人手不足倒産の件数が2023年度を上回るペースで発生しています。帝国データバンクと東京商工リサーチの調査をもとに、人手不足倒産件数の推移を見ていきましょう。また人手不足倒産が発生している状況の改善に役立つ取り組みについても解説します。
【帝国データバンク】人手不足倒産の推移
帝国データバンクの実施した「人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)」によると、2024年度上半期の人手不足倒産件数は過去最多となりました。2014年度から2024年度上半期までの人手不足倒産の推移は以下の通りです。
年度 |
上半期の人手不足倒産件数 |
1年間の人手不足倒産件数 |
2014年度 |
40件 |
65件 |
2015年度 |
35件 |
68件 |
2016年度 |
32件 |
79件 |
2017年度 |
57件 |
108件 |
2018年度 |
80件 |
175件 |
2019年度 |
92件 |
199件 |
2020年度 |
69件 |
130件 |
2021年度 |
53件 |
118件 |
2022年度 |
66件 |
146件 |
2023年度 |
135件 |
313件 |
2024年度 |
163件 |
- |
2023年度の人手不足倒産件数は、過去最多の313件でした。2024年度上半期の人手不足倒産件数は、この2023年度の件数を上回っています。このペースが続けば、2023年度に続き2024年度の人手不足倒産件数も過去最多となるかもしれません。
参考:帝国データバンク|人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)
【東京商工リサーチ】人手不足倒産の推移
東京商工リサーチも「2024年度上半期「人手不足」関連倒産」に関する調査を行っています。同調査によると、2024年度上半期の人手不足関連倒産は148件と過去最多です。2013年度からの人手不足関連倒産の推移を見ていきましょう。
年度 |
上半期の人手不足倒産件数 |
人手不足関連倒産の要因の内訳 |
||
人件費高騰 |
従業員退職 |
求人難 |
||
2013年度 |
21件 |
4件 |
9件 |
8件 |
2014年度 |
33件 |
11件 |
7件 |
15件 |
2015年度 |
23件 |
11件 |
5件 |
7件 |
2016年度 |
27件 |
10件 |
10件 |
7件 |
2017年度 |
30件 |
7件 |
7件 |
16件 |
2018年度 |
60件 |
13件 |
12件 |
35件 |
2019年度 |
81件 |
14件 |
28件 |
39件 |
2020年度 |
42件 |
7件 |
20件 |
15件 |
2021年度 |
26件 |
4件 |
13件 |
9件 |
2022年度 |
31件 |
5件 |
13件 |
13件 |
2023年度 |
82件 |
30件 |
18件 |
34件 |
2024年度 |
148件 |
56件 |
35件 |
57件 |
調査では、人手不足関連倒産に至った要因として「人件費高騰」「従業員退職」「求人難」を設定しています。2024年度上半期は全ての要因が前年度より増加しました。
賃上げの動きが広がる中、人材確保を目的に、企業のできる範囲を超えて賃上げを実施したケースもあるようです。「人件費高騰」による資金繰り悪化が深刻さを増しています。
参考:東京商工リサーチ|2024年度上半期「人手不足」関連倒産 148件 上半期で初の100件超、収益改善が早急な課題に
人手不足倒産は中小企業や小規模企業を中心に増加
人手不足倒産は、業種を問わず中小企業や小規模企業を中心に増加しています。
帝国データバンクの実施した「人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)」によると、2024年度上半期に人手不足倒産した163件のうち、従業員数10人未満の企業は134件と全体の82.2%でした。残り29件も従業員数10~49人の企業です。
また東京商工リサーチの「2024年度上半期「人手不足」関連倒産」に関する調査では、人手不足関連倒産した企業148件のうち、資本金1,000万円未満の企業は90件と約60%でした。
参考:
帝国データバンク|人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)
東京商工リサーチ|2024年度上半期「人手不足」関連倒産 148件 上半期で初の100件超、収益改善が早急な課題に
人手不足倒産の解消は人材定着がカギ
「労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)10月分結果」によると、就業者数は6,813万人と27カ月連続で増加しています。
働く人が増えているにもかかわらず、2024年度上半期の人手不足倒産が過去最多となったのは、加速する労働市場の流動化によるものといえるでしょう。
「労働力調査(詳細集計)2023 年(令和5年)平均結果の要約」を見ると、2023年の転職希望者数は1,007万人となっており、右肩上がりに増えているのが分かります。
中小企業や小規模企業は、従業員の離職による影響が大きく表れるのが特徴です。今いる従業員が1人でも離職すると、事業を維持するのが難しいケースもあるでしょう。
また労働市場は求職者の売り手市場のため、中小企業や小規模企業が人材を採用するには、よりよい待遇を用意しなければいけません。競争力を高めるために、自社の資金力を超える賃上げを実施したことで資金繰りが悪化し、人手不足倒産に至ることもあります。
このような事態を避けつつ人材定着を進めるには、自社が無理なく取り組める範囲で待遇改善を実施することが重要です。具体的にできることを見ていきましょう。
参考:
総務省統計局|労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)10月分結果
総務省統計局|労働力調査(詳細集計)2023 年(令和5年)平均結果の要約
関連記事:人材定着は何に取り組むべき?定着しないときの課題と施策を確認
求人の出し方や内容を工夫する
求人を出したときに応募者が集まるようにするには、掲載する媒体をよく検討しましょう。求人サイトだけでなく、自社のWebサイトやSNSなどで呼びかけることで反応があるかもしれません。
また求人に掲載する内容も見直します。魅力的な部分ばかり伝えると、人材が入社してもギャップを感じて離職する恐れがあるためです。
魅力とともに大変なところも伝えると、入社後のギャップを小さく抑えやすくなります。
関連記事:人材採用の戦略は3ステップで立案!役立つフレームワークもチェック
スキルレベルや役職に応じた研修を行う
従業員が必要としている知識やスキルに関する研修を実施することも、人材定着につながる取り組みです。
例えば入社後の教育を現場に一任しているなら、人事と連携して入社時の教育プログラムを作成するとよいでしょう。マニュアルの整備も役立ちます。
速やかに仕事を覚えられる、マニュアルを見れば1人でできる仕事がある、という状態が整っていれば、採用した人材が「役に立っていない」「先輩たちに迷惑をかけている」といった無力感から離職を選ぶ事態を避けやすくなります。
併せてフォローアップのための面談を定期的に実施することも有効です。
関連記事:中小企業における人材育成・人材定着の重要性と課題解決策
良好な人間関係を構築する
従業員が「長く働きたい」と感じる職場をつくるには、従業員同士の良好な人間関係が重要です。気軽にあいさつや会話をする関係性ができていれば、仕事を進める上で必要な話もスムーズに進めやすいでしょう。
良好な人間関係の構築には、食事会やレクリエーションなどを行い、交流の機会を設ける方法が有効です。オフィス内に従業員が集まりやすい休憩スペースを設ける方法もあります。
賃上げや福利厚生の拡充などで待遇を改善する
人材定着を進めるには、従業員の待遇改善が重要です。賃上げを行うと同時に、少ないコストで実施しやすい福利厚生サービスの導入にも取り組むとよいでしょう。
例えばエデンレッドジャパンの提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、要件を満たして支給すると非課税枠での運用が可能です。
非課税枠運用のため、賃上げよりも手取り額が上がったことを従業員が実感しやすいでしょう。賃上げと組み合わせて取り組むことで、競合他社より充実した待遇を整えられる可能性が高まります。
また福利厚生を導入するときには、従業員が求めている制度を整備すれば、従業員満足度の向上にもつながるでしょう。
増加している人手不足倒産への対策は「チケットレストラン」で
人手不足倒産の推移を見ると、2024年度上半期は過去最多となっています。
採用がうまく進まない、従業員が離職する、人件費の高騰で経営状態が悪化した、などの理由で起こる人手不足倒産は、人材定着の取り組みによって回避しやすくなります。例えば求人を工夫する、必要な研修を行う、良好な人間関係を築くことがポイントです。
実質的な手取り額アップにつながる、食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入するのもおすすめです。93%と高い従業員満足度の「チケットレストラン」を導入すれば、他社との差別化につながりやすいでしょう。
人手不足倒産への対策として導入を検討しませんか。