女性の社会進出が進む一方で、賃金格差や育児支援の不足など課題は山積みです。しかし、少子高齢化が進むなか、女性の活躍への期待は高まっています。
本記事では、企業による女性活躍の先進的な取り組み事例と、福利厚生の充実による新しい働き方改革への期待について解説します。
女性の社会進出が加速するも課題が残る現状
近年、日本社会における女性の活躍が大きく注目されるようになりました。政府は2015年に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(通称「女性活躍推進法」)を施行し、自治体や企業に対して、女性の活躍を後押しするさまざまな施策を講じています。しかしながら、実際の現場では未だ多くの課題が山積みと言われています。
女性活躍をめぐる主な課題
女性の活躍を阻む要因は一つではなく、さまざまな課題が組み合わさっているのが現状です。ここでは主な課題について、解説します。
1.男女間の賃金格差
厚生労働省の調査によると、男女間の賃金格差は依然として存在しています。厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」によると、2022年において男性の賃金を100とした場合の女性の賃金は、75.7と大きな開きがあります。
出典:厚生労働省の|令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況
2.女性の管理職比率の低さ
厚生労働省が2020年に実施した調査結果「令和2年企業調査結果概要」では、企業規模30人以上における係長相当職以上の女性の割合は12.9%に過ぎませんでした。管理職に占める女性の割合が低いことが、キャリア形成の妨げになっている可能性があると考えられます。
出典:厚生労働省|令和2年企業調査結果概要
3.育児との両立支援の不足
出産や育児を機に離職する女性が多数いることも、課題です。日本の女性の場合、結婚・出産期に当たる年代に一旦低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇するという、いわゆるM字カーブを描くのが特徴です。その背景として、企業による育児支援策が十分でないことが一因と考えられます。
出典:厚生労働省|令和2年の働く女性の状況(総務省「労働力調査」をもとに作成)
4.長時間労働によるワークライフバランスの崩壊
日本の労働環境では、長時間労働が蔓延しており、ワークライフバランスが保たれていない状況であることも多いです。そういった場合、子育てと仕事の両立が難しくなっています。
5.意識改革の遅れ
上記のような課題の背景には、性別による固定的な役割分担意識が根強く残っていることが挙げられます。管理職や経営者の意識改革が進んでいないことも女性活躍の大きな阻害要因となっている可能性があります。
見逃せない女性活躍への「うんざり」「幻滅」の声
一方で、女性活躍を話題にすると、「うんざりする」「幻滅する」といった同性の声が聞こえてくることも事実です。週刊東洋経済の「女性を伸ばす会社、潰す会社」では、1,825人の読者アンケートから、女性活躍に対する以下のような本音が浮かび上がっています。
- 「女性活躍は女性の搾取」など、その本質を見抜いて一部の女性はシラケている。
- 育児のための時短勤務で働く女性を軽易な業務に回し、評価や報酬を不当に下げる等、「男性の都合」が優先されていると実感されている状況との違いに違和感がある。
- 男性は女性の昇進や、慣れないマネジメントに困惑している様子が見られる。
このように、女性活躍推進に対する幻滅の声が女性からあがっている実態が明らかになりました。女性活躍を推進する場合、一部の「うんざり」「幻滅」している女性がいることも念頭におく必要がありそうです。
出典:週間東洋経済|週刊東洋経済2024年5月18日号
企業による女性活躍推進の実態はさまざま
政府による後押しを受けて、企業における女性活躍推進の取り組みは着実に進んできました。しかし、その実態は企業によってまちまちです。先進的、積極的に取り組んでいる企業と、後手後手に回っている企業との格差が目立っています。
一部の大企業では、女性の管理職登用の数値目標を掲げるなど、トップダウンで取り組みが進められています。一方、中小企業ではなかなか取り組みが広がっていない傾向です。業種によっても温度差があり、伝統的に男性中心である製造業や建設業では、女性が活躍しづらい環境が続いています。
先進企業による女性活躍推進の取り組み事例
女性活躍推進のモデルケースとなる業界・企業では、どのような取り組みを実施しているのでしょうか。先進企業による取り組み事例を紹介します。
製造業・建設業における取り組み
伝統的に男性中心だった製造業や建設業でも、最近では女性が活躍できる環境づくりに力が入れられるようになってきました。
工場や建設現場での作業環境の改善|鹿島建設株式会社の事例
中小元方の建設事業主向けには、女性トイレや更衣室などの施設の設置を促す助成金が設けられるなど、政府は女性建設労働者への支援をする方向です。ほかにも、重労働をロボットや機械に置き換えたり、改めて安全対策を徹底したりすることでも女性が活躍できる環境づくりを目指せます。
企業の事例も確認しましょう。鹿島建設株式会社では、現場の工事事務所には、女性専用トイレと更衣室を兼ね備えた「パウダールーム」の設置を進めているそうです。「女性にとって働きやすい現場は、誰にとっても働きやすい」という考えをもとに、女性技術者と協力企業の女性技能者が中心に、2015年から継続的に現場の職場環境改善に取り組んでいます。
出典:厚生労働省|助成金を活用して女性トイレや更衣室等の施設を建設現場に設置してみませんか?
出典:働く女性のウェルネル向上委員会|女性技術者が中心となり「鹿島たんぽぽ活動」を立ち上げ、現場環境の改善に努める
多様な働き方の導入|エクシオグループ株式会社の事例
女性が働き続けるためには、妊娠・育児・介護などと両立しやすい働き方ができるかどうかが肝心です。建設業でテレワークの導入・拡大をいち早く導入したエクシオグループ株式会社では、東日本大震災を契機にテレワーク勤務を導入し、その後新型コロナウイルス感染症拡大によりさらなる普及を実現しました。
- 在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務を全て許可
- 利用対象者や職種等の限定なし
- 上司によるPCログ照合で長時間労働の防止
上記の取り組みにより、通勤時間削減によるワークライフバランス向上や、育児・介護・障がい・治療等と仕事の両立を実現させ、女性活躍の土壌づくりに成功しています。
出典:総務省|令和4年度テレワーク先駆者百選 取り組み事例
中小企業における取り組み
人手不足が深刻化する中、女性の活躍推進は中小企業にとっても避けて通れない課題です。限られたリソースの中で、さまざまな創意工夫が行われています。
メンター制度導入と地域の研修プログラム参加|株式会社関・空間設計の事例
女性活躍推進への取り組みでは、女性がキャリア形成のイメージを作れるかどうかも大切です。従業員数31名、2023年新卒採用の女性が2名と少なかった宮城にある建設業を営む株式会社関・空間設計では、メンター制度を本格導入し、従業員教育を実施しました。課題は、女性従業員比率を高めることであり、メンター制度で女性のキャリア形成を促します。
さらに、女性従業員2名が公益財団法人せんだい男女共同参画財団による「仙台女性リーダー・トレーニング・プログラム」に参加し、女性の活躍に関する知識を学び、自社の働き方改革推進を担います。学んだ知識を企業に持ち帰って実践することで、従業員の意識変化を促し、性別を問わず従業員が活躍できる組織風土の醸成に貢献できました。
出典:厚生労働省|女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル紹介・地域ネットワークへの参加マニュアル・事例集 企業事例7 株式会社関・空間設計
食事補助の福利厚生サービス導入|株式会社サニクロの事例
少数精鋭の職場でも利用可能な福利厚生を導入する取り組みで、女性活躍を支援できます。育児支援サービスの提供や食事補助の福利厚生サービスなど生活に密接に関わる福利厚生が人気です。
従業員数が33名、部品検査を専門とする株式会社サニクロの場合、エデンレッドジャパンの食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入し、勤務中の食事を支援し従業員の健康維持を促進しています。その結果「チケットレストラン」を話題とした従業員コミュニケーションも増えました。パート従業員にも提供できるサービスでもあることから、多様な働き方の従業員の活躍を支援できます。
SDGsの観点から見た女性活躍
女性活躍の推進は、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の中の「ジェンダー平等の実現」とも深く関わっています。SDGsに積極的に取り組む企業では、女性が活躍できる環境づくりを経営の重要課題として捉え、多様な施策を打ち出しています。
- ダイバーシティの推進
- 女性リーダーの育成
- ジェンダーギャップ指数の改善に向けた取り組み
- LGBTQへの配慮
- ハラスメント対策の徹底
上記の施策は、SDGsの理念を企業経営に取り入れることで、社会的課題の解決と企業の持続的成長を両立させようという試みです。そうした取り組みを通じて、自然と女性が活躍しやすい環境が生まれます。
SDGsの目標達成の一環として女性活躍|株式会社ヤマヲの事例
東京立川にある株式会社ヤマヲ(製造業、従業員数620名)では、SDGsの目標達成の一環として女性活躍の取組を行っています。具体的には、「WSP(Women Smiles Project)」を通じて、女性が働きやすい職場環境改善に取り組みました。活動は、年に1度の職場に関するアンケートを実施し、職場の困りごとを拾い上げ、結果を経営陣へ報告し、企業としてすべき改善策を検討するというものです。トイレの修繕や更衣室の利便性向上など、女性の活躍を後押しする環境を整えています。
女性従業員の割合の低さについても課題であったことから、アルバイトの女性従業員を正規に従業員に転換するよう呼びかけ、直近5年間で4名の正規従業員が誕生しました。念願叶って、えるぼし認定の3段階目も取得しています。
出典:厚生労働省|女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集 株式会社ヤマヲ
自治体と企業の連携による好循環にも注目
企業による積極的な取り組みと同時に、自治体の施策も重要な役割を果たしています。
自治体による支援施策
- 女性活躍推進のための補助金支給
- 保育所などの育児支援インフラの整備
- 啓発イベントやセミナーの開催
- 企業への指導・助言
各自治体が実情に合わせて、独自の支援メニューを用意しています。企業に対する直接的な支援とともに、従業員個人への間接的な支援も行われています。
自治体による女性活躍推進の取り組み事例
自治体による取り組み事例は多様です。ここでは、内閣府「⼥性の活躍加速のための取組好事例集」より、自治体の取り組み事例を紹介します。
自治体名 | 取り組み事例 |
京都府 | ・女性従業員間の企業の枠を超えたメンター(先輩と後輩メンティ)関係の構築やネットワークづくりのためのランチ交流会を開催。
・起業・創業の推進として、新たなビジネスにチャレンジする輝く女性の顕彰、事業化の支援、販路拡大及びロールモデル・取引先・女性起業家同士等のネットワーク構築の支援。 |
宮城県仙台市 | ・企業の経営者、管理職、人事労務担当等を対象に、「人財を得る・活かす・根付かせる」をテーマとした女性活躍推進セミナーを開催。
・就労している女性100名を対象とした働く女性向けセミナー・交流会の実施。 |
茨城県日立市 | ・女性の就業専門資格取得等の補助。
・女性のキャリア意識向上 を目指し、年3回女性の人材育成講座を実施。 |
出典:内閣府|⼥性の活躍加速のための取組好事例集
女性が喜ぶ福利厚生による新たな働き方改革
近年注目を集めているのが「福利厚生の充実」による待遇改善です。なかでも、株式会社サニクロの事例で紹介したエデンレッドジャパンの食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」が、直接雇用であればパートやアルバイト従業員も対象にできるなど、従業員に公平に提供できるメリットで注目されています。
チケットレストランとは
「チケットレストラン」は、企業が従業員のランチ代の一部を食事補助として負担する食事補助の福利厚生サービスです。企業と従業員がそれぞれ半額ずつ負担した場合、企業負担分は所得税が課せられません。従業員は実質的に半額でランチを食べられ、所得税上のメリットも得られます。企業負担分があれば、ランチにもう1品加えたり、少し豪華なランチを楽しみやすく、従業員に喜ばれる福利厚生です。
チケットレストランの主な特徴
「チケットレストラン」の加盟店は、全国25万店舗以上であり、 Uber Eats での利用も可能です。大手コンビニやファストフード、レストランなど幅広い業態から好みの店舗を見つけてランチを楽しむことができます。焼きたての「チョコクロ」が看板メニューのサンマルクカフェ(全国146店舗)も2024年6月3日より加盟店に加わるなど、女性に人気のカフェチェーンでも利用できるようになりました。
多様な勤務形態に対応している点も魅力です。医療や介護など、不規則な時間帯での食事にも活用しやすいため、夜勤や土日出勤の食事にも利用できます。休憩時の軽食や飲み物の購入も可能です。利用する際、専用のICカードを持参するだけなので利便性も抜群です。残高はスマホアプリで確認できます。
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食事補助の福利厚生サービスによる働き方改革のメリット
「チケットレストラン」の導入により、以下のようなメリットが期待できます。
従業員の満足度向上
実質的な給与アップにつながるため、従業員満足度の向上が期待できます。従業員満足度93%、継続率99%と導入企業からの評判もよいです。また、福利厚生が手厚いと、従業員は企業から大事にされていると感じ、企業へのエンゲージメントにもよい影響があるとされています。
採用力と定着率の向上
待遇の良さが採用の決め手になることも多いです。勤務中のランチは午後も精力的に働くのに欠かせないものなので、生活支援にもなる食事補助の福利厚生は従業員に喜ばれます。
年収の壁を気にせずに待遇改善が可能
年収アップによる待遇改善では、パートやアルバイトの方が年収の壁を意識して働きを控える可能性があります。しかし「チケットレストラン」のような食事補助の福利厚生サービスであれば、そうした懸念は生じません。
給与以外の手当として食事補助などを提供することで、従業員の所得税の負担を増やさず、結果的に実質的な手取りを増やせるからです。従業員は、これまでと同じ働き方で、より高い待遇を受けられるようになります。
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女性活躍推進で社会の活力向上
女性活躍推進は、単に数値目標を達成するだけでなく、一人ひとりが充実した働き方ができる環境づくりが不可欠です。女性にとって魅力的な労働環境が整備されれば、社会の活力は大きく向上するでしょう。
とくに福利厚生の分野では、「チケットレストラン」などの食事補助の福利厚生サービスが、新しい働き方改革の手段として注目を浴びています。パート・アルバイト従業員にも提供できる食事補助の福利厚生サービスで、女性の活躍しやすい職場づくりを推進しませんか。