物価高が続く中、家計だけでなく企業経営にも深刻な影響が広がっています。政府は給付金や補助金といった支援策を講じているものの、制度だけでは補いきれない現場の課題も顕在化しています。本記事では、物価上昇の現状と政府の対策、さらに企業として実施すべき従業員支援策をわかりやすく解説。特に注目される「食事補助」などの福利厚生制度についてもわかりやすく紹介します。
続く物価高、企業と家計に広がる影響
日本経済では、2022年以降続く物価上昇が家計と企業の双方にじわじわと影響を及ぼしています。特に食品や日用品、エネルギーといった生活必需品の価格上昇は顕著で、消費者の購買行動を大きく左右しています。まずは、続く物価高が企業と家計に及ぼしている具体的な影響から整理していきましょう。
物価はどれほど上がっているのか?最新データを確認
総務省が2025年4月に公開した「2025年(令和7年)3月分及び2024年度(令和6年度)平均」によると、同年3月の生鮮食品を除いた総合指数は前年同月比で3.2%上昇しました。
特に価格上昇が顕著だったのは、食料(加工食品や外食含む)や光熱費・水道費など、生活に欠かせない支出項目です。これにより、多くの家庭では実質的な可処分所得が減少し、消費活動そのものが抑制されています。
さらに、2024年度全体のCPI平均値でも3.0%上昇と、物価上昇が一時的なものではなく継続傾向にあることが確認されました。従業員の生活支援がますます重要な経営課題となる中、企業にもなんらかの対応が求められています。
参考:統計局ホームページ|2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)3月分(2025年4月18日公表)
物価高倒産も急増中
価格上昇は家計だけでなく、企業経営にも深刻な影響を及ぼしています。原材料費や人件費・エネルギー価格の高騰は、企業にとって特に厳しいコスト増要因となっています。
特に中小企業では、価格転嫁が難しい業態で利益を確保できず、経営を圧迫されるケースが少なくありません。
帝国データバンクの「倒産集計 2024年度報(2024年4月~2025年3月)」によると、2024年度の倒産件数は10,070件で、前年比13.4%増となりました。中でも「物価高倒産」は925件にのぼり、統計開始以来最多を記録しています。こうした動きは、物価高が企業の存続リスクに直結する構造的課題であることを示しています。
参考:株式会社 帝国データバンク[TDB]|倒産集計 2024年度報(2024年4月~2025年3月)|(2025年4月8日)
政府が講じてきた物価高対策とは
物価高による影響が家計・企業の双方に及ぶ中、政府も複数の対策を打ち出しています。特に注目されているのは、光熱費の高騰を抑えるための補助や、低所得世帯への給付、中小企業のコスト負担を軽減する支援策です。詳しく見ていきましょう。
エネルギー価格の急騰対策|電気・ガス料金の補助
エネルギー価格の高騰は、生活にも企業活動にも直撃する深刻な問題です。政府はこの負担を軽減するため、2023年から2024年にかけて、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」を実施し、電気・ガス料金の高騰による家計と企業の負担を緩和しました。
同制度は2024年5月使用分をもって終了しましたが、2025年1月から3月使用分に対しては、冬季の生活支援として「電気・ガス料金負担軽減支援事業」が実施されました。
参考:経済産業省・資源エネルギー庁|エネルギー価格の支援について
住民税非課税世帯などへの給付金支給
物価高騰の影響を受けやすい所得の少ない世帯に対し、政府は「重点支援地方交付金」を活用した給付金制度を実施しています。具体的には、住民税非課税世帯を対象に1世帯あたり3万円を基本支給し、18歳以下の子どもがいる場合は1人につき2万円を加算する仕組みです。これにより、たとえば子どもが2人いる家庭では、最大7万円の支給が受けられます。
支給は2024年12月以降、各自治体が申請確認型で実施しており、時期や手続き方法には地域差があるため注意が必要です。この制度は物価高への即効的な対応策として有効ですが、対象が限定的なため、いわゆる「中間層」への支援は手薄との指摘もあります。
企業としては、公的制度の支援範囲を踏まえた上で、従業員の生活支援をどう補完するかが重要です。
参考:地方創生推進事務局|物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金
中小企業支援|原材料費高騰対策の補助金等
原材料価格の高騰に苦しむ中小企業向けに、政府は複数の支援策を強化しています。
「業務改善助成金」は、事業場内最低賃金の引き上げと生産性向上のための設備投資を支援する制度です。 特に、原材料費の高騰などにより経営状況が悪化した事業者を対象とした特例措置があり、 一定の要件を満たすことで通常よりも手厚い支援を受けることが可能です。
また、資金繰り支援では「協調支援型特別保証制度」が拡充されています。これにより、原材料費高騰の影響を受ける企業は無担保・保証人不要で最大2.8億円までの低金利融資(年1.0%台)を受けられるようになりました。
参考:厚生労働省|業務改善助成金
参考:中小企業庁|物価高や人手不足等の影響を受けている中小企業者に向けた新しい保証制度の取扱いを開始します
関連記事:【社労士監修】中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)|概要と申請方法
今後の物価高対策のカギを握る「制度見直し」議論
現行制度による物価高対策には限界があり、政府内では構造的な見直しの必要性が高まっています。こうした中で、自民党は2024年11月、「物価上昇に対応する公的制度の点検・見直しプロジェクトチーム(PT)」を発足させました。
自民党「制度の点検・見直しPT」とは?
2024年11月、自民党は「物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直しPT」を設置し、制度改革の議論を本格化させました。このPTは、制度設計が現行の経済環境に適しているかを精査し、必要な見直しを速やかに進めることが目的とされています。
特に焦点となっているのは、物価上昇の影響を受けやすい医療費・介護費・教育費・税控除制度といった分野で、社会保障や家計負担とのバランスが議論の中心です。企業活動にも間接的に影響を及ぼす分野が多く、将来的には給与設計や福利厚生制度への反映が求められる場面も想定されます。
企業としては、今後の制度変更が従業員の生活や意識に与える影響を視野に入れておく必要があります。
参考:日本経済新聞|公的補助の基準値、インフレ対応ルール導入を 自民PT
見直しが予定される主な制度とは
制度見直しの対象として挙がっているのは、生活に直接関わる複数の分野です。
まず、医療・介護に関しては、高齢化に伴う給付増大と物価上昇の双方に対応するため、自己負担割合や保険料の見直しが検討されています。
教育分野では、奨学金制度や授業料減免など、家計支援制度の再設計が議題となっています。また、税制では所得控除の水準や非課税制度の再評価が焦点です。
これらの制度改正は、従業員の可処分所得や生活費の構成に大きく関わるため、企業にとっても無関係ではありません。制度変化に応じた柔軟な雇用設計や福利厚生の調整が、従業員満足度の維持につながります。
企業に求められる対応|物価高時代の従業員支援
政府の対策は一定の役割を果たしていますが、物価高が長期化する中で、企業自身にも従業員を支える責任が求められています。ここでは、従業員が必要とする支援と、それに対して企業が実施できる施策について紹介します。
実質賃金が目減りする中、従業員が求めるものは?
賃上げが物価の上昇に追いつかず、実質的な手取りが減り続けている近年、多くの従業員が求めているものは、減った実質賃金を補填するための「賃上げ」です。物価高が今後も続いていくことを前提に、一時的なボーナスではなく、ベースアップや定期昇給による毎月の給料アップを望む声が多く聞かれています。
重要なのは、従業員が求めているものが単なる数字だけの賃上げではなく、実際の生活が楽になる実感だという点です。物価上昇を上回る賃金アップと、安定した生活への見通しが見えなければ、働くモチベーションも消費意欲も高まりません。企業には、この現実を踏まえた対応が求められています。
賃上げ代替の有力な選択肢|福利厚生を利用した「第3の賃上げ」
物価高による実質的な手取りの減少を補填する方法として、まず挙げられるのが賃上げです。しかし、予算の制約などを背景に、大幅な賃上げは難しいという企業も少なくありません。
そこで選択肢となるのが福利厚生を活用した「第3の賃上げ」です。
「第3の賃上げ」とは、ベースアップや定期昇給に次ぐ新しい形の賃上げ手法をいいます。一定の条件を満たした福利厚生は、経費として計上できるため、同額を給与として支給するよりも従業員の手取りを増やすことが可能です。
限られた予算でも活用しやすく、より手取りアップを実感しやすい新しい賃上げ手法として、近年注目度を高めています。
3,000社を超える企業が導入する「チケットレストラン」
数ある福利厚生の中でも、特に人気を集めているサービスに、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」があります。
「チケットレストラン」は、一定の条件を満たすことにより、所得税の非課税枠運用を活用しながら全国25万店舗以上の加盟店での食事を実質半額で利用できる、食事補助の福利厚生サービスです。
加盟店の種類は、有名ファミレスやカフェ・コンビニ・三大牛丼チェーン店など多種多様で、勤務時間内にとる飲食物の購入であれば、時間や場所の制限もありません。
こうした利便性の高さが評価され、すでに3,000社を超える企業に導入されている人気サービスです。
関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も
政府への要望活動|食事補助非課税枠の上限引き上げを求める動き
2025年4月17日、エデンレッドジャパンは「食事補助上限枠緩和を促進する会」の幹事社として、自民党の「物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直しプロジェクトチーム(PT)」に対し、食事補助非課税枠の上限引き上げを要望しました。
この要望は、物価高騰が続く中で従業員の実質的な手取りを増やす手段として、食事補助の非課税枠を現行の月3,500円から6,000円への引き上げを提案するものです。
会合では、食事補助制度の現状や海外との比較、働く人々のランチ実態、中小企業にとっての福利厚生の価値などが説明され、出席議員からも前向きな意見が寄せられました。
このような動きは、企業が従業員の生活支援を強化する上で、制度的な後押しとなる可能性があります。
参考:エデンレッドジャパン|自民党「物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直しPT」に食事補助の上限枠緩和の要望の申し入れを行いました
物価高を乗り切るには「制度」と「企業」の両輪が不可欠
物価高の影響は一時的なものにとどまらず、企業経営や従業員の生活基盤に長期的な影響を及ぼしています。政府もさまざまな支援策を講じており、今後は制度全体の見直しも進む見通しですが、現場の課題をすべて補えるわけではありません。
そのような状況の中、企業としても従業員の生活を支える取り組みを強化することが求められています。「チケットレストラン」のような福利厚生の活用も含め、制度と企業の両輪で支援の網を広げることが、物価高時代における持続可能な人材確保と組織力の維持につながります。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
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