【2025年度税制改正】各府省庁の要望まとめ
2025年度の税制改正に向けて、各府省庁から提出された要望がまとめられています。中小企業の生産性向上や、子育て世帯への優遇策など、企業やその従業員に直接関連する要望が多く見られるのが特徴です。
また企業規模や地域を限定せず、広く賃上げが進んでいく調整が行われるような内容の要望が提出されています。
各府省庁の要望のうち、金融庁・こども家庭庁・デジタル庁・復興庁・総務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・公正取引委員会・内閣官房の提出した要望の一覧は以下の通りです。
府府省庁 |
要望 |
金融庁 |
・NISAの利便性向上等 |
こども家庭庁 |
・こども・子育て支援加速化プランに基づく制度改正等に伴う税制上の所要の措置 |
デジタル庁 |
・マイナンバーカード機能のスマートフォンへの搭載に伴う本人確認措置等に係る所要の措置 |
復興庁 |
・経営者の私財提供に係る譲渡所得の非課税措置の延長 |
総務省 |
・放送法の改正に伴う税制上の所要の措置 |
財務省 |
・新型コロナウイルス感染症に関する特別貸付に係る消費貸借に関する契約書の印紙税の非課税措置の延長 |
文部科学省 |
・(独)日本学生支援機構が実施する奨学金事業に係る印紙税の非課税措置の拡充 |
厚生労働省 |
・医療提供体制の確保に資する設備の特別償却制度の延長等 勤労者財産形成貯蓄制度の見直しに伴う税制上の所要の措置 |
農林水産省 |
・持続的な食料システムの確立に向けた農業と食品産業の連携強化等の促進に係る税制上の所要の措置 |
経済産業省 |
・企業における寄附の促進に向けた環境整備の検討 |
国土交通省 |
・住宅ローン減税等に係る所要の措置 |
公正取引委員会 |
・スマホソフトウェア競争促進法による課徴金納付命令の導入に伴う所要の措置 |
内閣官房 |
・地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の延長 |
中小企業を支援する経済産業省の要望
経済産業省は2025年度の税制改正に向けて、中小企業を支援する目的の要望を複数提出しています。「令和7年度税制改正に関する経済産業省要望のポイント」をもとに、どのような要望が提出されているのかを見ていきましょう。
参考:経済産業省|令和7年度税制改正に関する経済産業省要望のポイント
中小企業経営強化税制の延長と拡充
2025年度の税制改正に向けた要望の中で、経済産業省は「中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額等の特別控除(中小企業経営強化税制)の拡充及び延長」を提案しています。
「中小企業経営強化税制」の対象は、売上高100億円を目指す中小企業です。法人税額等の特別控除延長や上乗せ措置による拡充の実施を行うよう求めました。
中小企業投資促進税制・中小企業軽減税率の延長
賃上げの好循環を生み出す目的で、延長の要望が提出されたのは「中小企業投資促進税制」と「中小企業軽減税率」です。
物価上昇だけが進む環境では、経済状況は好転しません。広く賃上げが行われることで、消費が進み経済の好循環が生まれます。
そのためには大企業はもちろん、中小企業で賃上げが進むことも重要です。中小企業の税負担を減らす「中小企業投資促進税制」と「中小企業軽減税率」を延長することで、賃上げが進みやすくなるよう働きかけます。
固定資産税の軽減措置の延長等
利益が出ていない中小企業では、賃上げや設備投資に前向きになれません。その結果、業務効率が落ちてますます経営状況が厳しいものになる悪循環に陥ることもあるでしょう。
「設備投資に関する固定資産税の軽減措置」が延長されれば、将来の業績アップを目標に、前向きな賃上げや設備投資を行える可能性があります。
2025年度税制改正における従業員の所得税に関わる要望
2025年度の税制改正に向けて、従業員の所得税に関わる要望も提出されています。どのような要望が出ているか確認しておくと、対象となる従業員に必要な手続きがスムーズに進みやすくなるでしょう。
住宅ローン控除の延長
国土交通省では「豊かな暮らしの実現と個性をいかした地域づくり」の一環として、子育て世帯や若い世代の夫婦を対象とした「住宅ローン控除」の延長を求めています。
年末のローン残高に応じて、所得税の減税を受けられる住宅ローン控除は、現状では2024年末までに入居した場合が対象です。これを2025年末までに延長するよう求めるよう、要望が提出されています。
併せて子育て世帯を対象に、借り入れ限度額の拡充や、対象となる新築住宅の床面積要件の緩和などに関する要望も提出しています。
16~18歳の扶養控除の見直し
高校生年代に児童手当が拡充されたことを受け、2025年度の税制改正では16~18歳の扶養控除の見直しが行われる予定です。今回の見直しでは、所得階層間の支援の均一化を目指して、以下のように扶養控除が縮小される見込みとなっています。
税金の種類 |
2024年時点 |
見直し案 |
所得税 |
38万円 |
25万円 |
住民税 |
33万円 |
12万円 |
2010年に廃止された扶養控除の上乗せ分である、所得税25万円・住民税12万円を復元する案です。
また見直し案では所得税と個人住民税の扶養控除額が減るため、税額が増えるケースもあります。ただし児童手当の支給額が増加する分と合わせると、所得にかかわらず受け取れる金額は増える見込みとなっているそうです。
資産形成に影響するNISAの拡充
教育資金づくりや老後資金づくりのためにNISAに取り組む従業員もいるでしょう。金融庁は2025年度の税制改正によって、NISAがより利用しやすくなるよう要望を提出しました。
より口座を開設しやすいよう、手続きのデジタル化や簡素化を進める他、口座開設を申し込む段階で買い付けができるように変更を求めています。併せてNISAを活用して運用できる対象商品を拡大する見込みです。
貯蓄から投資への移行を促す制度として注目されています。
このような流れの中で、自社の従業員が適切に資産運用を行えるよう、企業で投資教育を取り入れることを検討してもよいでしょう。
2025年度の税制改正の影響と企業ができること
2025年度の税制改正では、16~18歳の扶養控除の見直しが行われる予定です。これにより16~18歳の扶養親族を持つ従業員はその分課税所得が増えることとなり、所得税額や住民税額が上がります。給与から天引きされる税額が増えるため、手取り額が減少するでしょう。
またNISAの拡充では、投資にチャレンジする人が増えると予想されますが、中には投資についての知識が少ない人もいると考えられます。
このような変化が考えられる中、企業ではどのような対策ができるのでしょうか。企業ができることを解説します。
賃上げ
16~18歳の扶養控除が減額され、対象となる従業員の税額が増えて手取り額が減ったとしても、賃上げを行えばこれまでの手取り額の維持や、これまでより高い手取り額の支給が可能です。
中小企業向けの支援策の延長や拡充が行われる見込みのため、制度を利用して賃上げの好循環を目指すとよいでしょう。
福利厚生の拡充
福利厚生の導入により実質的な手取り額アップに取り組む方法も有効です。福利厚生は原則として課税対象となる給与として扱われますが、食事補助や社宅などは一定の要件を満たすことで給与として扱われることがなくなります。
この仕組みを利用して福利厚生を支給すると、税額に影響しない分、同額の賃上げよりも従業員の実質的な手取り額を増やせます。
例えばエデンレッドジャパンの提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入すれば、食事代をサポートすることで、従業員が自由に使える給与が増えます。
節約目的で昼食を食べない選択をする人が増えている中、従業員が健康的に働き続けるためにも役立つサービスです。
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投資教育の実施
NISAの拡充により、自社の従業員の中にも投資に取り組み始める人が増えるかもしれません。また制度が拡充される中、投資を行わない人は利益を得る機会を失っているとも考えられます。
自社の従業員が、不十分な知識で投資に取り組み失敗することや、知識がないからと投資による利益を逃すことを避けるには、投資教育を実施するとよいでしょう。
投資に関する正しい知識を得る機会を作ることで、従業員の資産形成をサポートできます。
2025年度の税制改正をチェックしよう
2025年度の税制改正では「中小企業経営強化税制」の延長と拡充をはじめ、中小企業を支援する要望が複数提案されています。中小企業の税負担を減らすことで、売上が100億円を超える企業への成長や、企業規模によらず賃上げが広がることを期待した動きです。
また従業員の所得税に影響する税制改正も予定されています。例えば住宅ローン控除の延長や、16~18歳の扶養控除の見直しです。
扶養控除の見直しでは、16~18歳の扶養親族がいる従業員の手取り額が減る可能性があります。児童手当の受給により全体ではプラスになる計算ですが、月々の手取り額が変わることによる影響が出るかもしれません。
このような変化に対して有効なのは、賃上げや福利厚生の拡充といった企業の行う対策です。例えば食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入することで、従業員の実質的な手取り額を増やせます。
早いタイミングで対策に取り組めるよう、税制改正のチェックや、実施する対策について検討しましょう。