしていれば給与として扱われません。食の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、給与として扱われないために必要な要件を満たして支給できるため、扶養内での勤務を希望する従業員の待遇改善にも役立ちます。

対象となる全ての従業員にプラスとなる、食の福利厚生サービス「チケットレストラン」の導入を検討してみませんか。

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